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第120話 防衛施設の建設(7)

 翌々日、ドノバンを門のところまで連れてきた。

 出入り口にドアを作って貰うためだ。

 ドアを作るのに必要な部品を1日で作るので、その後、連れていくことになっていた。


 壁に立て掛けてある木材を材料として自由に使って良いと伝えた。

 作っている間は暇になるので、ファーティとその息子達と共に、門の周辺で狩りを行った。

 実際には、俺やファーティが狩りを行うと息子達の練習にならないとの事で、狩りの様子を見守っているだけだったが……


 狩りの練習も終えて、良い頃合いかなと思い門の前まで戻ると頑丈そうなドアが出来上がっていた。


「おぉ、ノアよ。

 丁度、今、出来上がった所じゃ」


「ドノバン、ありがとう。

 それにしても頑丈そうだな」


「木の部分だけでも、普通のドアより厚みがあるからな。

 それに、金属部分はただの鉄では無いぞ。

 ミスリルを混ぜ込んであるのじゃ」


「そんなことが出来るのか?」


「ちょっとした遊び心から出来るようになったんじゃよ。

 鉄にミスリルを混ぜられるのだろうか? とな。

 ミスリルの量が少なすぎると、鉄のままとあまり変わらない硬さのままだったり、ミスリルが多すぎると混ざらないのじゃよ。

 何度も試して、ミスリルと混ざり合い、元の硬さよりずっと固くなる割合を見つけたのじゃよ。

 ミスリルが豊富に使える環境だからこその発見じゃな」


「そうなのか?」


「あぁ、此処以外じゃと、少量のミスリルがあったとしても、それが丁度いい割合に混ぜ込めるとは限らん。

 何度もミスリルを混ぜ込むなぞと言う、贅沢なことは出来んはずじゃからな」


「そうか、これもドノバンの努力の結晶なんだな」


「儂は、此処でミスリルやオリハルコンを好きに打てておる。

 こんな環境が与えられて、大満足じゃよ。

 ただ一つ心残りがあるとすれば……」


「心残り?」


「あぁ、このように新たな事を発見しても、此処で朽ち果てることとなると思うとな……」


 一人娘のアイリスは、こっち方面の才能が無かったようで、ここ最近は工房には行っていないようだ。

 料理の才能があるようだと分かったのだから、工房へ顔を出すことはないだろう。


「アイリスに物造りの才能があったことは嬉しい。

 じゃが、儂の技術が引き継がれることなく朽ち果てるのは、正直、悲しいものじゃよ」


「弟子は居ないのか?」


「居らんよ。

 他の工房とのしがらみが嫌であんな所へ工房を構えたのじゃからな。

 アイリスへと引き継げれば良かったのじゃが、今となってはそれも叶わんじゃろうし」


 このまま、ドノバンの技術を消えてしまうのは勿体ない気もするが、此処に居ることが移住の条件だしな。

 弟子が居れば解決するのだろうか?


「ドノバンは、弟子が欲しいのか?」


「まぁ、端的に言えばそうじゃな。

 1人でも弟子が居れば、継ぐことが出来るじゃろうしな」


「此処の都合もあるから、ドノバンが良いと思ってもダメな場合もあるかもしれないぞ」


「そうじゃな、此処で生活することになるのじゃから、最低でもお主にも認めてもらう必要があるじゃろう」


「よし、じゃあ、今晩にでもヴィーヴルと、もう少し増やしても良いか話し合ってみる。

 俺もトロワ達やアイリスのことを考えて、もう少し増やした方が良いかもとは思っていたんだ。

 良いきっかけになったよ」


「アイリスのこと?」


「あぁ、アイリスも今の所、話す相手が自分の親と大人だけだろ? 同世代の子供と言えばトロワ、キャトル、サンクが居るけど言葉が通じないからな。

 他の種族の子供だとしても、子供同士で話したいこともあるだろう」


「そうじゃな、子供には子供の世界があるじゃろうしな」


「済まないな。

 他人の家庭のことに、口を出すべきじゃないとは思うんだが」


「いや、言ってくれて有難い。

 本来なら、儂らから頼まなければならないことなのじゃから」


「まだ決まった訳じゃないから、あまり期待しすぎないでくれよ」


「アイリスの事も考えていてくれたことが、有難いのじゃよ」


「それはそうと、何故、こちら側と向こう側でドアの開く方向が違うんだ?」


 話を変えるべく、違う話を振ってみた。


「おぉ、そうじゃ。

 それはな、少しでもこの場所へと留めやすくするためじゃよ」


「どういう事だ?」


「橋を渡って最初の扉は押せば入れるようになっておる。

 即ち、走って来るだけでそのまま入ることが出来るじゃろう」 


「そうだな」


「そして、こちら側のドアは手前側に引かないと開けられん。

 と言う事は、一度、此処で立ち止まらんといかんと言う事じゃな」


「それで、勢いを殺ぐという事か」


「更にあちらからは入りやすいのじゃから、次々とこの場所へ入ってくることになる。

 この場所に入ってくる人が多くなると、更にこちら側のドアが開きにくくなるという事じゃ」


「成程な……ドアの開く方向を調整するだけで、そんな効果が得られるんだ」


「まぁ、効果は一時的なものじゃろうが、それでも、何もしないよりはましじゃろう?」


「ドノバン、こちら側のドアの内側だけに鍵を付けられないかな?」


「うむ、それならば、これでどうじゃ?」


 ドノバンはドアの上下に鉄の板を取り付けた。


「これを、こう横にスライドさせると、開かなくなるじゃろう」


 これで、門の守りは大丈夫だろう。


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