第221話 第一次防衛戦(1)
「ルシフェル、お願いがあるんだが、ファーティを連れて上へ飛んでくれないか? ファーティは敵の司令官の場所を見て来てくれないか?」
「良いだろう、行ってくる」
『御意』
ファーティも普段は嫌がるだろうが、状況が状況だけに素直に従ってくれた。
ルシフェルは、ファーティを連れて上空へと飛んでいった。
「ヴィーヴルは壁を作って入り口を塞いでおいてくれ」
「分かったのじゃ」
「そして、アルルと一緒に壁を登ろうとする敵を阻止して欲しいのだけど、壁の上に居ると矢が飛んでくるかもしれない。
防ぐ方法はあるか?」
「妾は結界を張れば良いのじゃ」
「私は盾があるから、これで防げるけど、そうすると壁の上に居るのは難しいかな?」
「そうか、じゃあ入り口を塞ぐのを止めて、人ひとりが通れるくらい開けてくれ。
入って来た者を、アルルとアインス、ツヴァイが相手をしてやってくれ」
「分かったよ」
『『承知しました』』
「それで、今回の戦いでは、出来るなら死人を出さない様にして欲しい」
「何故、死人を出さない様に戦うのじゃ?」
「アルルは勇者だからな。
兵士と戦うだけでも問題となるかも知れないのに、死者が出たとなったらどう言われるか分からない。
それに……」
「それに?」
「一番、戦闘力を殺ぐことができるのが、自力で動けない負傷者を多く出す事なんだ。
動けない負傷者が居ると、仲間としてはどうしても戦場から逃がしたいからな。
そうなると、最低でももう1人も戦いから離脱することになる」
「成程ね」
「分かったのじゃ」
「ムッティはヴィーヴルと一緒に居てくれ。
ファーティを通じて、連絡係となって欲しい」
『承知いたしました』
ルシフェルとファーティが上空から戻って来た。
『敵の司令部の位置は分かりました』
「ありがとう。
後で道案内してくれ」
『御意』
「そして、ルシフェルだけど、結界を使えるか?」
「うむ、使えるぞ」
「じゃあ、壁の上で、壁を登ろうとする敵を阻止して欲しいのだけど、頼まれてくれるか?」
「良いぞ」
「敵を殺しては駄目なのじゃ」
「そうなのか? それは少しばかり骨が折れるかもしれんな」
「文字通り、敵の骨を折るのは構わんということなのじゃ」
「死んでおらねば構わんという事か?」
「そうだ、良い具合に加減してやってくれ」
「分かったのだ」
「ノアさんはどうするの?」
「俺は、ファーティに案内してもらって、敵の司令部に直接乗り込む」
「それは危ないよ。
ノアさんが捕まったり、殺されたら負けるんだよ?」
「戦いを早く終わらせるには、これが一番だからな。
まさか、敵がいきなり乗り込んでくるとは思わないだろうしな」
「妾が龍になり、ブレスを放てばすぐに終わるのじゃ」
「それだと、ヴィーヴルの正体が分かるから駄目だ。
それに、ブレスなんて放ったら、そこに生きている者はいないだろうしな」
「……気を付けるのじゃ」
「大丈夫だよ。
ファーティも一緒だし、いざとなれば瞬間移動で逃げて来るさ。
じゃあ、皆、さっき言った通りに頼んだぞ」
俺とファーティを残して、各々持ち場へ移動した。
ヴィーヴルが少し、心配そうな顔をしてこちらを見ていたが、ヴィーヴルならば難なく自分の任務を熟してくれるであろう。
「ファーティ、危険なことに巻き込んで済まないな。
道案内、よろしく頼むよ」
『お気になさらずに』
「じゃあ、行こうか」
『御意』
瞬間移動で、入り口とは離れた壁の外へと移動した。




