第105話 魔王(+その他)の移住?(1)
3日後、魔王が再びやって来た。
何時頃、こちらに来るのか聞いていなかったのは失敗だった。
朝から歓迎パーティの準備は始めたので、既に終わっている。
もう、いつ来ても準備万端だ。
来るなら来い! ってやつだな。
そろそろ昼になろうか? って位に魔王達はやって来た。
魔王本人と前も居た従者2人の他に、何人かの人影が見える。
家を建てるための人手か? 魔法ですぐに作るとは言っていたが、その為の人員なのだろう。
その割には小さい子供もいるように見えるな。
「本日より少しばかりこの地を借りるぞ」
「前に来た時に聞けなかったのだけど、こちらや街へ攻めこむ足掛かりにするわけじゃないよな?」
「その気は毛頭ない。
それに、ヴィーヴルも居るし、足掛かりとするには、この地は人間の街からは離れすぎておるしな」
「その言質が取れるのならば、歓迎できるよ。
よろしく頼む」
ルシフェルと握手を交わす。
「ところで、今回は随分と大所帯で来たようだが、家を建てるためか?」
「それは、我一人でどうとでもなる。
こやつらは、ヴィーヴルとの約束なのだよ」
「そうなのじゃ。
まずは、妾からルシフェルへの約束の物を渡すのじゃ」
そう言って、ヴィーヴルはルシフェルに2つの四角い箱みたいなものを渡した。
「これをそれぞれの場所に置くと、魔法により、その場所の声を聞いたり、その場所へ声を届けたりできるのじゃ」
何か便利そうなものを作ったようだ。
「こちら側をルシフェルが持つのじゃ。
それでじゃ、ここを押すと、魔法が発動するようになっておるのじゃ。
そして、もう一度押すと、魔法の発動が停止するのじゃ。
一応、きちんと動くか試してみるがよいのじゃ」
「うむ、では、マスティマ。
こちらを持って、我の声が届かぬところまで飛んでいくのだ」
「仰せのままに」
マスティマが、ヴィーヴルからルシフェルへ渡した片割れを持って、何処へと飛んで行った。
少し間を空けて、ルシフェルがヴィーヴルに言われたところを押しながら話し始めた。
「マスティマよ、聞こえるか?」
「はい、魔王様、聞こえております」
「うむ、そちらの声も聞こえておる。
これで、御前会議の件は問題あるまい。
では、マスティマに命ずる。
それを持ち帰り、玉座にある人形内へと設置せよ」
「はい、魔王様、仰せのままに」
ルシフェルは、もう一度、言われたところを押していた。
「マスティマよ、聞こえるか?」
あちらからの返答はなかった。
「うむ、問題なく動いているようだな」
あれ? と言う事は、マスティマはもう来ないのか。
歓迎パーティの頭数が1人分減ってしまったな。
でも、ルシフェルがこっちに住む事になった時に、あまり良い顔をしていなかったから、パーティに出ても居づらかったかも知れない。
「ヴィーヴル、感謝するぞ」
「良いのじゃ。
これで、貸し借りなしなのじゃ」
「あぁ、分かっておる。
と、これは約束のモノだ。
好きに使ってよいぞ」
そう言って、ルシフェルは後ろに控えていたエルフの方へ顔を向けた。




