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第137話 村のルール造り

 工房へと行くと、ルシフェルとベルゼバブの背中を見つけた。


「あぁ、ルシフェル、早かったな」


「おぉ、ノア。

 閲兵式と言っても、殆ど将軍の訓示だけだからな」


「そうなのか、それで、何故こんなところにいるんだ?」


「ガレスを連れてきたのだよ。

 今のところはガレスだけだがな」


「今のところはって、娘さん達は賛成してくれたのか?」


「最初は反対していたそうだが、最終的には皆でこちらに来ることになったそうなのだがな、ちょっとばかり面倒なことが起きた」


「面倒なこと? 詳しく話してもらえないか?」


「元よりそのつもりだ。

 お主の判断無しには決められぬことなのだからな」


「それなら、場所を変えて話そうか。

 食堂で良いかな?」


「うむ、そこで良いだろう。

 ガレス、お主も来るのだ」


 ガレスがこちらへと歩み寄ってきた。


「ドノバン、ガレスを借りるけど良いかな?」


「儂も無関係じゃないと思うのじゃから、儂も行こう」


「分かった、じゃあ皆で食堂で話そう」


「今後の事にも関わるだろうから、ヴィーヴルとイルデも呼んだ方が良いかもしれんぞ」


「分かった。

 じゃあ、羊を見ているはずだから、呼んでくるから先に行ってくれ」


 羊を見ていたヴィーヴルとイルデに話があるから集まって欲しいと告げ、食堂へと移動した。


「じゃあ、ルシフェル、何があったのか話してくれるか」


「うむ、本日の閲兵式の後にガレスを迎えに行ったのだがな、そこに居ったのはガレス達だけじゃなかったのだよ」


「私たちは、皆さんが帰られた後に、娘たちと移住するかどうかの話し合いをしました。

 最初は反対していたのですが、最後には皆で移住することに賛成してくれました」


「強制はしていないんだよな?」


「はい、皆さんが娘のことまで考えて頂いたのに、親の私が無下にすることはできません。

 私だけが此方に来ると言う方法もあることも伝えて、その上で賛成してもらいました」


「だが、それにより、此処の事が他の者へも伝わったのだ」


「娘たちは、友達に他の場所へ行くから会えなくなると挨拶に行ったみたいです」


「まぁ、そうだよな。

 ここへ来たらそう簡単には会えなくなるから、友達とはきちんとお別れしたいだろう」


「その時に、私だけが此方へ来ると言う方法もあったということも話したのです」


「まぁ、別に話したらいけないことじゃないし、娘さんにも提案したのだから話の流れで話すこともあるだろうな」


「それを、友達の親が聞いていたようなのですが、詳しい話を聞きたいとルトルーラの所へ来たそうです。

 そこで、私が此方へ来ていても残された家族の心配をしていたことに、いたく感動したようだったと聞きました」


「それ程の話じゃないと思うのだが……」


「そして、話をしている内に村に移住する人を集めているようだと聞き、『私達も移住したい』と言ってきたそうです」


「移住者を集めているのは事実だからな」


「そこで、我が近々ガレスの下へ行く時に、我より移住の事を聞きたいということになったそうだ」


「それで、話してみたんだろ?」


「ノアの話に感動したのもあるが、その家の父親が事故で亡くなって以来、食べるのにも事欠くような状態だったようだ。

 移住すれば暮しやすくなるのではないか? 少なくとも、迫害されることはないだろうと考えたそうなのだ」


「それ程に、オーガは迫害されているのか?」


「残念だが、魔王領では未だに裏では魔族以外への迫害があるようだ」


 前の魔王下での魔王領では、魔族以外の種族は普通の事のように迫害されていたらしい。

 戦場では文字通り捨て駒として使われてもいたようだ。

 ルシフェルが魔王となってかなり改善したそうだが、それは表向きだけでしかない。


「連れて来なかったのか?」


「ノアよ、魔王領にはこのような家庭や、もっと良くない環境の家庭がまだまだあるはずだ。

 それら全てを受け入れるのならば、この地では場所も食料も足りなくなるのは目に見えておるだろう」


「全てを受け入れるつもりは無いよ。

 第一、此処に来るとしても、アン達やファーティ達が居る。

 皆と一緒に暮らせる者じゃないとだめだ。

 家庭環境が不幸だと言う事には同情するかもしれないけど、それだけは譲れないからな」


「ならば、ルールを決めた方が良いだろう。

 そのルールが受け入れられないものは、来ることはならんと言う訳だ」


「ルールと言ったって、今、此処で全てを決められないだろ?」


「その都度、追加したり、新しい物へと変えたりすれば良いだろう。

 ルールはその都度変化していくものなのだ。

 初めから全てを決めたりする必要など無いのだ」


「そうなのか?

 じゃあ、俺が今まで考えていたことを、そのままルールにしてしまえば良いかな?」


「それで良いだろう。

 ベルゼバブ、ノアの言ったことを纏めておくのだ」


 俺が今までに考えていたことを口上していくと、ベルゼバブが書き留めていた。

 それを纏めて文章化してくれた後に、皆で考えて追加したり直したりして此処でのルールとして作り上げた。


 そうして作られたルールは、食堂に置かれることになった。

 話し合いはいつも食堂で行われるし、皆が集まる場所が食堂しかないからだ。

 その内容は、以下の通りだ。



・他種族や他者を見下さない、迫害しない。


・他団体の者や他団体のことを見下さない、迫害しない。


・他団体からの攻撃には、徹底抗戦、報復措置を持って対抗する。

 ただし、村から他団体への先制攻撃は行わない。


・他団体間の争いには、片方への肩入れをせずに判断する。

 また、極力関与しない。


・衣食住については村で保障する代わりに、村への貢献が必要。

 家族など他者による貢献でも良い。

 貢献による報酬は発生しない。



 最初だから、5つもあれば十分だろうとなった。

 この5つは、発生していることや、直ぐにでも発生しそうな事についてだ。


 他団体……は、魔王が居るという事で国やギルドから攻撃された時のことを考えてと、村民が増えた時に宗教や集まり間の争いを起こさせないためだ。

 売られた喧嘩は買うが、こちらから喧嘩を吹っ掛けるつもりはない。

 極力、喧嘩を売られないようにはしたいところではあるが……


 5つ目は貢献としたのは、労働に限るとルシフェルも村への働きが必要となるので、貢献という言葉で濁した。

 家族などというのも、老人、幼児や、家族が居ない独り者が怪我などで働けなくなった者などを、村から追い出すことにならないようにと考えた結果だ。


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