第240話 新食堂を作ろう(2)
「ヴィーヴル、出番だぞ」
部屋の片隅で、皆の作業の邪魔をしない様に小さくなっていたヴィーヴルに声を掛けた。
「何じゃ? 何をするのじゃ?」
俺に呼ばれたヴィーヴルが、瞬間移動で俺の側へとやって来た。
能力の無駄遣いのような気もするが……
「外の水路から、そこの箱への水路を作るんだ。
あの装置を持ってきてくれ」
「分かったのじゃ」
言うが早いか、ヴィーヴルはその場から消えていた。
また、瞬間移動で移動したのだろう。
(後でドノバンの所から、水門用の鉄板を貰ってくるか……)
俺は食堂から外へと歩いて出た。
「何をやっておったのじゃ? 妾はもう、準備できておるのじゃ」
ヴィーヴルは、既に装置を持ってきていつでも測れる状態になっていた。
「済まないな、ちょっと考え事をしていたんだ」
これ程早く、ヴィーヴルが帰ってくるとは想定外だった。
「じゃあ、早速やっていくか」
いつも通りにヴィーヴルが指示して、俺が棒を上下させて…と思っていたのだが、このままでは道の真ん中を水路が通ってしまい、通行の邪魔になる。
ある程度の高さがあれば良いのだが、俺の頭の上を通過する位置にある。
俺はぶつからないかもしれないが、ミノタウロスやケンタウロス達はぶつかってしまうかもしれない。
「どうしたものかなぁ」
「どうしたのじゃ? 早くやるのじゃ」
「いやな、水路の高さがあそこだろ? このまま道を横切らせると、どう考えても通行の邪魔になると思うんだ」
「妾は問題なく通れるのじゃ」
「ヴィーヴルや俺は大丈夫だろうけど、ミノタウロスやケンタウロス達はぶつかる高さだ」
「そう言われれば、そうかも知れんのじゃ」
俺とヴィーヴルは2人で考え込んでしまった。
「そんな事を言ったら、そっちへ行く時にもぶつかってしまうのじゃ」
「そっちは道の真ん中じゃないから、気を付けるように言うしかないな。
あと、開拓地と繋がる道を反対側の方にも作ろう。
そっちへ行く時は、極力、その道を通るようにすれば良いだろう」
「こちらも注意して通れと言っておけば良いのじゃ」
「いくら言っていても、忘れてしまう事があるからな。
特にケンタウロス達には、連絡係の役目をしてもらっている。
緊急連絡の時には、そのことだけで頭がいっぱいとなり、この水路の事を忘れてしまうかもしれない。
一所懸命走っている状態で水路に激突したら、両方ともにただでは済まないだろうからな」
例えその様なことが起きないとしても、考えられる危険は事前に取り除いておいた方が良い。
(水路を此処に作るとしたら……道を他の所に移動するか……水路の下を通るのがいけないのだから……水路の上に道があれば……)
「そうか、水路の上に道を作れば良いんだよ」
「突然どうしたのじゃ?」
「解決する方法を思いついたんだ。
ヴィーヴル、手伝って貰えるか?」
食堂の方へ行き、壁の穴の開いている位置を確認して、高さを測る棒を穴に当てる。
「ヴィーヴル、此処の高さを基準にしてくれるか?」
「どうしたいのか分からんが、分かったのじゃ」
ヴィーヴルは装置を覗き込み、高さを合わせていく。
「合わせたのじゃ」
「じゃあ、次はこちら側を少しだけ高くしたいから、少しだけ上に上がった位置を教えてくれ」
「分かったのじゃ」
ヴィーヴルが装置のレバーを回して少しだけ上げ、俺がその位置にヴィーヴルの指示で棒を合わせる。
「これで、此処から台所へと水を流せるはずだ」
道を横切る水路の高さは腰よりちょっと高いぐらいになった。
「それでは余計に邪魔になったのじゃ」
「このままではそうだが、階段を作って上を通るようにすれば問題なくなる。
この位の高さの階段なら、それ程苦にもならないだろ?」
水路を作った後、普通の階段より各段の幅が広めの階段を土魔法で作った。
「そこまで大きくするのならば、坂にしてしまった方が良いのじゃ」
「そうだな、その方が躓いて転ぶことも無くなるだろうしな」
更に土魔法を使い、なだらかな坂にした。




