第10話 庭を造ろう
昨日、家の中にぶちまけた水は、まだ乾いていなかった。
すぐに乾くと思っていたのに、考えが甘かったようだ。
(家の中はとりあえず、家の裏をどうにかするか……)
家の裏側へ回り込んだ。
それほど大きくなく、雑草が生い茂っていた場所があった。
畑にするには小さすぎるその場所は、日当たりが良さそうで昼寝をすると気持ちが良さそうだった。
(畑は別に家のそばになくてもいいか。
薬草の群生地もあることだし、それほど食料に困ることはないだろう。
それに、川の近くに作った方が水やりにも都合が良いだろう)
何もすることがない時は、ここでのんびりできるような場所にしてしまおう。
家の中でのんびりするだけじゃなく、お日様の下に身体を晒さないと心身ともに良くないだろう。
でも、あんまり『のんびり、のんびり』言っていたら、冒険者を引退して隠居するみたいだな。
そんな歳じゃないけど、冒険者として限りが見えたことでそんな気になっているのかもしれない。
(とりあえずは、この雑草をどうにかしないとだな)
鎌は持ってきているが、そんなちまちまと刈る気はしない。
屈んで草刈りをしていたら、腰が痛くなってしまうだろう。
剣を抜いて、一気に草の根本より少し上の部分へ振り抜く。
「おぉ、思っていたよりきれいに刈れたな」
多少の長短はあるが、雑草を一気に刈れた。
「この調子でいけば、すぐに終わるだろう」
俺はその後に何度も剣を振るい、雑草を刈っていった。
ちょっと前なら、こんなことしたら実際の戦闘が始まった時には剣が使い物にならなくなるので、絶対にやらなかっただろう。
でも、今は『都合の良い道具』でしかない。
この付近に魔物の気配はないし、そうなると無用の長物でしかない。
でも、草を刈るものとして考えた場合には、一気にある程度の量を刈ることができる。
鎌を振るうよりも多く刈れるし、何より使い慣れている。
(さすがに、刈り終わったら研いではおくか……)
暫くして、全体的に刈り終わった。
多少の凸凹はあるし、芝生としてみた場合には丈が長い。
(細かくは、暇になった時にでもやれば良いだろう)
刈り込んだ雑草を箒で掃いて一か所に集めた。
(椅子を作るにも木材が無いけど、その辺の木を切って材料にできないか?)
板のように平らなものがないと、座り心地は最悪のものとなるだろう。
まぁ、焦って考える必要はない。
いつまでかは分からないが、この家とは長い付き合いになるはずなのだから。
(そろそろ、家の中は乾いたかな?)
表側へと戻って家の中の様子を伺う。
暖炉のそばは乾いているようだが、ちょっと離れた所はまだ濡れているように見える。
(今日も野宿か? なんで家の目の前で2日連続で野宿しないといけないんだ?
どうせなら、さっき作った裏庭でキャンプするか。
下が草だから多少は柔らかいだろうし……)
2日目のキャンプ地は裏庭だった。
草が下にあったので、結構快適に寝られた。
でも、明日にはさすがに家で寝たいと思う。
未だに新居で夜を過ごしていないのだから……




