第223話 第一次防衛戦(3)
敵陣を抜けて森の中に入り、後ろから誰も追って来ないことを確認した。
「良し、此処からは早く戦闘を止めたいから、俺は先にこいつらを連れて帰る。
ファーティは警戒しながら帰ってきてくれ」
『御意』
「さて、お前達には今から目隠しをするが、大人しくしていれば傷つけたりしない」
ストレージの中に入っていた布を折りたたんで、目隠しを作った。
その目隠しを2人の目へ宛てがう。
「これで良しっと」
目隠しをしておけば、瞬間移動を使っても見られないので安心だ。
瞬間移動で、打ち合わせをした場所まで到着した。
ここから真っすぐ歩いて行けば、アルル達が戦っているであろう場所に着く。
2人の目隠しはまだ取らずに歩かせた。
視覚からの情報を遮られている2人にとっては、距離感、時間を共に失わせるだろう。
暫く歩いて、アルルとアインス、ツヴァイが戦っているのが見えた。
正確には、アルルが兵士と1対1で戦い、アインスとツヴァイが他の兵士の動きを制限しているようだ。
これではまるで、アルルに稽古をさせている感じがする。
そろそろ、目隠しを取って戦闘を終わらせよう。
「兵士たちに告ぐ。
お前達の司令官と副官は御覧の通りだ。
これ以上、攻撃を加えようとするならば、命の保証はしない。
武器を下ろして、投降するんだ」
司令官の喉元に短剣を宛がって告げた。
この様子を見たアルルと戦っていた兵士、アインス、ツヴァイと対峙していた兵士は、武器をその場に捨てた。
「おかえりなさい、ノアさん。
上手く行ったようね」
「あぁ、ファーティのお陰だよ」
「そのファーティさんは?」
「人質が2人になったから、警戒しながら帰って来るように言って、途中で別れた」
「そうなのね」
「それにしてもアルル、良い訓練になったんじゃないのか?」
「う~ん、どうだろう? 普段、アインスやツヴァイと戦っているせいか、あまり手応えを感じなかったの」
傍らには12人程の兵士が、気を失い倒れていた。
「それでも、対人戦闘の良い機会になっただろ?」
「そうかも知れないね」
「おっと、ここで話し込んでいる場合じゃないな。
早く前の戦闘も止めないとな」
「そうだね」
投降した歩兵はアルルに手伝って貰い、ストレージから取り出した木の皮で作った縄で後ろ手に縛り上げた。
兵士の数は全部で20人だった。
普通に戦っても、此処は防げたであろう。
気絶していた兵士の目を覚まさせて、全員を連れて壁の前へと歩いて行った。
先頭は俺と司令官、副官だ。
その後ろを投降した兵士たちが歩き、それをアルル、アインス、ツヴァイが見張っている。
壁の前に着いた俺は、壁の前で仁王立ちしているヴィーヴルとルシフェルの姿が目に入って来た。
「これは派手にやったな。
生きてはいるんだろ?」
「あぁ、それは大丈夫なのじゃ」
「その辺は手抜かりないぞ」
「ヴィーヴルは、『集団で来た人間は恐ろしい』って言ってなかったか?」
「条件が一緒ならばじゃ。
こちらから一方的に、しかも集団と言えるほどの人数ではないのじゃ」
「数千、数万ならばヴィーヴルでも苦戦するだろうが、この程度の人数では相手にもならん」
「それよりノアよ、無事で何よりじゃ」
「心配してくれたのか? ありがとうな、ファーティのお陰だよ」
態々、俺が危険を冒すまでも無かったかも知れない……




