第145話 移住者が来る度にパーティを開催するのか?
ガレス一家が来る。
ハンナ一家も来ることになった。
じゃあ、毎度お馴染みの歓迎パーティをやるしかないという事で、ハンナ一家が住む予定の家を作った後、ドワーフの街へと向かった。
「住民が増えるのならば、歓迎パーティをやらないといけないのじゃ」
ヴィーヴルのこの言葉に、俺は反対する気はなかった。
俺もやろうと考えていたし、こんな所ではパーティぐらいしか楽しみは無い。
住民が増える度にパーティをやるのは、その内出来なくなるだろう。
下手をすれば、毎日がパーティになってしまうだろうし、それは良くない。
金が無限に湧いてくる訳ではないので、何時かは自重せざるを得なくなるだろうし、パーティに慣れてしまい特別感が無くなってしまう。
偶に行うからこそ、パーティは楽しいのだと思う。
今のうちに、楽しめる時には楽しもう。
アイリスからは、食材のリクエストは無かったが、見たことが無い食材が売られていたら買ってきて欲しいと言われている。
新しい食材、料理方法が楽しくて仕方がないとのことだった。
新しく来たルトルーラからもオーガならではの料理方法を習う事が出来て、とても喜んでいた。
今日もルトルーラから料理方法を習うとのことで、村で留守番だ。
だから、イルデと2人で街へと向かっている。
羊を売ってくれたセラと再会させようと思ったからだ。
ついでに、羊を飼う上での注意点も聞いてきてもらうように頼んである。
なにせ、飼育について知っている者が村にはいない。
羊をどう飼えば良いのか、誰も知らないからだ。
(全てが良い方向に流れているな……悪いことが起こる前触れじゃなきゃ良いのだけど……)
冒険者家業をしていた時は、良いことが続くと、必ずと言って良いほどに悪いことが起きる。
まるで、良いことと悪いことは表裏一体だと言わんばかりに。
皆はその幸せを謳歌していても良いが、俺は何が起きても良いように心掛けておく。
心配性と捉えられるだろうが、それが村長たる俺の仕事だろう。
出来ることは出来るうちにしてしまいたい。
俺はイルデをセラの元へと預けて、街へ買い出しへと向かった。
積もる話もあるだろうから、この方が良いだろうと考えた結果だ。
俺は、馴染みの露店へと足を向けた。
「いらっしゃい、今日からチェリーが始まったよ」
「そうか、じゃあそれを3山貰おうか」
「毎度ありがとうね。
おまけに、これを付けておくね」
そう言って、横に置いてある箱の中から、黄色い果物を取り出した。
「それは、何なんだ?」
「これはね、ロウクワットと言う木の実だよ」
「聞いたことないな」
「うちでも、まだお試しだったからね。
もう少しで売りに出せるだけ作れるようになると思うから、試してみておくれ」
「分かったよ、ありがとう」
「良いって事さ、お宅はお得意さんだからね」
「お、そっちにはスイカがあるじゃないか。
もう、そんな時期なのか?」
「そうだね。
これは走りの物だから、まだ熟しきっていないけどね」
「じゃあ、何で置いてあるんだ?」
「これは、領主様へ納めるための物だよ。
領主様はスイカが大好物らしくて、走りの物でも構わないから持って来いとのことらしいよ」
「そうなのか」
「そうさね、それでスイカを作っている農家で話し合って、皆で順番に1つずつ献上しようってことになったのさ。
まぁ、走りだから食べられないことは無いけど、どうせなら美味しく食べて欲しいからね。
もう少ししたら、売り出し始めると思うよ」
「その時が楽しみだな」
俺も、スイカは嫌いではない。
川で冷やしておけば、それはもう、美味しく食べられるからな。
他での仕入れも済んで、イルデを迎えに牧場の手前まで瞬間移動した。
歩いて牧場へ行くと、イルデとセラが丸太小屋の前で立ち話をしていた。
「ノアさん、お帰りなさい。
仕入れは終わったのかしら?」
「あぁ、終わった。
こちらはもう良いのか?」
「そうね、ノアさんにセラから相談したいことがあるそうなので、此処で待っていたのよ」
「相談か? 俺に出来ることなら良いけど」
「単刀直入に言うわ。
私もそちらに行きたいのだけど、良いかしら?」