第171話 水路を作ろう(3)
昨日、水路造りの途中でルシフェルからの爆弾発言があったので、水路造りは終えられなかった。
今日こそは、水路造りを終えてしまおうと意気込み、水車の所へと瞬間移動した。
ヴィーヴルは今日も付いて来た。
昨日使った装置を、今日は使わないと伝えたのだが、付いてくると言っていた。
水路がどんなものか気になるのだろうか?
俺は水路の土台と水路を、次々と土の棒の高さに合わせて作っていった。
水路の部分は、四角形よりは魔力を節約できるだろうと思い、真ん中をくり抜いた円柱型とした。
途中、何本か水路に立ち塞がるように立っている木は、水魔法で切断して倒した。
その水魔法での伐採も、以前ならば何度か当てる必要があったのだが、今は1度で出来るようになっていた。
魔法の濃度を上げられたからだろう。
そんな訳で、日が一番高い所へと到達するぐらいに水路造りは完成した。
一日がかりの作業と考えていたから、予想以上に早く作業を終えることが出来た。
「これで、此処に水が来るのじゃな? 早く出すのじゃ」
「いや、ドノバンに水門を作って貰わないと、水は出てこないよ」
「そうか、ならば早く水門を作って貰うのじゃ」
「ヴィーヴルは、何をそんなに慌てているんだ?」
「此処に水が来れば、水浴びが出来るのじゃ」
「その為に水路を引いたわけじゃないけど……そう言う使い道もあるな。
でも、ヴィーヴルは自分で水魔法を使って水浴び出来るだろ? 態々、引いた水を使わなくても良いんじゃないか?」
「水魔法の水は冷たくないのじゃ。
暑いときは冷たい水の方が気持ち良いのじゃ」
「そうか、温度の事まで考えていなかったな」
「それに、寒くなったら火魔法で水を温めれば、冷たい思いをせずに済むのじゃ」
「火魔法で温めるか……」
火で温めるのならば、下から温めた方が効率が良いだろう。
ただ、土魔法で作った器を火で炙ったとしても、水を温めるには非常に時間が掛かるだろう。
鉄ならば土よりは効率良く水を温められるはず。
それに、火魔法を使い続けなくても、薪を使えば火は燃え続けることができる。
「早く、ドノバンに水門を作るよう頼むのじゃ」
ヴィーヴルの言葉により、現実へと引き戻された。
「そうだったな」
先ずはこの水路を完成させて、水が此処まで来ることを確認しないといけない。
俺とヴィーヴルは、ドノバンの工房へと向かった。
工房の中からは、槌で金属を叩く音が響いている。
「ドノバン、水路を作ったから水門を作って貰えないか?」
「なんじゃ、もう作り終わったのか? 明日になると言っておったじゃろ」
「あぁ、水路を作ることだけに集中していたら、いつの間にか終わっていたんだ」
「そうか……ならば、今のこれが一段落着いたら作りに行くのじゃ。
ちょっと待っておれ」
「あぁ、ドノバンの作業を見ながら待っているよ」
「では、妾はリンゴの様子を見てくるのじゃ。
水門を作りに行く時には、声を掛けるのじゃ」
「分かった」
ヴィーヴルは瞬間移動で、(多分)リンゴの木の下へと移動した。
暫くの間、俺はドノバン達の作業を見ていたが、鍛冶の事は分からないので、唯々金属を叩いているようにしか見えなかった。
当の本人たちは、叩いては水で冷やしてじっと見つめた後に、また火の中に入れて叩いては冷やすを繰り返している。
どうして、あのようにしないといけないのかは分からない。
だが、鍛冶は昔からあの様な作業を繰り返して武器や防具、その他の道具を作って来た。
ドノバンに聞けば教えてもらえるだろうが、今は作業の方に没頭しているので聞かない方が良いだろう。
別に今すぐに聞く必要はないからな。
今日の晩酌の時に、酒の肴にするのも良いだろう。
「待たせて済まんかったな。
どれ、水門を作りに行くとするかの」
「こっちの方は良いのか?」
「あぁ、今日の所はあんなもんじゃろ」
「分かった、じゃあ、ヴィーヴルの所に寄ってから行こうか」
ドノバン、ガレスと共にヴィーヴルの所へと行き、その後、瞬間移動で水車へと向かった。
着くなり、水車に鉄の棒を挟み込み、水車の羽の部分に何か細工を施していた。
その後、水車と水路の間を繋ぐ取水口を『こんな形で』と地面に絵を描いて指示された。
出来る限り、同じ形になるように取水口を作ると、『上出来じゃな』の言葉と共に、水門となる鉄の扉を取水口に取り付けた。
「これで、完成じゃな。
水門をこのまま開けた状態にして、村へと帰るとするかの。
何事も無ければ、水が村へと届くはずじゃろ」