第242話 魔犬(なかま)探し
「ファーティ、ムッティー、アインス、ツヴァイ、見張りや狩り、勇者の相手、周辺警戒なんかの雑用を押し付けて済まないな」
『主よ、勿体なきお言葉。
我々は任務を全うしているだけであります』
「その任務が大変なものばかり、ファーティ達に頼んじゃっているんだよな……何とかしないといけないとは思っているんだけどな……」
魔犬4頭で回すには、大変な作業量だとは思うのだが、他に熟せそうなものが居ないのも事実だ。
『それでしたら、我に考えがあるのですがよろしいでしょうか?』
「何だ? 言ってくれ」
『はい、我に数日間、お暇を頂けないでしょうか? 他の魔犬を連れて帰りましょう』
「心当たりがあるのか?」
『はい、以前、周辺を監視していた時に、かすかにですが遠吠えが聞こえました。
それを突き止め、仲間として連れ帰りましょう』
「分かった。
それじゃ明日から数日間は、ファーティはそっちの方をよろしく頼むよ」
『御意』
「暫くは王国も動けないと思うから、焦らなくて良いからな」
例え1頭でも魔犬が増えたら、ファーティ達の作業が少しは軽減できるだろう。
是非とも探し出して来て欲しいものだ。
『それでしたら、主よ、我ら一家、全員がお暇を頂いても宜しいでしょうか?』
「どうした? 何か不都合でもあったか?」
『いえ、不都合ではありません。
愚息共の嫁探しもしてこようかと思います』
「嫁探し?」
『はい、我らは成長すると嫁となる者を探して旅に出ます。
その後、そのまま家族で暮らすか、群れに戻ってくるかとなるのです。
愚息共は、此処へ戻ってくるとの意思があると確認いたしました。
後は成長を待つだけなのですが、その時に今の様に余裕があるとは限りません。
ならば、今のうちに将来の嫁となる者を探してきた方が宜しいかと考えました』
「そう言う事なら、良いと思う。
じゃあ、明日から暫くはファーティ達全員が居なくなるんだな?」
『御意』
「じゃあ、ストレージに入れて、肉を少し持っていくか? 道中、お腹が空いた時に食べれば良いだろうし」
『主よ、我らはストレージを使えません』
「そうだった……」
ファーティ達が此処に来た当初、ファーティ達にもストレージが使えないか試してみたことがあった。
結論から言うと、ファーティ達にはストレージを使う事は困難だと判断した。
ストレージを持ち歩き、中へと収納することは問題なく出来たが、取り出すことが出来なかった。
原因はストレージの中から物を取り出すことが出来なかった。
ストレージの中へ頭を突っ込んでも、息が出来なくなってしまう為なのか、直ぐにストレージから顔を出してしまった。
多分、あの感じだと、中で口を開けることも出来ないだろう。
『我らは行く先で狩りをし、食料を得ますので心配無用に御座います』
「何もしてやれなくて、済まないな」
『勿体なきお言葉』
「じゃあ、アルルには暫くの間、アインス、ツヴァイとの模擬戦が無いことを伝えておくよ」
『御意』
この後、アルルの下へ行き、ファーティ達が暫く留守にすることを伝えた。
「それじゃあ、暫くの間、どうしようかしら?」
「そうだな……その間は、弟子の鍛錬に注力すれば良いんじゃないか?」
「そうだね、そうするよ」




