表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
159/366

第159話 毎度恒例の歓迎パーティ

「この村で、暫くの間ご厄介になります、勇者のアルルです。

 よろしくお願いします」


 この日の夕食は、あらかじめハンナ達が此方に来ることを伝えておいたので、歓迎パーティをする予定だった。

 その中に勇者のアルルが追加された。


 ゴブリン達を見たアルルは、思わず剣を抜こうとしていたが、住民だという事を説明して事なきを得た。

 あれだけ『大丈夫だから』と説明しても、やはりゴブリンを目の前にすると反射的に剣を抜こうとするらしい。


 明日にでもゴブリン達の働く様子を見せれば、また驚くかもしれない。

 明日は、アルルに村の様子を紹介してやろう。

 考え方を変える良いきっかけになるかも知れないしな。


「本当は魔王と戦いに来たのだけど、ノアさんに止められました」


「そうか、我と戦いに来たのか? 相手をしても良いぞ」


「ノアさん、良いかな?」


「止めてくれ。

 今のアルルじゃ勝てないって言っただろ。

 ルシフェルも煽るんじゃない。

 ベルゼバブに頼んで、仕事を増やしてもらうぞ」


「それでしたら、お安い御用でございます。

 早速、用意して参りましょう」


 ベルゼバブが席を立ち上ろうとしていた。


「ベルゼバブ、止めるのだ。

 ノアも、冗談が過ぎるぞ」


「戦う暇があるのなら、仕事を増やした方がベルゼバブも喜ぶだろうと思ってな」


「分かったから、止めてくれ」


 ルシフェルはうなだれている。

 ベルゼバブは席に座り直し、微笑んでいる。

 他の皆が笑っている。


 ベルゼバブも、冗談であることは分かっていて、乗ったようだ。

 此処に来た当初なら、こんな冗談は通じなかったかもしれない。

 村に馴染んできたように思える。


 俺が望んでいた生活が、実現しつつあるように思えた。


『他種族と一緒になって笑う事があるなんて、思ってもいませんでした』


 アンが、こちらに来て呟いた。


「そうだな、アン達は人間に見つかったらすぐに戦うしかなかったからな」


『はい、こんな穏やかに暮らせるなんて、考えられませんでした』

『本当に、ノア様には感謝しております。

 ありがとうございました』


 ドゥもこちらに来て、お礼を述べていた。


「俺も、こんなに早くこうなるとは思っていなかったよ。

 最初にアンやドゥが来てくれたことがきっかけだから、俺も感謝するしかないよ。

 ありがとうな」


「どうしたのじゃ? 何故、こんな所で頭を下げ合っているのじゃ?」


「いや、こんな風に暮らせる日が来れば良いなとは思っていたけど、こんなに早く実現するとは思っていなくてな」


「妾も、美味しい物を沢山食べる事が出来て、満足なのじゃ」


「それは良かったよ。

 こんな日が何時までも続けられるように、頑張るよ」


「程々にするのじゃ。

 この村は、ノアが居てこそなのじゃ」


「分かったよ」


 ルシフェルは立ち直って、ドノバンと酒を飲んでいた。

 あ、ベルゼバブも飲んでいる……色々と大丈夫なのだろうか?


 アルルは……イルデとアイリスに囲まれて、何か話しているようだ。

 多分、問題無いだろう。


「ノア、こっちへ来て飲むのだ。

 さっきの仕返しをしてやる」


 ルシフェルから、先ほどの仕返しの挑戦状を受けた。


「分かった。

 望むところだ、受けて立ってやる」


 3杯ほど飲んだあたりから、記憶があまりない。

 そしてそのまま寝てしまったようだ。

 ルシフェルには見事に仕返しを果たされたのだろう。

 まぁ、勝てるとは思っていなかったが……


 ヴィーヴルに起こされだが、ルシフェルとドノバンはまだ飲んでいた。


「悪いけど、俺はもう無理みたいだから部屋に帰るよ。

 お前らも、程々にしておけよ」


「ノアさん、私は何処に寝れば良いの?」


「あ、アルルか……申し訳ない、寝床を作るのを忘れていた。

 仕方がないから、俺の部屋のベッドを使ってくれ。

 俺は床にでも寝るから」


「分かったよ。

 じゃあ、ノアさんの部屋は何処なの?」


「待つのじゃ。

 ノアとアルルが同じ部屋で一晩を過ごすという事なのじゃ?」


「そうだが、何か問題あるか?」


「嫁入り前の娘が男の部屋で一晩を過ごすというのは問題なのじゃ」


「冒険者だと、同じ所で野宿したりするよ? 同じ部屋で雑魚寝することもあるし」


「2人きりで、同じ部屋で寝るわけではないのじゃ」


「そうだけど、私は別に気にしないよ」


「気にした方が良いのじゃ。

 仕方がない、妾が監視役として部屋に居るのじゃ」


「ヴィーヴルが? 寝たら拙いかもしれないんだろ?」


「妾は一晩位、寝ずとも問題無いのじゃ。

 さぁ、そうと決まったら、部屋へ行くのじゃ」


 ヴィーヴルが、俺の横へと潜り込んだかと思うと、肩を持ってくれた。

 そのまま、引っ張られるかのように俺の部屋の方へと向かって歩いた。


「ちょ、ちょっと待てってヴィーヴル。

 自分の足で歩けるって」


「良いのじゃ、ノアはまだ酔っているようなのじゃ」


「大丈夫だって、もう、酔いも醒めたって」


「酔っている者ほど、そう言うのじゃ」


 そうして俺は、ヴィーヴルによって俺の部屋へと連行された。

 「待ってよ~」と言いながら、アルルが後を追ってきていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ