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第170話 勇者の苦悩

「ちょっと良いかな? 私は、私が倒すべき相手が変わったという事なのかな?」


 アルルがルシフェルへと問い詰めた。


「そうであるな。

 勇者が魔王を倒すものと言うのならば、我は魔王ではなくなったのだからな。

 しかし、何故、新しく魔王となったばかりの者を倒さなければならんのだ? つい先日までは軍部に居たとはいえ、魔族の一人でしかなかった者であるぞ」


「前にも言ったけど、新しい魔王は魔王になったばかりで、魔王としての仕事や行動は何もしていないぞ。

 それでも倒さないといけない理由ってなんだ?」


「魔王は勇者じゃないと殺せないから……」


「魔神の指環の所持者は、勇者以外の攻撃では死なぬような加護が付加されておるからな」


「勇者以外には殺せないかもしれないけど、殺さないといけない理由ってなんだ? 魔王であるって言うだけで殺そうとするのか?」


「それは理由にならない?」


「だったら、『あいつは将来、戦争を起こすかもしれない』という理由で、王を殺すことも良いのか?」


「王様が戦争を起こすとは限らないじゃない。

 それに、王様一人じゃ戦争を起こせないってノアさんも言っていたよね?」


「あぁ、一人では戦争を起こすことはできないが、誘導することはできる。

 王以外の国政を行うものにも、明確な利益があると分かれば良いのだからな。

 例えば、戦争により隣国から領土を奪う事が出来れば、明確な利益となるだろう。

 それに、魔王が交代したのだから、アルルの考えなら戦争は終わるんじゃないのか?」


「魔王が交代しただけで、魔王が倒された訳じゃないから終わらないよ」


「魔王を倒しても、新しい魔神の指環の所有者が現れて魔王になるだけだ。

 魔人を全て滅ぼさない限り、延々と続くことになるんじゃないか?」


「だったら、勇者は何のために存在しているの?」


「そんな事は、俺が知る訳ないだろ。

 まぁ、俺の考えでよければだけど、勇者は魔王の見張り役とかじゃないかなと思っている」


「魔王の見張り役?」


「あぁ、魔王に対抗できる唯一の戦力だからな。

 魔王が間違ったり暴走したら止める」


「我にはベルゼバブと言う諫め役もおったぞ」


「それは、ルシフェルが部下からの諫言でもきちんと聞くからだろ。

 本気でベルゼバブを殺そうと思ったら、殺せるだろ?」


「ルシフェル様が私の死を御所望でしたら、喜んで死を捧げます」


「我はそんなことは望んでおらぬ。

 ノアも変なことを言うではない」


「あくまで例えだよ。

 ルシフェルはそんなことはしないけど、もしそうなって暴走しだしたら、それを止めるのが勇者の役割じゃないかってことさ。

 人間の王と魔王の違いは、人間の王には補佐役として多くの人間が周りに居る。

 その人たちは同時に、王が暴走しようとした時に止める役を担っていると思うんだ。

 だけど、魔王の補佐役は魔王のやることの補佐しかせず、止める役が居ないんじゃないかと思うんだ」


「ベルゼバブがおったがの」


「本気になれば、ベルゼバブでも止められないだろ? 人間の王との違いはそこだよ。

 人間の王だったら、周りが本気になれば止められるけど、魔王は周りが本気になろうと止められない。

 ベルゼバブだって、ルシフェルが死ねと言ったら喜んで死ぬって言うくらいだしな」


「だから、魔王の暴走を止める為に勇者が居ると?」


「そう言う事だ」


「それだけで良いのかな?」


「それは、立派な役割だと思うぞ。

 魔王が暴走したら、世界の平和が脅かされるのは確かだしな」


「うん、分かったよ。

 ノアさんの言うように、魔王を止めるのも勇者の仕事かもしれないけど、それ以外にもあるかも知れない。

 これからも、色々と勇者の事について考えてみるよ」


「あぁ、それが良いと思う」


「分からなくなったら、ノアさんに相談しても良い?」


「もちろん構わないさ。

 何時でも来てくれ」


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