第12話 ドラゴンと遭遇した(1)
二月ほどたったある日、いつものように付近の森を探索していた。
魔物を見つけられなくても、薬草を売りに行けばいいからそんなに切羽詰まってはいない。
そんなことを考えながら探索していたら、いつの間にか結構森の深くまで入り込んでいたことに気が付いた。
(まぁ、大体の方向は分かるから問題ないだろう)
更に奥へと進むと、不意に視界が開けた。
(おぉ、こんな所があったのか……)
池というよりはちょっと大きいくらいの湖があった。
周りを警戒してみたが、鳥がピーチク鳴いているだけで特に魔物の気配はなさそうではある。
(水浴びしたら、さぞかし気持ち良いだろうなぁ)
一度、考え始めたら、もう、入ることしか考えられなくなっていた。
(まぁ、大丈夫だろう)
ゆっくりと森の中から湖のほとりへと進んだ。
やはり、魔物の気配は感じられない。
俺はいそいそと服を脱いで、足先から湖へとゆっくりと入っていった。
思った通り、心地良い冷たさだった。
(いや~、冷たくて入れなくなるまでは、ここに通うのも良いかもしれないな)
身体を拭きながら、湖を堪能した。
(さて、そろそろ上がるか……)
そう思って岸へと歩き始めたその時、不意に空が暗くなった。
(なんだ?)
上空へ目をやると、ドラゴンがいた。
(一体、何処から? ドラゴンが飛んできた気配は全くなかったぞ)
身体が金縛りにあったかのように、全く動かすことができなかった。
そうこうしているうちに、ドラゴンが目の前に降りてきた。
(あぁ、俺はここで死ぬのか。
思えば長いようで短い人生だったな)
目の前のドラゴンは俺をじっと見ている。
逃げられるような隙は見当たらないし、まだ、俺の身体は硬直して動かすことができない。
この状態で、どのくらいの時が流れたのだろうか?
恐らくは10秒も経っていないのだろうが、俺にとっては永遠にも思えるくらいだった。




