第133話 樵は森と共に生きる
俺は、樵が木を切り倒すのを待っていた。
木を切っている最中に、声を掛けるのは危険だと思ったからだ。
木を切り倒した後、1人は枝払いを始めたので、枝払いをしていない方へ声を掛けた
「こんにちは。
ちょっと聞きたいんだが、良いかな?」
「なんじゃ、見ない顔じゃな」
「俺はノアと言う者だ。
森の中を歩いていたら、樵の音が聞こえたんで来てみたんだ」
「そうか。
それで、儂らに何の用なのじゃ?」
「あぁ、話と言うのはな、今、俺が住んでいる所にも森があるのだが、これの手入れを出来るものが居ない。
なので、樵が来てくれれば良いなと思っていた所に、樵の音が聞こえたんで声を掛けてみたんだ」
「つまり、儂らに来てくれんかと言う事か?」
「簡単に言えばそういう事だ。
だが、1つ問題がある。
俺が今居るところは、ここからずっと離れた場所だ。
此処から通うとかは出来ないので、こちらに住んで欲しいんだ」
「ならば、儂らは駄目じゃな」
「どうしてだろうか? 理由を聞いても良いか?」
「大抵の樵は、生まれ育った森と共に生きるものなのじゃよ。
他へ移動するのは、守り継ぐ森が無かった者じゃな。
そうせんと、森の奪い合いが発生するやも知れんのでな」
「そうすると、そっちに居るのは……」
「あぁ、儂の跡を継ぐ予定じゃな」
「他には居ないのか?」
「おらん。
それこそ、他の所へ行く予定が無いのに育てることは出来んじゃろ。
暫くは良いかも知れんが、後々の遺恨の種となるじゃろう」
「成程な。
例えば、俺が樵として育てて欲しい人を連れてきた場合、どの位で一人前の樵として育てられるんだ?」
「その者の努力次第じゃが、早くても木の種がお主位の高さまで成長する期間は必要じゃろう」
「そんなには待てないな」
「すぐに樵が欲しいのならば、木の生えていない土地で樵を探すんじゃな。
もっとも、そんな樵が行ったところで、同じように木が1本も無い土地とされるじゃろうがな」
「それは困るよ」
「あとは、エルフ共を連れていくかじゃな。
あ奴らの森に対する知識は、認めざるを得んじゃろ」
エルフは近くに住んでいるけど、エルフ達を森の管理者とするならば、最低でもアン達は森への立ち入り禁止としないと、説得できないだろう。
それなら何とかなるかもしれないが、『畑を広げたいから、森を開拓したい』とか言ったら、『ゴブリンが居る場所を作らせるとは何事か』とか言われかねんしな。
「ありがとう。
とても参考になったよ。
仕事の邪魔をして悪かったな」
「いや構わんのじゃ。
一休みしようと思っておった所じゃったから」
俺は来た方向へと踵を返し、牧場のあるはずの方へと向かって歩いた。




