第169話 魔王様から前魔王様へ(2)
「そのような訳で、我はもう魔王ではなくなり、ただの1魔人としてこの地へと帰って来た。
ノアよ、魔王ではなくただの魔人である我を、このまま此処に住むことを認めてもらえぬであろうか?」
「俺は魔王だからと言う理由で、ルシフェルが此処にいることを認めていたわけじゃない。
敵対しても敵わないと思ったのも確かだが、村のルールを守っているのなら居ても良いと思っていた。
ルシフェルがルシフェルのままならば反対する理由はない」
「一安心したのだ。
駄目と言われたらどうしようかと考えておったのだ」
ルシフェルに笑顔が戻った。
「何だ、そんなことを心配していたのか。
王位を簒奪されて落ち込んでいるのかと思ったぞ」
「そちらは……あの激務から解放されるのであれば、願ったりかなったりであると思っていたのでな、却って清々したくらいだ」
「それで、ルシフェルが此処に居続けると言うのは分かったけど、何故、ベルゼバブもいるんだ? ベルゼバブは魔王の側仕えじゃないのか?」
「あのような、下郎の下には仕えるつもりはありません」
「と言って、頑として我の側仕えをすると言って聞かんのだ。
ベルゼバブ共々、受け入れて貰えるだろうか?」
「俺は構わない、ヴィーヴルも問題無いよな?」
「問題無いのじゃ」
「という事だ」
「有難い」
「ありがとうございます」
「そうなると、今までのように魔王領からの支援と言うか日払いは無くなるのだろ? そうなると、村のルール通りに何か働かないといけないけど、どうする?」
「それなのだが、我らも門番をするのが良いと思うのだが、どうであろうか?」
「門番か? 今のところ、アルルだけで十分だと思うが……」
「私の職場を奪う気?」
「そうではない、あの門は今まで通りアルルが守れば良いだろう。
我は門のない門番となるのだ」
「どういう事か、説明してもらえるかな?」
「今まで、我が魔王であったので、此処が魔族により襲われることはなかった。
しかし、今暫くは何事もなかろうが、今後、このまま我を放っておかぬかもしれん。
マスティマがこの場所を知っておるし、新魔王の命とあればこの場所を言うであろう。
魔族が攻めてきた場合、空を飛んでくる者へと対抗できるのは、今のところヴィーヴルしかおらん。
それならば、我とベルゼバブも備えておこうということだ」
確かに、空に対する防御はほぼ無いと言って良いだろう。
空を飛べるのだって、ルシフェルとベルゼバブの他はヴィーヴルしかいない。
「よし、じゃあ、ルシフェルとベルゼバブに魔王領方面を守って貰おう。
だが良いのか? 同族と戦うことになるのかも知れないが……」
「良いだろう。
云わば強盗と戦うのであれば、躊躇する必要はない」
「あのような下賤の者は、同族とは思いたくもありません」
ベルゼバブは怒り心頭のようだ。
「分かった。
そっち方面は任せたぞ」
「うむ、任せておけ。
それでなのだが、この話にはまだ続きがあるのだ」
「何だ?」
「我が魔王でなくなった以上、他種族への迫害が復活するであろう。
それにより、難民となり彷徨ううちに此処へも来るやもしれん。
出来れば、それらも受け入れてやりたいのだが、可能だろうか?」
「此処で受け入れられるうちは、受け入れる方向で構わない。
ただし、村のルールを守れるものだけだがな」
「うむ、それは分かっておる」
「私は明日、サリオンの元へと赴き、今後の身の振り方を伺って参ります」
ベルゼバブが、以前、此方へと連れて来たエルフ一家の下へと明日、赴くことを告げた。
サリオンには、サリオン達が作った畑へと行った時に、畑の知識を色々と教えてもらっている。
ゴブリンとは共に作業をすることはできないとの事なので、村の範囲外に暮らしているので隣人と言う関係だろうか。
サリオンはルシフェルが魔王であったから付いてきたわけで、魔王ではなくなったのだから命も解除されるという事なのだろう。
「サリオンも、魔王領に帰ったら迫害されてしまうんじゃないのか?」
全く知らない関係ではないので、気に掛かった。
「エルフは魔法に長けており、魔族もエルフは迫害しておりません」
「そうなのか。
それなら良いのだけど……」




