第259話 村の名前
「皆、ちょっと聞いて欲しい。
今までこの村に名前が無かったんだが、不都合なので村の名前を決めたいんだ。
何か良い名前を挙げて貰えないか?」
ルシフェルに話した通り、村の名前を皆から募ることにした。
俺の一言の後、皆が隣の者と色々と話している。
「そういえば、村の名前を知らなかったな」なんて言っている者もいる。
「何でも良いぞ。
何かないか?」
「ノアさんは何かないのかい?」
ルトルーラから声が上がった。
「俺か? 俺はこういう方面は苦手でな。
碌な候補が思いつかないから、皆に任せた方が良いと思ったんだ」
「それでも、1つくらいは出すべきだよ。
言い出したものが何もしないのは、無責任すぎるんじゃないかい?」
「そうかも知れないが、俺は本当に苦手なんだ。
どうなっても知らないぞ」
「方向性何かが見えるかもしれないじゃないか。
それに、悪かったら話し合った結果で、採用されないんだから問題無いだろ?」
「分かったよ。
俺も考えてみるから、ちょっと待ってくれ」
ルトルーラに言われて、俺も考える事となった。
村の名前か……
「最果ての村だから、エンド村と言うのはどうだろうか?」
皆、押し黙った。
「だから言っただろ、俺はこう言うのが苦手なんだよ」
「流石にそのままは使えないけど、ちょっと変えればそれっぽくなるもんさ。
例えば、エンド村じゃなくて、エンドール村ってするとかね」
皆が成程と頷いている。
少し変えるだけで、それっぽくなるんだな。
「では、ノアール村と言うのはどうであろうか?」
ルシフェルが言い出した。
「あら、それは良いわね」
イルデが賛成していた。
「ルシフェル、それって……」
「如何にも。
お主の名前から取っておる」
俺は頭を抱えた。
「先程のルトルーラから思い付いたのだ。
昼より考えておったのだ。
ノアの名をどうやってか組み入れられぬかとな」
「俺の名前なんか入れなくて良いから……そうだ、ヴィーヴルの名前を組み入れれば良いだろ?」
「お主が村長なのだからな。
皆、ノアール村と言うのは如何であろうか?」
「良いと思います」
「ノアさんが村長なんだし、良いんじゃないか」
「エンドールでも悪くないが、ノアールの方が良いな」
次々と賛成意見が上がる。
「皆、文句はないようだぞ。
決まりであるな」
「拒否は出来ないのか?」
「お主が『皆で決めよう』と言い出したのであろう? 皆で決めたのだ」
村の名前はノアールに決まった。
俺としては不本意であるが、皆で決めると言うのは俺が言い出したことだ。
俺の名前とは一切関係ない、偶々だったと思い込むことにしよう。




