第241話 新食堂を作ろう(3)
家具職人とその未来の弟子達、木こりたちの頑張りによって、3日後には全員分の椅子が揃っていた。
根を詰めなくても良いとは伝えていたのだが、家具職人であるドワーフの一族の血が騒いだのかもしれない。
それに引っ張られる感じで、未来の弟子たち、木こりも作業をしていた。
水回りも準備は万端だ。
家具も揃ったということは、新しい食堂の完成だ。
という事で、火入れ式を行う。
火入れ式などと大層なことを謳ってはいるが、なんて事はない、皆で一緒に騒ぐだけだ。
こんなことでもないと、村民の皆でお祭り騒ぎをすることも無いから。
一応、火入れ式の体裁を整える為、アイリスが土釜に最初の火を入れる。
村民皆が拍手し、新しい食堂の完成を祝い、拍手が治まると飲めや歌えの大騒ぎが開始される。
今回の食堂は、村民全員が入ってもまだ余裕がある。
村民がさらに増えることになれば、また足りなくなるだろうが、暫くは大丈夫だと思う。
そんな訳で、今、新食堂には村民全員が集まっている。
本当は、門番などは参加せずにその役割を努めなければいけないのだが、あえて今日はその役割を免除しており、騒ぎに参加している。
ファーティ達も、周辺の警戒という役目をせず、参加させている。
今、攻めて来られたら、防衛することは難しいと思う。
だが、王国の方は門と橋を壊してあるから、当分の間は攻めて来られないだろう。
魔王領の方は、アザゼルが見てくれているはずだ。
アザゼルは村民としては受け入れていないものの、家が魔王領方面に建っている。
ルシフェルを通して命令として魔王領側を見張って貰っている。
ルシフェルの命令ならばアザゼルは聞いてくれるからだ。
ただ、お祝い事のお裾分けという形ではあるが、此方もルシフェルを通して酒、飲み物、食べ物を渡した。
何もせずに命令だけ聞いてもらうのは、気が引けたから。
酒だけではないのは、アザゼルにも家族がいるとの情報を得たからだ。
子供の内から酒を飲ませるのは、魔族でも悪影響があるのではと思ったのだ。
しかし、そもそも魔族は食べ物を食べなくても支障がないので、悪影響があるのなら飲ませなければ良いだけだと気が付いたのは、ルシフェルに持って行って貰った後だった。
まぁ、飲み物はあっても困らないだろうから、良しとするか。
「ノア、飲みが足りないのではないか?」
「大丈夫だよ、と言うか、ドノバンと一緒のペースで飲める人間なんて、そうは居ないぞ」
「ん? ルシフェルはいけるぞ」
「ルシフェルは魔族だからじゃないか? ほら、噂をすれば何とやらだ」
ルシフェルがドノバンと俺の間に椅子を持ってきた。
「我がどうかしたのか?」
「いや、ドノバンとサシで飲めるのはルシフェルだけじゃないか? って話していたんだ」
「そうかも知れんな」
「そう言う事だから、ドノバン、ルシフェル、村にあった酒は全部出したから、全部開けてしまっても構わないぞ」
明日は買い出しに行く予定だから、また買ってくれば良いだけだ。
「ノア、もう果物はもう無いのじゃ?」
ヴィーヴルの前に置いてあった、果物の盛り合わせが既に空になっていた。
結構な数の果物が乗っていたはずなのだが……
「ドライフルーツならあったと思うが、良いか?」
「構わんのじゃ。
早く出すのじゃ」
「分かった分かった。
そう急かすなよ」
横に置いておいたストレージの中から、ブドウとアプリコットのドライフルーツを取り出した。
取り出したドライフルーツは、そのまま、果物の盛り合わせが乗せられていた皿の上へと出した。
「とりあえず、これだけ置いておくよ」
「分かったのじゃ」
席を立ち、ファーティ達家族が集まっている場所へと向かう。




