第247話 魔族が街にやってくる(4)
「あれらの報告は、全てそちらの村でのことだったのか……」
ルシフェルと共にリチャードに貴賓室へ通された。
多分、俺とヴィーヴルはおまけだろう。
「我はもう魔王ではないのだから、こんなに気を使う必要は無いのだぞ?」
「そう言う訳には参りません。
私は魔王様の配下ではありませんので臣下の礼は取りません。
しかし、礼儀を尽くさない訳には参りません。
そのように接することは、この地、この国の恥にもなります」
「しかしだな、魔王領から出奔し、今はただの村人であるからな」
「構いません。
それに、この地のために力添えを頂けるのですから、礼を尽くすことに問題はありません」
「ルシフェル、素直に受け取っておけよ。
礼は例の魔族を上手く対処すれば良いだろ?」
「分かったのだ。
リチャード、この礼はその魔族の対応ということで良いだろうか?」
「よろしく取り計らいお願いいたします」
「ルシフェル、責任重大だな」
「他人事のように言いおって、全く……」
ルシフェルのことだ、上手く治めてくれるだろう。
もし、例の魔族が抵抗したとしても、力づくででも抑えてくれるだろうし。
「奥様も、ご一緒なさるのでしょうか?」
「奥様とはなんじゃ?」
「俺は奥様じゃないだろうから、ヴィーヴルのことか?」
「妾はルシフェルとは契っておらぬのじゃ。
何故、そのような話になったのじゃ?」
「魔王様……今は、ルシフェル様とお呼びした方がよろしいでしょうか? ルシフェル様が奥様の所へ移住なされたとギルドより報告が上がっていたのですが……違いましたでしょうか?」
「全てが間違っておるのじゃ」
「俺から説明した方が良いか? ルシフェルはヴィーヴルの監視として、ヴィーヴルの住んでいたところに来たんだ」
「奥様は監視されるほどの力をお持ちということでしょうか?」
「だから、違うと言っておるのじゃ。
妾はルシフェルとは契っておらぬのじゃ」
「ヴィーヴルは、こう見えても凄腕の魔法使いなんだよ。
それこそ、監視が必要となるほどのな」
「そうなのですか?」
「うむ、そうであるな。
我と互角以上であるな」
「それでしたら、何故、ノアがそちらの村に居るのでしょうか? 何故、ノアが村長なのでしょうか?」
「俺は、ヴィーヴルの用心棒としてヴィーヴルの傍で暮らし始めたんだけど、暮らしやすくするために動き回っていたら、いつの間にか村長になっていたんだ」
「要領を得ないな」
「俺も何がなんだか分からないうちになっていたからな……俺の方が説明してほしいくらいだ」
「まぁ良いだろう、詳しくは晩餐会の席ででも聞かせてくれ」
「え? 俺とヴィーヴルは帰るぞ? 此処にはルシフェルがいれば問題ないだろ?」
「お前たちは、残らないのか?」
「魔族の対応はルシフェルだけで十分だし、俺たちがいても意味がないからな。
それじゃあ、ヴィーヴル、お暇して、市場の方へ行くか」
「そうするのじゃ」
「ノアよ、酒店を教えるという約束はどうなったのだ?」
「そうだったな、リチャード、ルシフェルを連れて行って良いか?」
「酒店でしたら、私がご案内いたします」
「どうする、ルシフェル?」
「うむ、ノアと共に行きたいところではあるが、リチャードの顔を立てねばなるまいな」
「分かった。
ルシフェルのこと、よろしく頼んだ」
ヴィーヴルと館を後にして、仕入れをした後、村へと瞬間移動で帰った。




