第218話 有能な作業員たち
「あれから、更に畑を広げましたので、何か新しく植えるものは無いでしょうか?」
朝食時にアンから聞かれた。
あれから、大人のゴブリン達は畑の拡張を主に行っていて、世話は子供達に任せているようだ。
流石に木を伐って切り株を除けるとかはできないので、草原だった範囲内は全て畑にしたようだ。
「そうだな……次は何と考えていなかったから、今度、街に行った時に見てくるよ」
「分かりました。
それでは、それまで皆で畑の世話をしておきます」
「済まないな、考えていなくて」
「いいえ、お気になさらずに」
「スイカはどうじゃ?」
「前にも言ったろ、スイカはもう時期が遅いって」
前に食べたスイカの味が忘れられないようだ。
「もう少し経ったら沢山出回るようになるから、もうちょっと我慢するんだな」
「仕方が無いのじゃ」
「そう言えば、リンゴの木の方はどうなんだ?」
「すくすくと成長しておるのじゃ。
もう、妾が出来ることは何も無いのじゃ」
「そうか……じゃあ、他にも育ててみるか?」
「いや、良いのじゃ。
妾はノアの仕事を手伝うのじゃ」
「そうか? それなら良いのだけど」
「それより、街に行って植えるものを仕入れて来ないといけないのじゃ」
「そうだな。
折角作ってくれた畑を、遊ばせておくのも勿体ないしな」
「では、食後に行くのじゃ」
「ファーティの報告を受けた後にだよ。
何かあったら、街に行っていられないからな」
ゴブリンや子供達が食事を終え、俺達も食事を取った後、ヴィーヴル、アルルと共に門前へと瞬間移動で移動した。
「アインス、済まないが、ファーティを呼んでくれないか?」
『承知しました。
少々、お待ちください』
アインスが遠吠えでファーティに呼び掛けている。
暫くすると、ファーティが森の中からこちらへとやって来た。
『お呼びでしょうか?』
「ファーティ、何処かおかしな所は無かったか?」
『まだ半分ほどしか見ておりませんが、特に異常は御座いません』
「ありがとう。
俺達はこの後、街へ行ってくるけど、この後も見回りを頼むぞ」
『御意。
然らば、御免』
そう言い残して、ファーティは再び森の中へと消えて行った。
「それじゃあ、私は門番の仕事をするわね」
「あぁ、よろしく頼むよ。
さて、ヴィーヴル、行くか」
「分かったのじゃ。
此処から街までは妾の瞬間移動で行くのじゃ」
「折角だから、お言葉に甘えるか。
ありがとう、よろしく頼む」
ヴィーヴルと手を繋ぎ、街まで瞬間移動で移動してきた。
やはり、ヴィーヴルは1度の魔法行使で街まで移動できる。
俺も以前に比べれば回数は減らしているものの、ヴィーヴルとは比べ物にならない。
(せめて、店までは1度で行けるようにならないとな)
街の裏道から露店が立ち並ぶ通りへと出て、少し歩くといつもの露店がある。
「あら、今日は予定の日じゃなかったわよね?」
「あぁ、畑が広がったらしいから、何か植えようと思って種か苗を買いに来たんだ」
「そうなのね。
じゃあ、今日は買って行かないの?」
「いや、来たついでに少しだけでも買って帰るよ」
「じゃあ、何が良いかしら……」
「アプリコットは終わったのか?」
「えぇ、前回持って行った分で終わったわ」
「ノア、あそこにスイカがあるのじゃ。
この前のより大きいのじゃ」
「あら、見つけちゃったのね。
御免なさいね、あれは、もう買う人が決まっているのよ」
「そうなのじゃ? 残念なのじゃ」
「もう少し取れるようになるまで待ってちょうだい」
その後種苗店へ行き、店が薦める種を手に入れて村へと帰った。




