第117話 防衛施設の建設(4)
「そう言えば、さっき『ちょっとしたサービス』って言っていたけど、何なんだ?」
「うむ、こうじゃ」
ルシフェルがそう言うと、突然、風が起こり木材が宙に浮いていた。
そして、壁に寄り掛かる感じで木材が並べられて置かれた。
ただ、並べられて置かれた木材の量は、今までそこにあった数とは比べ物にならない数が置かれていた。
「これは?」
「この壁を作る時に伐った木を、木材にした分を集めたのだ。
後は、ノアが此処から家まで運べば良いだろう。
家まで運ぶことも出来たが、今は置く場所が無いと申しておっただろうしな」
「ちょっとしたサービスどころじゃなく、本当に助かったよ。
ルシフェル、ありがとう」
此処から少しずつ木材をドノバンの所へ持って行って、色々と作って貰おう。
瞬間移動を使えば、それほど苦労することなく運べるだろうしな。
後は、穴の中に水を入れればいいだろう。
「じゃあ、壁の端へ行って、川が近くにないか探そう」
「その前にノアよ、川があったとして水を入れてしまえば、あふれてしまうのではないか?」
「あ、そうだな……考えていなかった」
「ノアは何処か抜けておるのじゃ」
ヴィーヴルに笑われてしまった。
川の水を入れるのは良いアイデアだと思ったのだが、入れるばかりで出すところが無いといけないよな。
「やはり、水魔法で穴の中を満たすしかなかろう。
時々、ノアが見回り、水を追加すれば干上がることもあるまい」
ルシフェルが橋の下まで水を満たした。
「これで良いだろう」
そう思っていたが、水嵩がどんどんと低くなっていき、途中で水面の低下が止まった。
「む? これはどうしたことだ?」
「多分、周りの土が水を吸い込んだんじゃないかな? 壁は下まで伸びているから吸い込まないけど、あちら側は土のままだからな」
「ならば、減った分を足せば問題なかろう」
そう言って、ルシフェルは再び水魔法で穴の中を水で満たした。
今度は水面の高さはそのまま保たれている。
「これで良かろう」
「そうだな、ルシフェル、ありがとう。
こんなに早く終わるとは思っても居なかったよ」
「なんの、我が此処に来たことが原因だからな。
礼には及ばんよ」
「それでも、これで、此処の防御力が上がったのは間違いないから、礼を言わせてくれ」
「分かったのだ、礼を受け取ろう」
「そして、ヴィーヴルもありがとう。
ヴィーヴルのお陰で、本当にあっという間にこんな立派な壁が出来た」
「改まって何なのじゃ。
そんなこと言っても、何も出てこんのじゃ」
「何事も無いのが一番だが、用心するに越したことは無いからな。
これがあれば、今までより安心して暮らしていけるだろう」
「そうなのじゃ。
これで、畑を動物たちに荒らされる心配が無くなるのじゃ。
その為にも必要だったのじゃ。
妾が心を込めて育てた作物が荒らされないようにする為には、必要なことだったのじゃ」
ん? ヴィーヴルは照れているのか? 照れる必要なんてないのにな。
「そういう事にしておくよ。
とにかく、ありがとうな」
「だから、妾自身のためにやった事だと言っておるのじゃ」
「はいはい、それで、ヴィーヴルにもう一つ頼まれて欲しいのだが、良いだろうか?」
「何なのじゃ?」
「上から壁全体と壁と家の位置関係が知りたいから、俺を空へ連れて行ってくれないか?」
「あぁ、それならお安い御用なのじゃ」
「我も一緒に行って見てみたいのだが、良いかの?」
「あぁ、一緒に見てみようぜ。
俺達が作った壁だしな。
とは言っても、殆どはヴィーヴルが作ったものだけどな。
ファーティはどうする?」
『主よ、ご遠慮させていただきたいと思います』
「分かったよ。
じゃあ、ちょっと行ってくるから、此処で待っていてくれ」
『御意』




