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第1話 パーティから脱退した

「今日、受注した分はこれで最後だな。あとはギルドに報告して解散しよう」


 パーティ『烈火の剣』のリーダシュラウドがそう告げる。


「了解。じゃあ、一休みして帰るとしますか」


 魔法使いのセトが返答する。


「明日は休みだったか?」


 斥候(スカウト)のルークが誰ともなく問うと、シュラウドが短く「あぁ」とだけ答えた。


「久々に、武器屋でも覗いてみるか…」


 俺も誰に言うでもなくつぶやく。


「あ、ノア。悪いんだけど、今日の夜、ちょっといいか?」


 シュラウドの問いかけに、俺が答える。


「うん? まぁ、構わないが、今じゃダメなのか?」

「ちょっと落ち着いてからがいいな」

「分かった。じゃあ、いつもの酒場で先に()ってる」

「あぁ、済まないが、よろしく頼む」


 暫くしてセトが再び、


「じゃあ、そろそろ帰るとしようよ。日が暮れちゃうよ」


 誰も返事をしないが、全員立ち上がって雑談をしながら街へと歩み始めた。


**********


「待たせたな」

「いや、飲んでいたから問題ないよ」


 グラスを掲げながら俺が答えると、シュラウドは隣の席に座りながらエールを注文していた。

 バーテンがエールを持ってきたところで、


「じゃあ、まずは、今日のクエスト完了に乾杯だ」

「あぁ、お疲れさん」


 俺とシュラウドはグラスを合わせた。

 シュラウドは一気にエールを空けた。


「で、話ってなんだ?」

「あぁ、そのことだがな…おい、もう一杯エールをくれ」


 空になったグラスをバーテンに渡しながら、バーテンに告げた。

 バーテンはエールを注ぎに行くために、その場を離れた。


「ノア、このパーティは更に上を目指すことにした。今後はより上位ランクのクエストを受注していくけど、おまえには厳しいと思うのだが、どうだろう?」


 俺以外のメンバーは多分、もっと上位ランクのクエストでも問題なくこなしていくだろう。

 対して俺は、今のレベルでついていくのでやっとの状態だ。


「どうだろう?というのは、抜けてほしいということか?」


 シュラウドは無言だが、否定しない。

 上位ランクのクエストでは、今の俺では足手まといにしかならないだろう。

 それは俺自身が危険だというだけでなく、パーティとしても危険な状態になる可能性もある。

 どちらにとっても良いことなど何もない。

 暫くの間無言が続いたが、俺は一つ気になっていることを聞いてみた。


「代わりはもう、見つかっているのか?」

「あぁ、候補として2人ほどいるが、明日、どちらにするか決定する」

「そうか……」


 前々から抜けさせる準備は進んでいたのか……

 間抜けな俺は、何も知らずにクエストを一緒になってやっていたんだな。

 いや、抜ける話をされた状態でクエストに行った時に、ポカをやらかす可能性があるから、シュラウドなりの優しさなのか?

 抜けさせるのなら、今日は丁度良いタイミングということか。


「他のメンバーに話は通してあるんだよな?」

「あぁ、全員に納得してもらった」


 これ以上はみっともないだけだし、俺にこのパーティでの居場所は既にないことは確かだ。


「分かった。長いこと世話になったな」

「あぁ、すまないな」

「いや、いいよ。俺の実力不足のせいだ。みんなにもよろしく伝えてくれ」

「分かった。こちらからの話というのは以上だ。この後、どうする?」

「俺は……とりあえず、部屋に帰って今後の身の振り方を考えるよ」

「分かった、俺はもう少し飲んでから帰るよ」

「あぁ、じゃあな」

「あぁ」


 俺は勘定を置いて席を立って、バーを後にした。


「これからどうするか…」


 夜はまだ始まったばかりである。


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