第129話 畑仕事の手を増やそう(1)
畑の世話は、アン達に全て任せることとなった。
俺は作業はしないとしても、アン達が作業しやすいように用意する必要があるだろう。
相談を受けたら、それにこたえる必要もあるし、時にはエルフ達に聞きに行かなければならないだろう。
「畑の作業で困っていることがあったら、何時でも言ってくれ」
『はい、作っている物を収穫して良いのかは分かりませんので、その時が来たら教えていただきますようお願いします』
此処へ来て、ラディッシュ以外を収穫したことが無いから当然だよな。
「あぁ、分かった。
昨日見た所、順調に成長しているみたいだから、このまま作業を続けていけば大丈夫だと思う」
『分かりました』
「それでだ、前に話した通りアンを連れていきたいんだが、今日は大丈夫だろうか?」
『私は大丈夫です』
『私も大丈夫ですよ。
畑の事も、トロワ、キャトル、サンクの事もお任せください』
「ドゥには負担を強いることになるけど、よろしく頼む」
朝食の時、ゴブリンを探してくる為、今日一日、村を留守にすることを伝えた。
ファーティとツヴァイが、護衛として一緒に来ることとなった。
(アン達が居た集落が、残っていれば良いのだけどな……)
そんなことを考えながら、ゴブリンの集落へ向かった。
結果として、集落は無くなっていた。
簡素ながらもあった家が、今はほぼ原形を留めていない。
クマになぎ倒されたのだろうか? だが、全滅したと思われる程の血しぶきが無い様に思える。
死体が全く無いのもおかしい。
『あの後も、クマが来たのでしょうか?』
「多分、そうだと思う。
ただ、全滅するほどの被害では無いように思える。
死体が全く無いのもおかしい。
全滅したのなら、放置された死体があるはずだからな」
『もしかすると、生き残りが居るかもしれないという事ですか?』
「その可能性が高いと思う」
『ならば、何故、居ないのでしょうか?』
「理由は分からないが、場所を変えたんじゃないかと思う」
どうしようか……
『主よ。
この辺にゴブリンが居ないか見てきましょう』
ファーティから探して来ることを提案された。
このままここで、考えていても仕方がない。
他に方法がある訳では無いし、ファーティの提案に乗せて貰おう。
「ファーティ、じゃあ、済まないがそちら側を探してきてくれるか。
俺達はこちら側を探してみる。
そうだな……日が真上に来るくらいの頃、また此処で落ち合おう」
『御意。
ツヴァイ、お主は主の護衛としてそちらに付いていくのだ、良いな?』
『はい、父上。
お気をつけて』
ファーティは森の中へと駆けて行った。
「さて、俺達はこちらを探そう」
暫く周辺を探索していたが、ゴブリンらしき痕跡は見つからなかった。
時間が掛かりそうだなと思ったその時、ツヴァイの動きが止まった。
遠吠えで『分かりました』と伝えていた。
「どうした、ツヴァイ?」
『今、父上がゴブリンを見つけたと知らせて参りました』
ファーティがゴブリンを見つけたらしい。
それを遠吠えで伝えてきた様だ。
「良く聞こえたな。
俺には突然、遠吠えを始めたようにしか見えなかったよ」
『父上より、人より我々の方が良く聞こえると聞いております』
「そうなんだ。
よし、ツヴァイ、ファーティの所まで案内してもらえるか?」
『承知しました』
ツヴァイの案内で、ファーティの元へと向かった。
途中、遠吠えで話しているようだったが、ファーティの声を聴くことは出来なかった。




