第106話 魔王(+その他)の移住?(2)
「なぁ、ヴィーヴル、口を挟むようで悪いけど、約束のモノってどういう事だ? エルフが居るように見えるんだが?」
「正真正銘、エルフなのじゃ。
ルシフェルが何人か連れてきてやるぞと言ったのじゃ」
「ヴィーヴルが畑仕事をしていると言ったのでな。
エルフが居れば、畑仕事に役立つだろうと思ってな」
「あの時の内緒話はこれだったのか」
「そうなのじゃ」
「と言う事は、このエルフ達も此処に住むのか?」
「そうなるな」
4人のエルフが居て、その内2人ずつ大人と子供の様だ。
「住む所は用意していないぞ」
「此処には森があろう。
エルフは森の民ぞ。
森さえあれば、どうとでもなるはずである」
「そうなのか?」
「はい、我々には森があれば大丈夫です」
「それでも、すぐに家を建てられるわけじゃないだろ? 木材を作るには、すぐには出来ないって聞いたぞ」
「家に使うような板ならば、1日もあればすぐに作れますよ。
今日、明日は雨も降らないようなので、すぐに家を作るのに必要な数は用意できるでしょう」
エルフって凄いな。
『森の民』って呼ばれるだけはある。
これだけのエルフも来るってことは、パーティの料理が足りないな。
それ以前に、エルフが食べられる料理はあったかな? 肉は食べないと聞いたことがある。
「ところで、そちらにゴブリンが居るようなのですが?」
まぁ、普通にゴブリンと言えば敵対関係だからな。
「ルシフェル、伝えてなかったのか? 此処にはゴブリンも居るって」
「すっかり忘れておった、済まないな」
「このゴブリン達には、畑仕事を手伝って貰っているんだ」
「申し訳ありませんが、例え魔王様の命令であっても、ゴブリンと一緒に作業を行うわけには参りません」
「ふむ、それは何故だ?」
「エルフとしての矜持があります。
それに、ゴブリンと共に作業をしていたとなれば、我ら家族は二度とエルフの里へは帰れなくなります」
「と言う事だが、ヴィーヴル、ノア、どうする?」
「妾はノアに任せるのじゃ」
エルフの畑作業に対する知識は欲しい。
俺の知らないことも沢山、知っているだろう。
ただ、その為にアンとドゥを此処から追放するのは間違っていると思う。
アンとドゥはもう家族同然だ。
答えは決まった。
「分かった。
エルフの知識は欲しかったが、その為にゴブリン達が居られなくと言うのなら、俺にはそんな知識はいらない。
少なくともここに居るものは皆、家族同然だ。
種族は違うだろうが、そんなのは関係ない。
そちらの矜持の為に、こちらの家族を犠牲にする事は、何があっても絶対にしない」
「成程、ならば、我は余計な提案をしたようだな」
「いや、ヴィーヴルの力になると思っての事だから、気にしないでくれ」
「では、どうするか……」
「魔王様、このようにしては如何でしょうか?」
ベルゼバブが何か思いついたようだ。
「ふむ、申してみよ」
「はい、エルフの家族には、此処とはある程度離れた森の中で暮らしてもらいましょう。
そこと此処の丁度中間地点あたりへ畑を作って、そこへはゴブリンは立ち入り禁止としましょう。
そうすれば、エルフとゴブリンは接点を持ちませんので、エルフの矜持も守られましょう。
また、こちらからヴィーヴル様やノア様が向かえば、エルフの知識も得られましょう」
「ふむ、どうじゃ? ノア、それにサリオンよ」
「こちらとしては問題ないよ」
「我々としても、問題ありません」
「よし、では、サリオン達は森へ入り、己の拠点を作成せよ。
しかる後に、畑を作成し、両位置への我々の案内を命ずる」
「御意」
「ヴィーヴルよ、これで良いか」
「ノアも納得したようだし、妾も問題ないのじゃ」
エルフ達は、早速とばかりに森の中へと消えて行った。




