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第135話 羊を手に入れた(2)

 俺はストレージから金貨15枚をテーブルの上へと出す。

 傍から見れば、布袋から金貨を取り出しただけにしか見えないだろうから、気にすることもないはずだ。


「あら、お金持ちなのね? てっきり、今回は値段を聞くだけかと思ったのに」


「今、手持ち分で足りそうだったからな」


「他に住んでいる方に、許可をとらなくても良いのかしら?」


「住民には家畜が欲しいって伝えてきてあるからな」


「分かったわ。

 今日、連れて帰るのかしら」


「直ぐに連れて帰るとは思っていないだろうから、どうせなら皆をびっくりさせたい。

 小屋はまだないけど、一緒に住んでいるドワーフに頼めば1日も掛からずに作ってくれると思う」


「ドワーフが住んでいるのね?」


「あぁ、街外れに住んでいたドノバンってドワーフだよ」


「あら? そっちにドノバンがいるってことは、イルデも一緒にいるのかしら?」


「あぁ、家族一緒に越してきたから居るけど、イルデを知っているのか?」


「えぇ、昔はよく一緒に遊んでいたしね」


「幼馴染ってやつか」


「そうね。

 昔、街に住んでいた時に、家が隣同士だった時があったのよ」


「此処で生まれたわけじゃないのか? 牧場主っていうから、親から受け継いだものだと思ったんだが」


「私は、牧場主だった夫の元に嫁いできたのよ」


「だった?」


「えぇ、病気で亡くなったの。

 今は私が夫の跡を継いで、牧場を管理しているのよ」


「悪かったな、変なことを聞いて」


「じゃあ、イルデの住んでいた家は空き家ってことなの?」


「街へ来る途中に、寄らせてもらっている。

 森の中で休憩するより、安心して一休みできるからな」


「そうなの……イルデの話をしたら、久しぶりに会いたくなったわ。

 今度、連れて行って貰えないかしら?」


 会わせるのは構わないんだが、アン達にヴィーヴルやルシフェルまで居るからな。

 それに、此処の領主にはミスリルの剣を売っているから、その方向から探られて場所が分かってしまうのもまずい。

 場所を言わないと約束してもらっても、領主に問い詰められたら言わざるを得ないだろうしな。


「イルデと会わせるのは構わないのだが、ちょっと事情があって、俺達が住んでいる場所を教えることはできないんだ。

 特に、此処の領主に知られるのが拙い。

 ドノバンの仕事絡みが理由で、こちらへと移住した理由も仕事絡みなんだ」


「そうなの」


「それでだな、イルデと会いたいのならば、こちらに移住するか、こちらへと連れてくるかだな」


「あら、出てくるのは良いの?」


「あぁ、構わないが、さっきも言った通り、街まで1日中森の中を歩くことになるから、誰かが居ないと難しいと思う。

 道中、動物や魔物と遭遇する可能性もあるしな」


「護衛してくれる人が居ないと無理ってことね」


「だから、俺が一緒に街まで来ていたんだ。

 今までもイルデを連れて街まで買い出しに来ていたしな」


「今日は一緒に来なかったのね」


「一人の方が動きやすかったからな」


「分かったわ。

 今度、来る時はイルデを連れてきてくれると嬉しいわ。

 じゃあ、今度こそ連れて帰る羊を見に行きましょう」


「あぁ、よろしく頼む」


 セラはロープを2本持ってきた。

 羊の首にかけるのだろう。


 俺は、セラの後を追うようにして、牧場の中へと進んでいった。

 途中、小高い丘の上でセラの亡き夫の弟だと言うセインと挨拶を交わし、羊が群れている場所を教えてもらった。


「さてと、どんな子が良いのかしら?」


「俺にはどの羊が良いのか分からないから、セラに任せるよ」


「そう? じゃあ、イルデの知り合いということだし、良い子を選んであげるわ」


 素人が余計な口を挟むべきではないだろう。

 首に縄が掛けられた羊がセラに連れられてきた。


「この2頭でどうかしら?」


「あぁ、その2頭で頼むよ」


「じゃあ、はい」


 セラは、2頭の首へと繋がれたロープを俺に渡してくれた。


「ありがとう……何か、付いてきている羊がいるんだが?」


「あぁ、羊は群れたがるから、その2頭が動き出したから付いてきたんだと思うわ。

 私がここで他の羊を見ているから、連れて行っていいわよ」


「分かった。

 その内、イルデを連れてくるよ」


「楽しみに待っているわ」


 セラとはその場で別れて、牧場から出た。

 暫く街への道を歩いたところで、人気がないのを確認して、街の裏門前の道へと瞬間移動した。

 そこからドノバンの元の家を経由して、何度かの瞬間移動を繰り返して、村へと帰ってきた。


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