プロローグ
初めての投稿になります。
拙い所もありますが、よろしくお願いします。
……ゾクゾクッ……
「ひぃっ」
「何か今、世間一般でいうところの悪寒(?)が走ったような気が……」
今日は変な日だ、朝一で黒猫を見かけたかと思えば、カラスにバックを突つかれ、挙句の果てに、財布まで落とし、踏んだり蹴ったりである。
思い返せば、昨日の夢も最悪だった。
夢の前半は、殺人人形に殺される夢で、後半パートは死神から死刑宣告を受け、鎌を肩に担いだ骸骨めいた装いの死神から追い回されるという豪華二本立てだ。
確証は無いが、どうやら嫌な事が起きる前触れに思えてならない。
(まさか、死ぬのかな? ……えっわたし死ぬの?? ……まさかね……まだ女子高生ですよ。
――よしっ、今日は運気が悪そうだし。大人しくしていよう。幸い元旦だから、家に引きこもっていれば、大したことにはならないだろう)
江南 乃留
それが私の名前だ。見た目はそう悪くない方だと自負している。美人ではないが、愛嬌はあって好かれる人には熱狂的に支持されることもある。
そして、何を隠そう、今をトキメク女子高生なのだ。
話を戻すが、今日は恐らく厄日ってやつだとおもう。
なので、わたしは対策を考えた。その名も自宅籠城作戦である。
私は日本という国の、お世辞にも都会とは程遠い、長崎という場所に住んでいる。
もしも、不吉な予感が当たり、死の危険に遭遇するとしても、変な人に絡まれなければいいのだ。
ただでさえ、ここ長崎の人は優しい人が多く、さらに田舎なので、そんなに人通りも多くはない。
そんな状況に加えて、さらに他人との遭遇率を著しく減らす、いや、ほぼゼロにできる籠城作戦だ。
これなら、変な輩の凶刃に倒れる心配もない。
家族の中にも私を殺すような、何処かメンタルを拗らせてしまっているようなメンバーはいない。
学校での健康診断も問題なかったから、病死の線も消えたし、刺される・撃たれるがなければ逃げ切れるはずである。
(完璧、いやいや、完璧過ぎる作戦だ。自分で自分の才能が怖いわ〜)
そんなことを考えながら、好きな漫画を読んだり、ゲームをしたり、テレビを見たりしながら自堕落な時間をすごした。そして、結構な時間が経ち、外の様子を見ると、日も暮れて、夜になっていた。
(良しっ!何とか回避出来たんじゃない? ここまできて、他界とかないでしよ。もはや殺される心配もないし。どうやら、杞憂に終わったようね)
私は勝利を確信し、心の中でガッツポーズをとる。そして、部屋の掛時計へと目をやれば、もう夜の9時をまわっていた。
そんな時だ、台所から声が聞こえる。
「みんな〜、ぜんざいができたわよ〜」
母の声だ。
うちは5人兄弟で、弟達は食べ盛りなので、こと食べ物に関しては仁義なき闘いが日常となっている。
(元旦にぜんざい。くぅ〜〜! 最高!不安のストレスでお腹空いたし、餅2個は死守したい)
「お母さん、いや、お母様。ぜひお餅は2個頂きたい。慈悲深い母上様、どうかこの憐れな私に大きめの餅2個を!お慈悲を!」
「はぁ、全く身体だけ大きくなって、しょうがない子ね。大きいのはその2個しか無いんだから、みんなには内緒にしときなさいよ」
「は〜い。了解であります。テレビ見ながら食べるから、部屋で食べてくるね」
遥は自室に戻り、やっと元旦らしく過ごせると安堵した。落ちついて部屋を見渡せば、お菓子の屑は所狭しと散乱し、母さんの無慈悲な抜き打ち検査でもあろうものなら、殺されかねない惨状だ。
せっかく生き延びる可能性が上がったのに、母にトドメを刺されては馬鹿馬鹿しい。遥は何も言わずそっと部屋の鍵をかけたのであった。
そして、流石にもう大丈夫だろうと安堵した。部屋にも邪魔者は侵入出来ない。それに、今日は残すところあと2時間程度だ。
今にして思えばこの油断がいけなかった。
お腹が空いていた私は、物凄い速さで餅を食べ、想像に易く、喉に餅を詰まらせる。
(完っ全に油断したわ。こんなとこに意外な伏兵が。せっかく籠城までしたのに……。助けを呼ぼうにも、餅が詰まって声がでないじゃない。ヤバイ、意識が朦朧としてきた。……む……無念なり)
そこで私の意識は途切れた。その後どうなったか、気にはなったが、内容が内容なだけに、哀しくて考えたくもなかった。
しかしながら、一応、家族は悲しんでくれたはずだ。それでも、死因が餅による窒息死である。女子高生の死因としてはお洒落さの欠片もない。恐らく葬式もしめやかに行われるだろうが、クラスメートの心情を考えると複雑だ。
そんなことを思っていたが、おそらく時間的には一瞬だったのだろう。
目を開けると案の定、日本ではない場所にいた。
(はぁ〜、普通こういうのって車に轢かれただとか、通り魔にやられたとかじゃない? 何で餅? ありえんの? いやいや、ないわぁ〜、餅だけはないわぁ〜……)
恥ずかしさと哀しみで、しばらく悶えた後、私は、再度意識を失ったのだった。
頑張って続けていきたいと思います。
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