第182話 ギルドへの報告内容の確認
「とりあえずだ、話せる範囲でいいから、この村のことを話してくれ。
そもそも、前に来た時には『村』とは言ってなかったはずだ」
「前に来た時には、こんなに居なかったからな。
まず、壁のことだが、お前たちが来た後に何もないと以前のお前らのように、簡単にここまで来られるだろ? 人間、動物、魔物に関係なくな。
それだと、安心して暮らせないから壁を作ろうとなったんだ。
魔王が作ってくれるという話になったしな」
「まぁ、こんなに早く作られるとは思っていなかったけどな」
「そして、村民のことだが、畑をもっと大きくしないと生活していけなくなると考えられたからだ。
前に、ドワーフの街でミスリルの武器が売りに出されたという話を聞いたことがないか?」
「あ、片手剣が領主に納められて、短剣が一本売りに出たってやつだよね?」
ルークの耳には届いていたようだ。
「あれは、俺が素材を提供して、知り合いの鍛冶師に加工して貰ったんだ。
その時に結構な枚数の金貨を手に入れられたんだ」
「そうかぁ、あれはノアが絡んでいたのか。
元仲間として、売ってほしかったな」
「売るのは鍛冶師の奥さんに頼んだから、俺にはどうしようもならないよ」
「それが、ここでの生活にどう絡むと言うんだ? 話を進めろよ」
シュラウドが少し苛立ちながら言った。
「此処の村は作ったばかりだ。
畑も作ったばかりで、作物なんてまだ殆ど出来ていない。
クマやシカを狩っているが、それだけでは此処にいる皆の腹を満たすことはできない。
だから、ミスリルで得た金貨で街から物を仕入れて来ているんだ」
「そうか、それは分かったが、何故、ゴブリンが農作業をしていたんだ?」
「近くにいたのがゴブリンだったと言うのが正直な所だけど、ゴブリンに手伝って貰ったら、思いのほか農作業に向いている種族じゃないかと思ったんだ」
「そうなのか?」
「あぁ、確かに力はないが、言われたことを少しずつでも熟すからな。
それに、言われたことは忘れない」
作物につく虫を食べることは言わなくても良いだろう。
「そうだとしても、ゴブリンが一緒に生活している事はギルドに報告できないな」
「この村のことを報告する必要があるのか?」
「話の流れとして、全く話さないと言うのは無理だろう。
元魔王が暮らしている村なのだからな」
「亜人も住んでいるから、それだけで報告できないか?」
「オーガもいるのか?」
「半分は魔王が連れてきたんだ」
ガレス一家はルシフェルが連れてきたようなものだから、嘘は言っていない。
「半分は? あと半分はどうしたんだ?」
「それは……魔王が魔王じゃなくなったことに関連するのだが……今まで、魔王領では魔人以外の種族に対する迫害を禁止されていたんだ」
「それは初耳だな」
「それが、魔王が代わったことにより撤回される可能性が出てきたんだ」
「魔王が代わっただけで、そんなことがあるのか?」
「それがあるんだよ。
前の魔王が、それまで行われていた他種族への迫害を禁止したらしいが、魔族の間では不満材料として根強く残っていたらしい。
だから、その前に移住して来たものがいるんだ」
「そうか……」
「ギルドにも、魔王領から難民として亜人がこちらに来る可能性があるから、注意を促したほうが良いかもしれない」
「分かった。
それは伝えておこう」
「そんな感じで良いか?」
「そうだな……代わったことについては、魔王本人から確認しよう。
オーガが居ることを話せば、ゴブリンのことは話さなくてもいいだろう。
まぁ、ゴブリンと一緒に住んでいると言っても信じてもらえないかもしれないがな」




