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第173話 水道の整備(2)

「よし、それでは再び、待っておれ」


 ドノバンは壁に枠を付けて、壁の上には滑車が付けられた。

 枠の中には板が入れられ、その板の上部には紐が繋がっていて、その紐は滑車を通されていた。


「これで良いじゃろ。

 後は、此処からあちらの方へと穴を作りたいのじゃが、出来るかの?」


「魔法じゃ出来ないけど、掘れば良いんだろ? 掘っておくよ」


「それより水を通すのじゃ。

 もう、水を通しても良いのじゃ?」


「ノアの穴掘りが終わらんと、水を捨てられんから駄目じゃのう」


「ふむ、では、妾が穴を開けるのじゃ。

 何処まで掘れば良いのじゃ?」


「そうじゃな……一番良いのは川へ水を返せれば良いじゃろうが、とりあえず邪魔にならない所までで良いじゃろう」


「では、川まで開けるのじゃ」


 そう言って、指を弾いた。

 その直後に、地面に一直線の穴が開いていた。


「ヴィーヴル、どうやったんだ?」


「何、簡単なことじゃ。

 風魔法で土を吹き飛ばして、穴を開けただけなのじゃ」


 簡単に言うけど、やったことはとんでもないのだけどな……少なくとも、俺は風魔法が使えないから、同じことは出来ない。


「これで良いのじゃ。

 では、水を入れるのじゃ」


「この穴から、川へ水が流れるか分からんじゃろ? 傾斜を確かめるのが先じゃろう」


「面倒なのじゃ」


「じゃが、確かめんと水が逆流してきて、この辺が水浸しになってしまうじゃろうから、確かめんといけんじゃろう」


 確認した結果、一か所だけ川より低くなっている部分があり、川からそこまで水が流れ込んでいた。

 このままでは、ドノバンの言う通りに、その場所から水浸しになってしまうので、ヴィーヴルに川下方向へ穴を開けてもらい、元の穴は川まで土魔法で塞いでおいた。


「これで良いじゃろ。

 水も流れるはずなのじゃ」


「うむ、ではノアよ、水門を開けてくるが良いじゃろう」


「妾が行ってくるのじゃ」


 瞬間移動で、ヴィーヴルが水門を開けに行ったようだ。

 少しそのまま待っていると、ヴィーヴルが帰って来た。


「開けて来たのじゃ。

 水は来たかの?」


「そんな直ぐには来ないよ。

 待っていればその内来るだろ」


「分かったのじゃ」


 そうは言ったものの、ヴィーヴルは「まだなのじゃ? 遅いのじゃ」などと言いながら、水が来るのを待ちわびている。

 瞬間移動と水の流れの移動速度なんて、比べ様も無いから気長に待つしかないのだけどな……


「やっと来たのじゃ。

 じゃが、ちょっと少なくないか?」


 暫くすると、水路の出口からヴィーヴルが声を上げた。


「初めは少ししか出ないけど、直ぐに沢山出るようになるから、大丈夫だ」


「そうなのか? 分かったのじゃ」


 水流は直ぐに多くなっていた。

 ヴィーヴルは水に手を当て、気持ちよさそうにしている。


「とりあえず、引き込みは上手く行ったようだな。

 帰りはまた後でだな」


「そうじゃな、ある程度の水量が無ければ、川まで流れる前に地面に吸収されるじゃろうからな」


「ノア、此処で水浴びしても良いのじゃ?」


「あぁ、飲み水にするつもりはないから良いぞ」


「分かったのじゃ。

 早速、水浴びをするのじゃ」


 ヴィーヴルは水平を測る機械を持って巣穴へと帰って行った。

 再び此方へとやって来たヴィーヴルは水着を着ていた。


 そして、そのまま箱の中へと入り、水浴びを始めた。


 それを見ていたゴブリンの子供達は、羨ましそうにヴィーヴルの姿を眺めていた。


「お前達も水浴びして良いぞ。

 ちゃんと水着は着ろよ」


 ゴブリンの子供達は水着に着替えて、水の中へと入って行った。


 これを作った当初の目的とはかけ離れてしまったが、利用できるのならば作った甲斐があると言うものだ。

 水浴びすることに夢中になり過ぎて働かなくなるのはいけないから、利用時間を決めた方が良いかもしれない。

 今日の所は、このまま遊んでも問題無いだろうけど……


「では、儂らは工房に戻るとしようかの」


「あぁ、ドノバン、ありがとうな。

 想定外の使われ方になったが、喜んでくれているようで良かったよ。

 そうだ、アイリス達も水浴びしないか声を掛けてやってくれ」


「そうじゃな、普段から台所に閉じ籠っておるじゃろうしな」


 その後、アイリスは水着を着て、オーガの子供達は服を着たまま水浴びをしにやって来た。

 ドワーフ、オーガとゴブリンは言葉が通じないはずなのだが、そんな感じは全くせずに皆仲良く遊んでいる。

 遊ぶことに関しては、言葉なんか要らないのかも知れない。


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