第246話 魔族が街にやってくる(3)
次の日、ルシフェル、ヴィーヴルと共に街へとやってきた。
街までは俺が瞬間移動を使ってきた。
「妾が使っても良いのじゃ」とヴィーヴルは言ってくれたのだが、余裕があるときはなるべく使って、瞬間移動の練習をしたかったので断った。
今日は正門の近くのほうへと瞬間移動した。
ルシフェルがいるから、街の中に突然、魔族が現れたらどうなるか分かったものではない。
草叢から正門へと続く道へと抜けて、しばらく歩くと、正門の前へと着く。
「止まれ。
ここへは何をしに来た」
「俺たちはこれから領主様に会いに行くんだ。
街に現れる魔族と話をする者を連れてきたんだ。
領主様から話を聞いていないか?」
「その件ならば、話を聞いている。
通って良し」
「じゃあ、通らせてもらおう」
ヴィーヴルとルシフェルと共に、正門を抜けた。
「ノア、こっちへ行けば、朝市があるのじゃ。
仕入れに行くのじゃ」
「う~ん、朝市に行くのは、ルシフェルを領主と引き合わせてからが良いだろう。
相手はいつ来るか分からないからな。
顔合わせの前に魔族が来ると、面倒なことになるかもしれない」
「分かったのじゃ」
「ノアよ、酒もこの街で仕入れておるのだろう? 店の場所を教えてもらえぬか?」
「あぁ、良いけど、それも領主に会った後にな」
「分かったのだ」
2人とも欲望全開だな。
まぁ、別に悪さをするわけじゃないから、別に構わないのだけど……
2人を連れて、領主の館の前まで歩いてきた。
館の前にいる門番に来たことを告げ、取り次いでもらう。
暫くすると門を通され、入り口の前へ行くと執事が待っていた。
「ご案内いたします。
こちらへどうぞ」
執事に案内されて、昨日と同じ部屋へと通された。
そこで、暫く待っていると、リチャードがやってきた。
「待たせてしまって済まなかったな」
「いや、こっちこそ朝早くから押しかけてしまい申し訳ない」
「いつ来るか分からないから、早いに越したことはないから問題ない。
それで、そちらが話をしてくれるという魔族の方か?」
「あぁ、紹介するよ。
魔族のルシフェルだ」
「ルシフェルである。
よろしく頼むぞ」
「ここの領主でリチャードだ。
よろしく頼む」
ルシフェルとリチャードが握手を交わしていた。
ただ、リチャードは表情が少し硬くなっている様だ。
「どうした? ルシフェルじゃ不満か?」
「いや、そうではなくてだな……その、空恐ろしい何かを感じたんだ。
魔族だと言うこと以外の何かをな……」
「ふむ、明かしたほうが良いと思うのだが、ノアはどう思う?」
「そうだな……何かわからない不安を抱えているよりは良いだろうから、言ったほうが良いかも知れないな」
「何があるのか言ってもらえないだろうか?」
「我は元の魔王だ。
今はただの魔族だがな。
お主の不安は、元の魔王であることを感じ取ったのであろうな」
「……」
リチャードは言葉をなくしている。
まぁ、無理もないだろう、元とはいえ魔王を連れてきたのだからな。
「元とは言えども魔王だ。
その辺の魔族なら、大人しく言うことを聞くだろうと思う」
「直ぐに貴賓室を用意するんだ」
リチャードが執事に大声で指示していた。




