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第109話 歓迎パーティ(2)

 ベルゼバブの言った『利用する』という言葉が気になったので、反論した。


「一応、協力しているつもりだけどな」


「何が違うんですか~? 協力も利用のうちじゃないですか~?」


「衣食住を共にしているからな。

 利用だとこちらにばかり得があるようにならないか?」


「互いに得を得られるのも、利用のうちですよ~だ。

 きちんと見返りを渡せば良いじゃないですか~。

 それでも、まお~さまは魔物をりよ~するのは嫌だとばかり……」


「他の者が『何故、魔物に物を渡す必要があるのか?』と反対するのでな。

 それらの者を押し切れぬのなら、連れてこんほうが良いと思うのでな」


「まお~さまが独断で押し切れば、何時までも反対できないではないですか~」


「表面上は協力と言いながら、裏では奴隷のようになるといつも申しているではないか」


「そんなもの、きちんと取り締まればい~んですよ~。

 大体、そうなっても、魔族には利益しかないからい~じゃないですか~」


「そんなのは、我の求める理想とは異なる。

 前王の時代と変わらぬではないか?」


「それもい~じゃないですか~、大体、まお~さまはいつも、いつも、いっつも『我は前王とは違う』『前王とは違う世界を目指す』って……

 魔族は、前のまお~さまと本質は一緒なんですよ? ふぉろ~する私のことも少しは考えてくださいよ~。

 今回のことだって、どれだけ私がくろ~したと思っているんですか~?」


 そう言い残して、ベルゼバブはテーブルの上に突っ伏して寝てしまった。

 その状態からも、「大体、まお~さまは……」とか「私のくろ~なんて……」と、夢の中で色々とルシフェルに対する小言を言っているようだった。


「ベルゼバブも苦労しているようだな?」


「あぁ、彼女には苦労を掛ける。

 前王時代とは突然、方針転換したからな」


「偶には飲ませて、溜まっているものを吐き出させてやらないと、爆発するかもしれないぞ」


「あぁ、そうするよ。

 今、彼女を失うわけには行かないからな」


「惚気か? それなら他所でやって欲しいのだが。

 独身の俺にはきついものがあるからな」


「そんなものではない。

 彼女は我の右腕として、欠かすことのできない存在だからな」


 どう聞いても惚気のような気もするが……


「はいはい、ご馳走様。

 まぁ、今日はルシフェル達が主役だ。

 主役が楽しいのなら、このパーティは成功だ」


「あぁ、酒も料理も美味いしな」


「でも、本当に良かったのか?」


「何がだろうか?」


「ルシフェルが此処に留まることがさ。

 魔王は魔王として城に君臨していないといけないんじゃないと思ってさ」


「仕事さえこなせば、誰も文句は言うまい。

 城にいれば、広い居室があるかもしれんが、我はどうも広い居室は性に合わん。

 それに、ここには美味い酒と酒に合う料理がある。

 城にいれば、言えば豪華な料理が出てくるかもしれん。

 だが、豪華な料理は美味いとは限らんのだ」


「家には、立派な小さい料理長がいるからな」


 そう言って、アイリスの方を見た。


「ほう、あのドワーフの女か」


「あぁ、だが、料理長は子供の方だぞ」


 多分、ルシフェルの言っていた『ドワーフの女』はイルデの方だと思ったので、訂正しておく。


「あの、少女がこの料理を作ったのか?」


「全てではないがな。

 前はイルデが作っていたが、どうもアイリスには料理への適性があるらしく、最近は料理のレシピを習いながらアイリスが主体になって作っていってるよ」


「そうか……今後も我らもこれらの料理を食べても良いかな?」


「別に構わんが、ルシフェル達は食べなくても大丈夫じゃなかったか?」


「平気なのだが、酒を嗜む時につまむものがあると、さらに美味しく酒を飲むことができるのでな」


「酒のつまみが欲しいという訳か。

 じゃあ、俺とドノバンとヴィーヴルが、ほぼ毎日、晩酌をしているから、ルシフェルも晩酌仲間として参加するか?」


「ありがたい、是非とも参加させてもらうとする」


「ベルゼバブはどうする?」


「後で聞いておくが、5日に1回程度で参加させよう」


「毎日、これだと流石に鬱陶しいか?」


 寝ているベルゼバブを見る。

 今はもう、大人しくテーブルに突っ伏して寝ている。


「いや、次の日に、こっちが申し訳なくなるくらいに恐縮してしまうのでな。

 毎日、そんな状態だと、仕事が全く進まなくなってしまう」


「分かった。

 おーい、ドノバン、新しい飲み仲間が増えたぞ」


 ドノバンがこちらへと来た。


「新しい飲み仲間って、魔王様のことなのか? まったく、ノアと会ってからは驚くことばかりじゃわい」


「妾も同感じゃ」


「おいおい、俺が全ての根源みたいに言うなよ。

 元はと言えば、ヴィーヴルが突然、俺の目の前に現れたからじゃないか?」


「そうだったかの?」


「忘れたとは言わせないぞ。

 俺が水浴びをしている所へ、突然、ヴィーヴルが現れたんだろ」


「妾も、水浴びがしたかっただけなのじゃ。

 ノアが居なければ、何ともなかったのじゃ」


 その後も、俺とヴィーヴルの罪の擦り付け合いでパーティの幕は下りた。

 罪とは言ったが、俺は罪とは全く思っていない。


 ヴィーヴルがあそこにあの時、現れなかったら、ヴィーヴルから加護を貰うことなんてなかったし、今、此処に居る者たちと出会うことも無かったかも知れない。

 たった一つの出会いから、それが縁となって繋がり広がっていく。

 今後、これからのまだ見ぬ出会いに期待しつつ、俺は土で作られたベッドで横になった。


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