第224話 第一次防衛戦(4)
ヴィーヴルとルシフェルが相手をした兵士たちは満身創痍だが、殆どの者は自力で移動できるようだった。
「兵士は皆、装備を置いて帰っていいぞ。
ほら、お前も良いぞ」
副官に嵌めた土魔法の腕輪を、キャンセルで消して解放した。
「司令官はまだ話したいことがあるから、残って貰うぞ。
明日か明後日には司令官を解放するから、それまでは陣に帰って大人しくしているんだ。
捕虜がこちらに居ると言うのを忘れるなよ」
外壁を攻略しようとしていた兵士の数は、60人に満たない程度だった。
しかし、全員が何らかの怪我をしているようではあった。
「おい、動けない奴は連れて行ってやれよ。
装備は置いて行けよ」
置いて行った装備は鋳潰して、村の整備に使わせてもらおう。
その辺はドノバンが上手くやってくれるはずだ。
アルルが戦っていたのが20人。
陣に居たのが20人弱だと思うから、今回は全部で100人ぐらいの派兵のようだ。
と言うことは、1つの隊が派遣されたのだろうか? その辺も含めて、この司令官から話を聞こう。
「アルル、装備をこの中に入れてドノバンの所まで持って行ってくれないか? 鋳潰して何かの素材として使ってくれと言付かってくれ」
「良いわよ」
「悪いな、俺はこれからこの男を尋問しておく。
ルシフェルは魔族領側の警戒に戻ってくれ」
「分かったのだ」
「ヴィーヴルは、此処で王国側から来ないことを見張っていて貰えないか?」
「良いのじゃ」
「じゃあ、尋問を始めようか」
この後、司令官から王国の様子を聞いた。
こちらの戦力を分析し、派兵して脅せばすぐに屈すると判断されたようだった。
その分析内容の、どれもが杜撰なものではあったのだが……
戦力として魔王がいるが、『元の』なので、10人ほどで一斉に攻撃すれば倒せる前提だったとのこと。
『元の』とはいえ魔力が少なくなったという感じはしないし、『勇者以外でも』倒せるようになっただけだと思うのだが……
その程度の分析だから、勇者についても以前のままの様な評価だったし、ヴィーヴルは戦えるという頭数にも数えられていなかった。
ヴィーヴルについてはこちらも秘匿していたから、漏れていないことに安心できた。
まぁ、次に来るときは、頭数に考えられるのだろう。
(次に来る時か……)
次がある前に、こちらから釘を刺しに行くのも良いのかもしれない。
それにより反発が強くなるか、大人しくなるかは分からないが、やられっ放しでは埒が明かないだろう。
その辺は、夜にでも皆に相談してみるか。
「それじゃ、また目隠しをしてもらうぞ」
目隠しをして、瞬間移動で開拓地へ移動し、奥のほうへと移動した。
そこに、土魔法で土の箱を作り、上と横に人が通れない程度の穴をキャンセルで数十個開けた。
そこへキャンセルで入り口を作り、司令官を入れた後、土魔法で入り口を塞いだ。
下の方には、物を出し入れできるように穴を開けたままにしておいた。
「もう、目隠しを取ってもいいぞ。
少し暗いかもしれないが、後で火と薪を持ってくるから、それで我慢してくれ」




