第127話 家畜を飼いたい
次の日は、やはり酒を買いに街へと行く羽目となった。
大酒飲みが3人も居るのだから、いくらあっても足りなくなる。
在庫として貯めておいた酒は全て無くなった。
俺は2~3日晩酌が無くても平気だが、ドノバンとルシフェルは晩酌が無いと生きていけないかもしれない。
ルシフェルは仕事の鬱憤を酒で晴らしているのだろうか?
「儂の弟子が出来た祝いじゃろ? 酒を出さんか」
「違うよ。
それに、それならお前の隠している酒を持って来いよ」
「知っておったんじゃな? あれは、歓迎パーティで開けるつもりじゃよ」
そんな訳で、イルデ、アイリスと共に街へと来た。
イルデは布と糸が無くなって来たのでそれらを買いに、アイリスは食材の目利きの練習も兼ねての買い物だ。
アイリスを偶には街へと連れて行った方が良いだろうと、イルデに言われたのもある。
街での買い物を済ませて、元のドノバンの家で一休みをしている時に、イルデから「家畜を飼う気は無いの?」と聞かれた。
牛やヤギが居ればチーズを作れるようになるだろうし、羊からは羊毛が得られるだろう。
鶏が居れば卵を得られるし、死んでしまった場合は食べることもできる。
「家畜は欲しいけど、ストレージでは生き物を運べないしな。
今の所、家畜を運ぶ方法が無いんだよ」
「瞬間移動で、1~2頭ずつ連れてくれば良いと思うわ」
「そうか、俺が触れていれば良いから、2頭までなら連れて帰れるか。
今度街へ来た時に、売っていたら買って戻るよ」
「街に行っても、売っていないと思うわよ。
偶に売りに来ている人も居るけど、何時でも売っているとは限らないし、売っていても殆どは雄だと思うわ」
「どうしてだ?」
「ミルクは雌からしか出ないし、卵は雌鶏のように、必要なものは全て雌からしか取れないでしょ? 逆に言えば、雄からは何も取れないから必要じゃなくなるのよ。
だから、雄はある程度育てたら肉として売られるてしまうか、生まれてすぐに街へ持って来て売ってしまうのよ。
雌が面倒を見切れない程に多くなった場合は売りに出すかも知れないけど、その時はそのまま肉屋に持って行くと思うわ」
「生きたまま売らないのか?」
「それを元に増やされたら商売上がったりでしょ? だから、商売敵とならない確証が無い限りは売らないと思うわよ」
「家畜を飼っている所へ直接行って、商売敵とならないことを約束して買って来るしかないという事か」
「それか、野生の動物を手に入れるかね」
「野生のを見つけるなんて言うのは、見つけられるか分からないだろ?」
「そうね」
「この辺に牧場とかあるかな?」
「此処から見て街の反対側の方に牧場があるはずよ」
初めてドワーフの村へ行った時に拓けていた場所があったが、あの辺りだろうか?
「そうか、じゃあ、今度街へ出てきた時に、ちょっと寄ってみるよ」
「それで、家畜を手に入れたとして、誰が世話をするのかしら?」
「俺が世話をするつもりだけど」
「それは駄目よ。
何時でも、あそこに居られる訳ではないでしょ? それは、飼われる方としても不幸でしかないわ」
「そうだな……商人が居れば、俺が街まで来る必要は無いけど、商人が居ない以上、俺が足代わりを務めないといけないしな」
「新しく連れてくるつもりなんでしょう?」
「あぁ、じゃあ、酪農家に来てもらうか、新しく来たものの中から酪農家を育てればいいのか?」
「そうね、酪農家なら自分の牛とかも居るだろうから、一緒に来てくれるかも知れないわよ」
「そうは上手く行かないだろ」
「多分、居ないでしょうね。
だから、酪農家として育てる方が現実的だと思うわ」
「よし、じゃあ帰るか」
瞬間移動を何回か繰り返して、家へと帰ってきた。




