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第119話 防衛施設の建設(6)

 小さな声で呟いたのだが、ヴィーヴルの耳には届いていたようだ。


「何も無理する必要はないのじゃ。

 偶々、今は急に必要になっただけで、今後は必要となるとは限らんのじゃ。

 無論、ノアが覚えたいと言うのならば、教えてやらん訳では無いのじゃ」


「今は、瞬間移動の距離を伸ばしたいからな……せめて、ドノバンの家まで1回の瞬間移動で行けるようにはなりたいんだ」


 ドノバン達が元々住んでいた家までは、最低4回の瞬間移動を繰り返す必要がある。

 一応、見つからないと思われる距離までは1回の瞬間移動で飛べるが、休み休みになってしまう。

 急ぐわけではないが、休んでいる間に動物に襲われるとすぐに対処できないかもしれないから、少しでも危険なことは減らした方が良い。


「では、妾は壁を拵えてくるのじゃ。

 終わったら、此処に来るのじゃ」


「あぁ、また後でな」


 ヴィーヴルは、自分の持ち場へと向かって行った。


 さて、ここをどうにかしないと抜けたい放題だからな。

 簡単に入られないようにするには、何か嫌がるようなものを置けばいい。

 壁を作れば入りにくいだろうが、それだと山の頂上まで壁を作らないと同じ事だろう。

 崖にでもなっていれば、天然の壁として使えたのだが……


 棘のある草木を此処に植えておけば、多少は足止めできるかもしれない。

 火魔法で焼かれたとしても、人が通れるくらいに燃えるまでには時間が掛かるだろう。

 ヴィーヴルやルシフェルだと、それこそ一瞬で焼き尽くすだろうが、人間にはあれだけの魔力を持つ者はいない。


 近くに棘のある草木が無いか探してみたが、見つけられなかった。


(そうそう、都合良くあるわけないよなぁ)


 他の方法を考えていると、ヴィーヴルがこちらへと飛んできた。


「ノア、妾の分は終わったのじゃ」


「ご苦労様。

 俺の方は、なかなか良い案が思いつかないよ」


「そうなのじゃ?」


「棘のある植物でも置いておけば、多少は足止めできるかもと思ったけど、この辺には生えていなかったんだ」


「そうなのかじゃ……」


 ヴィーヴルも黙り込んだ。

 どうしたら良いか、考え始めたようだ。


「ここが崖だったら、そのまま壁になったんだけどなぁ……」


 俺は小声で頭の中で考えたことを、そのまま呟いていた。


「ノア、それなのじゃ! 崖になれば良いのじゃ」


「崖を作る? どうやって?」


「まぁ、見ているがよい」


 そう言って、ヴィーヴルは宙へ浮かび上がり、ドラゴンの姿になった。

 大きく首を反らし、一呼吸置いたかと思うと、目の前の壁の手前へとブレスを吐いた。

 ブレスが当たった所の地面は、大きく抉られていた。


 ヴィーヴルが人間の姿へと変わりながら地上に降り立ち、俺に告げた。


「これで、崖となったのじゃ」


 其処には地面を抉った副産物として、側面が崖になった穴が出来ていた。

 穴の中には、壁の前に開けられた穴から水が流れ込んでいた。


「まぁ、確かに崖が出来たな。

 力技ではあったものの結果オーライと言う奴だろう。

 水が流れ込んでいるようだから、この穴にも水を入れておくか」


 俺は壁の上へ立ち、水魔法で穴に水を入れていった。

 ヴィーヴルの様に魔法操作に長けていないので、時間が掛かってしまうのは仕方のない事だろう。

 暫くして、穴の中も水で満たされた。


「これで此方は良いだろう。

 ヴィーヴルのお陰で、此処もどうにかなったよ。

 ありがとうな」


「では、ルシフェル達と合流するのじゃ」


「あぁ、それで、反対側の方も同じように処理しよう」


「分かったのじゃ。

 では、行くのじゃ」


 再び、ヴィーヴルと空を飛んで、門の前へと向かって行った。

 ルシフェル達は既に到着しており、ベルゼバブがファーティの狩ってきた獲物の血抜き処理をしていた。

 魔王様に血抜き処理なんてやらせられないよな。


 到着すると、ルシフェルから「して、どの様に処理したのだ?」と聞かれたので、行ったそのままを伝えた。


「それでは、敵が迂回してきたら意味がないのではないか?」


「完全に防ごうと思ったら、それこそ山頂まで壁を作らないといけないだろ? 時間を稼げれば良いと思うから、これ位で充分だろう。

 それに、鎧を着こんだ軍隊は登れないだろうから、それを制限できるだけでも随分違うと思うぞ。

 数の暴力を防ぐのは、ヴィーヴルでも苦労するって言っていたしな」


「そうだな、個々の能力が劣っておる場合には、数で補うのが基本だからな」


「そういう事で、俺とヴィーヴルでもう一つの方を処理してくるよ」


「分かったのだ。

 では、我々も一緒に行くのだ。

 別に構わんだろ?」


「あぁ、良いよ。

 ファーティは、先に帰っても良いよ。

 これまでの案内、ありがとうな」


『ありがたき幸せ。

 では、我はこれにて失礼いたします』


 ファーティは家の方へと駆けて行った。


「それじゃあ行こうか。

 でも、ルシフェル、別に来なくても良かったんだぞ?」


「最後まで見届けさせてくれ。

 それに、あまり早く帰ると色々あるからな」


(色々? 魔王ともなれば、俺には考えが及ばないようなことでもあるんだろうな)


 俺達は最後の仕事となるはずの場所へと、飛んで行った。

 先ほどと同じように、ヴィーヴルがブレスで穴を開け、俺が穴へ水を満たして池とする。


 こうして、家を大きく囲う様に防衛施設が作られた。


 軍隊が攻めてきても、一度に大勢で突破することが出来ないだろうから、対処できるだろう。

 大砲を打ち込まれたとしても、壁と家までは距離があるから届かないと思う。


 そのような事が無く、無駄な施設となるのが一番なのだが……


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