第166話 水路を作ろう(1)
「そう言う訳で、何か良い方法は無いかな?」
ドノバンの工房へと来て、畑の近くに水を引くための方法がないか相談していた。
「そうじゃな、穴を掘って、川を引き込めば良いじゃろう」
「それだと、川へ水を帰さないとこの辺一帯が水没するだろ? だから、最低でも2倍は穴を掘る必要があるから、俺だけだと終わりが見えないと思うんだ」
「確かに、治水工事は1人で行うものではないからな」
「でも、この村で実際に動けるのは俺1人だからな」
「そうじゃなぁ……」
ドノバンは腕を組んで考え込みだした。
「穴を掘らずに、川が来ればいいのになぁ……」
何の気なしに呟いた一言が、ドノバンの耳に届いていたようだ。
「ノアよ、水を流すのに穴を掘る必要はないじゃろう。
水路を作れば良いのじゃよ」
「水路をか?」
「木材で樋を作れば、川から水を流すことが出来るのじゃよ」
「それなら、土魔法で樋を作っても良いか? 木材より頑丈に作れる」
「それで良いじゃろ。
後は、樋に水を汲み上げる方法じゃが、水車を利用するのが良いじゃろう」
「それだと、何時でも流れたままになるから、駄目だろ?」
「そうならない様に、水の入り口には水門を作るのじゃよ。
水門を開けている時だけ、此方へと水を流すようにすれば良いじゃろう」
「それは良さそうだな。
じゃあ、俺は川から此処までの樋を作ることにするよ」
「待つのじゃ。
水車から此処迄、傾斜を付けんと水が流れんじゃろう。
お主は、どうやって傾斜が付いていることを確認するつもりなのじゃろうか?」
「地面から樋までの長さを、少しずつ短くすれば良いんじゃないのか?」
「地面が同じ高さで平らならば、それでも良いじゃろう。
じゃが、地面は平らではない、高いところもあれば低いところもある。
水車からずっと下りの傾斜を付けねば、水は流れんじゃろう」
「じゃあ、どうすれば良いんだ?」
「ガレスよ、お主ならどうする?」
「同じ高さが分かるようにすればよろしいのですよね?」
「そうじゃな」
「同じ長さの棒を立てる……のでは、駄目ですよね」
「それでは、ノアと同じ発想じゃな」
「今日、その道具を作るから、明日、作業をするぞ。
ノアには、杭となるようなものを……と思ったのじゃが、土魔法で地面に箱をつくれたんじゃったな」
「あぁ、直ぐに作れる」
「では、試しに……この棒の下まで土の箱を作れるかの?」
「これで良いか?」
ドノバンが持っている棒の下まで土の箱を作った。
「うむ、これが出来るのであれば、直ぐに傾斜を付けることが出来るじゃろう。
明日は朝から水車へと行くのじゃ」
「道具を作る所を見ていたら駄目か?」
「明日のお楽しみに取っておくのが良かろう。
さぁ、明日の作業を今のうちにやっておくのが良いじゃろうから、行った行った」
ドノバンに工房から追い出されてしまった。
なんにせよ、明日、ドノバンが何か道具を作って水路を作るために必要な道具を作ってくれるらしい。
それなら、俺は水を溜められる物を作っておけば便利だろうと思い、畑の横に高さが俺の膝上位の大きな土の箱を作った。