第123話 ドノバンの弟子探し(2)
朝食後、どの様にして魔王領に行こうかと話していると、「我の背中に乗れば良いだろう」とルシフェルが言った。
この言葉に、ベルゼバブが猛反対。
「魔王様に、そのような事はさせられません。
また、その様な姿を他の魔族に見られたら、何と申し開きが出来ましょうか」
ベルゼバブの言い分が全面的に正しいので、ルシフェルの背中に乗ると言うのは無しとなった。
代案としてベルゼバブの背中に乗せると言うのも出たが、魔族とは言え、女性の背中に大の大人が2人も乗っているという画は、あまり良いとは思えない。
あれこれ考えた結果、箱に入って荷物の様に運ぶこととなった。
上は開いているので、息苦しいという事はないが、バランスを崩すといけないので、極力、立たないで欲しいとの事だった。
傍から見れば、魔王様と従者が飛んでいて、その従者が荷物を運んでいるだけにしか見えないだろう。
帰りはまともな状態にするとルシフェルが言ってくれたので、期待しておこう。
「何か、出荷されているような気分じゃわい」
足を抱えた状態で座っているドノバンの呟きに、同じ格好で隣に座っている俺も
「長い人生、こんな事もあるさ」
と、ドノバンと自分を慰めるような言葉で返答した。
そうして、俺とドノバンは、ドノバンが作った箱に入れられて、ベルゼバブが箱を持ってある家の前までやって来た。
「到着いたしました。
お立ちになっても結構です」
「着いたようじゃな」
「身体が固まってしまうかと思ったよ」
「それでは、ベルゼバブよ。
帰りの手配を頼むぞ。
我は、引き合わせを行うとする」
「畏まりました。
魔王様は引き合わせ後に必ず城へとご帰還いただきますよう、お願いいたします」
「分かっておる」
「あぁ、ベルゼバブ、此処まで運んでくれてありがとうな」
「お気になさらずに。
魔王様の御依頼ですので」
ベルゼバブは何処かへと飛んで行った。
多分、飛んで行った方向に城があるのだろう。
「ガレス、居るか?」
ルシフェルがドアをノックしていた。
中から、オーガの女性が顔を出してきた。
「誰かと思ったら、魔王様じゃないか。
久しぶりだね。
ガレスなら、工房の方に居るから、入っておくれ」
「あぁ、邪魔をするぞ。
それで、今日はガレスに引き合わせたい者が居るので、連れて参ったのだ」
「そちらのお2人さんの事ね。
こんにちは、私はルトラーラ、ガレスの女房だよ」
「俺はノアだ」
「儂はドノバンじゃ」
「こんなところで立ち話も無いだろ。
さぁ、入った入った」
「あぁ、邪魔になるぞ」
「邪魔になるのじゃ」
ルトラーラの後に付いて、工房へと向かって歩いた。
着いた工房の中では、1人のオーガが何やら作っている最中だった。
「あんた、お客さんだよ」
「ん? 誰だ……と思ったら、魔王様じゃないか。
これは飛んだ失礼を」
「良い良い、早速だが、我の話を聞いてもらえぬであろうか」
「魔王様の願い事とあれば、何なりと申しつけ下さい」
「うむ、まずはお主に引き合わせたい者が居っての。
ノアとドノバンだ」
「ノアだ」
「ドノバンじゃ」
「私はガレスです、ここで鍛冶をやっています」
「うむ、それでな、ガレス、お主、ドノバンの弟子とならぬか?」
「弟子ですか? 突然、どういう事でしょうか?」
「ここから先は俺が話すよ。
あんまりルシフェルを引き留めていると、後でベルゼバブに怒られてしまうしな」
「そうだな、我から言うと命令と捉えられてしまうのも良くないだろう。
では、我は城へと一度帰ることとしよう。
夕方に、またここへ訪れるとしよう」
「分かった。
ルシフェル、ありがとう」
「良い。
では、また後でな」




