第151話 オーガの母子の移住(1)
今日は、オーガの母子を迎えに行く予定の日だ。
6人の移住だから瞬間移動で移動では、一度で全員を運ぶのは無理だろう。
1回に3人ずつの、2往復すれば行けるか?
ファーティがお供を希望したが、街中への移動もあるので、今回も承諾しなかった。
単純に、お供として連れて行くだけの余裕が無いのもあった。
瞬間移動を繰り返し、魔王領での移動拠点であるガレスの家まで着いた。
一休みして、ハンナの家へと歩いていく。
ハンナの家は、前来た時に案内されていたので覚えている。
(何か、警備兵の数が多いな……何かあったか?)
ハンナの家へと向かう途中、4人の警備兵らしきオーガとすれ違った。
前に来た時は、警備兵とすれ違う事なんてなかったのにな。
1人には、「こんな所で、ただの人間が何をしている?」と呼び止められた。
ハンナの家のドアをノックすると、中からハンナではない女性のオーガが顔を出した。
「ここはハンナの家だと思うけど、合っているかな?」
「はい、そうですが、どちら様でしょうか?」
「俺はノアだ。
今日、ハンナが俺の村へと移住する予定だから、迎えに来たのだが、入れてもらえないだろうか?」
「ノアさんですね。
母より話は聞いております。
どうぞ、お入りください」
「ありがとう」
俺は、開けられたドアをくぐり、家の中へと入っていった。
家の中では、ハンナと子供達が座って待っていた。
「ハンナ、迎えに来たけど、用意は出来ているか?」
「えぇ、大丈夫です。
あと、子供達を紹介いたします」
そう言って、ハンナは子供達を紹介してくれた。
先ほどドアを開けてくれた長女のアリシア、長男のルーク、次女のジャンヌ、次男のモーガン、三男のアドラム。
「じゃあ、皆を村へと連れていくけど、このまま歩いて連れて行くのはしない。
3人ずつ運ぼうと思っているんだけど、誰から行くかな?」
「運ぶってことは、私達は何かに乗っていくんでしょうか?」
「乗り物じゃないんだけど、危険は無いから、俺を信用してもらえないかな?」
「では、私が参ります」
そう言って、アリシアが立候補してくれた。
「あと2人だけど……」
「じゃあ、俺も行くか」
ルークが立候補してくれた。
「あと、ジャンヌ、お前も行くぞ」
「分かりました、お兄さん」
ルークがあと一人を選んでくれた。
「よし、決まったようだな。
じゃあ、荷物を持って、俺と手を繋いでくれ」
三人は荷物を持って俺の近くへ集まり、俺の手を取った。
「よし、じゃあ、今から俺達は瞬間移動で居なくなるけど、大丈夫だから安心してくれよ。
日が真上に来る前には戻ってこられると思うから、待っていてくれ。
良いか、移動中は絶対に手を離すなよ」
そう言って、瞬間移動を発動させて、街の外に置いてある目印迄移動した。
あとに残されたハンナと次男、三男の3人は、暫くの間茫然としていた。
瞬間移動により移動してきた長男、長女、次女の三人も口を開けて茫然としている。
「少し休んだら、また移動するぞ」
俺は何も気にすることなく、3人へと話しかけた。
俺にとっては日常作業だからな。
「じゃあ、次行くぞ。
皆、手を繋いでくれ」
再び、瞬間移動で移動しようとした時に、アリシアが我を取り戻した。
「ノアさん、次に行く前に、一体、何が起こったのか説明してもらえるでしょうか? それに、一体、此処は何処でしょうか?」
「瞬間移動って言っただろ? 説明するのは難しいから勘弁してくれ。
あと、此処は街の外の森の中で、正確な場所の説明は出来ない」
「分かりました。
次に行くとはどう言う事でしょうか?」
「俺の瞬間移動では、一度に移動できる距離に限界があるんだ。
だから、魔族の街から村まで、何度か瞬間移動を繰り返すしかないんだ」
「それなら、先に説明して欲しかったです」
「いくら説明しても信じてもらえないかもしれないからな。
実際に移動したら、信じるしかないだろ?」
「それはそうですが……」
「ハンナ達も迎えに行かなきゃいけないから、あまりのんびりしていられないから行くぞ。
遅くなったら、あっちも心配するだろうしな」
「そうですね……分かりました、お願いします。
ルーク兄さん、ジャンヌ、次に行くそうよ。
そろそろ、戻ってらっしゃい」
ルークとジャンヌは謝りながら俺と手を繋いだ。
その後、何度か瞬間移動を繰り返して、村まで到着した。
既に作ってあるハンナ達の家へとアリシア達を連れて行った。




