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第141話 母子家庭の移住審査

「紹介するよ、そっちへ移住したいと言っているハンナだよ。

 ハンナ、こちらが移住先の村長さんでノアさんだよ」


「初めまして、ハンナです。

 よろしくお願いします」


「ノアだ、よろしく頼む。

 ハンナはこちらの村への移住について、どこまで聞いているのかな?」


「はい、そちらに行ったら、衣食住は割り当てられること、ゴブリンが一緒に住んでいることでしょうか」


「うん、言葉が足りていないようだから、村のルールを村の皆で造ったんだ。

 このルールに従えない者は、こちらへの移住を認めないという事になったんだ」


 昨日決めたルールを写した紙をハンナの前へと差し出した。


「へぇ、どれどれ?」と横からルトルーラも覗き込んだ。


「難しく書いてあるけど、要は他種族を虐めない。

 働ける者は働いてもらうけど報酬は無い、代わりに衣食住を保障するってことだな。

 他団体がどうのうは、とりあえず関係ないと思う」


「報酬が無いのは何故だい?」


「前にも話したが、村は他の村から遠く離れたところにある。

 だから商人とかはないし、金を持っていても使うところがない。

 だから、生活に必要な物は村で用意する代わりに報酬がないということだ」


「生活に困ることは無いのですか? まだ、村が出来てそれ程経っていないと伺っていますが……」


「今のところ無いかな? 食料は森の動物を狩ったり、ドワーフの街から仕入れてきたりしているから。

 畑を作ってはいるけどまだ形になったばかりだから、ラディッシュ以外はまだ収穫できていない事に困っているぐらいかな」


「私にできるような仕事があるのでしょうか?」


「ハンナが出来ることだけをやればいいし、出来ないことはしなくて良い。

 やりたいことがあれば、それをやってくれれば良いよ。

 その為に必要な物があれば、買えるものなら買ってくれば良いのだしな」


「仕事が遅いため、一定の職に就けませんでしたから……」


「仕事が遅いことが問題なのか? 普通の村や仕事場だと、速く作れば作るほど沢山仕事をこなせて、その分儲かることになるだろうからな。

 だけど、うちの村では急いでやっても、良いことなんて特にないと思うぞ。

 沢山作っても、皆で分けられる分以上に作られると、持て余してしまうだけだからな」


「私が働くだけで、家族全員の生活が保障されるのですか?」


「それでも良いんだが、出来れば、子供も出来ることで構わないから働いて欲しい」


「子供にも出来る仕事があるでしょうか?」


「村にはドワーフの子供が1人居るのだけど、その子は食堂の料理長だ。

 母親から料理の仕方を習ったばかりだったけど、その方面に才能があったらしいんだ。

 ルシフェル……ここの魔王様の胃袋をがっちり掴んじまったな」


「それは、才能があったからでしょう? 普通の子供には無理です」


「それはやってみないと分からないだろ? その子供だって、鍛冶や裁縫なんかもやってみたけど、それらは向いていないようだった」


「それはそうかも知れませんが……」


「それに、村にはゴブリンの子供が居るんだけど、その子供たちは畑の仕事を手伝っているぞ。

 畑を掘り返すとかはできないが、害虫を探して駆除している。

 自分たちが出来ることを、出来る範囲でやって貰っているよ」


「うちのルネリーゼにも何かやらせようか?」


「それなら、ルネリーゼはルトルーラの手伝いで良いと思うぞ」


「そうだね、ルネリーゼ、お母さんの仕事を手伝うことになるけど、良いかい?」


「うん、でも、なにをするの?」


「それはこれから決めるんだよ」


「そうと決まったら、ルトルーラ達は引っ越しの準備をしてくれ。

 多分、ベルゼバブが俺達を乗せるものを取りに行ったと思うからな」


「大体終わっているよ。

 うちの話し合いが終わった後から、準備を進めていたからね」


「そうか、なら、入れられそうな荷物をこいつに入れてくれ」


 そう言って、ストレージの袋を3つ取り出した。


「この大きさなら、何も入らないよ」


「いや、これは見た目より沢山の物を入れられるようになっているから、その辺の物を出し入れして試してみてくれ。

 あ、この中に生き物を入れると死んでしまうから入れるなよ」


「それじゃあ、試してみるとするか。

 ディスパー、ルネリーゼ、一緒に試すよ」


 3人はその辺の物を出し入れしていた。


「入れると、どこかに消える感じがして、出す時には何処からか現れる、不思議な感じだね」


「それに入れれば、引っ越し荷物が少なくて済むからな。

 それじゃあ、用意してきてくれよ」


「あいよ、ディスパー、ルネリーゼ、手伝っておくれ」


 ルトルーラはディスパーとルネリーゼを連れて、奥の部屋へと移動した。

 あちら側に引っ越しの荷物を纏めてあるのだろう。


 俺はルトルーラ達を見送ると、ハンナの方へと向き直った。


「とまぁ、そう言う訳だ。

 これらの事が飲めないという事ならば、こちらへの移住話は無かったことにして欲しい」


「分かりました。

 そちらでお世話になりたいと思います。

 よろしくお願いします」


「よし、じゃあ、ハンナの一家もこちらに来られるように準備しておくよ。

 その為にも、家を作らないといけないからな。

 ハンナの家は何人家族なんだ?」


「私と息子が3人、娘が2人の計6人です」


「それじゃあ、部屋は寝室2つと居間が1つの3部屋あれば良いかな?」


「3部屋ですか?」


「足りないか?」


「いえ、3部屋で大丈夫です。

 今は1部屋に一家6人で暮らしていますので」


「よし、じゃあ、3部屋で作っておく。

 それで、引っ越しの準備にどれ位掛かる?」


「荷物はそれほどないので、2日もあれば大丈夫です」


「よし、じゃあ、3日後に迎えに来られると思うから、そのつもりで用意しておいてくれ」


「はい、分かりました」


「あと、ハンナ達6人がこちらに来るってことは、食事の準備もそれだけ増えるって事だ。

 ハンナの所からも、料理をする人を入れて欲しいんだけど、良いかな?」


「それでしたら、上の娘が今も食事の準備をしておりますので、その子を入れましょう」


「分かった、ありがとう。

 あとは、ハンナにも引っ越しの荷物を入れる袋を渡しておこう……と思ったんだけど、先にこちらの様子を見に行こうか」


 俺とハンナは、奥の部屋で荷物と格闘しているであろうルトルーラ達の様子を見に行ったのだが……


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