ショートストーリー 『とうちゃん喜ぶは』 『ありふれたデブ』
とうちゃんも喜ぶわ!
黒崎の孫は四才になるが言葉数が少なく
両親が心配していた。
この子チャンと物言うようになるやろか?
保育園にもやっていなくて婆ちゃんの黒崎が育てていた。
両親は共稼ぎで昼間は自宅にいない。
だから余計もの数の少ない無口な我が子が
ちゃんと話せるようになるか
心配だった。
ところがある日黒崎があげた小遣いをしみじみ見詰めて
「とうちゃんもよろこぶとおもうわ」
と呟いたのだ。
黒崎はその言葉を聞いて
「これだけのことが言えたら大丈夫や」
夫と大笑いした。
ありふれたデブ
北村の妻はふっくらと太っている。
でも醜いわけじゃない。
適当に太っていて見苦しいことはない。
でも妻は太ってきた、太ってきたと充分気にして嘆いていた。
北村の子供の入学式に出席しての帰り道、
「ずっーと他の子供の親を見ていたけれど、おまえ程度に太った人は結構いるよ。あんまり気にしない方がいいぞ」
と妻に言った。
妻はちょっとムカッとした顔をして小さくつぶやいた
別にそんな慰めいらないってゆーか、よけい傷つくわよ?
慰めるつもりが仇となった瞬間でした