招かれざる闖入者
その夜、アイリスは寝室でルキウスとアキレスに物語を読み聴かせている。
「さぁ今日はここまでにしましょ。続きはまた明日ね 今日は二人とも遊び疲れたでしょう ぐっすりおやすみなさい 愛してるわ」
「ぼくもあいしてるかあさま、おやすみなさい」
「俺も愛してる、お母様おやすみなさい」
アイリスは二人の額にキスし部屋を出ると、ロナルドの書斎に向かった。
書斎ではロナルドが書類にペンを走らせていた。
「アイリス、ルキウスとアキレスはもう寝たのか?」
「ええ、あなたはまだ寝ないの?」
「いや、私もこの書類を書いたらもう寝るよ」
アイリスはロナルドをみつめながら聞く
「あなた、前々から気になってることがあるの」
「なんだ?……アキレスの魔力のことなら確かに不思議だが命に問題はなかっ……」
「違うの…アキレスのことじゃなくルキウスのことよ」
思いの外、緊迫した口調で言われ、思わず書類から目を外しアイリスを見る。
「ルキウスの何が気になるんだ?」
「上手く言えないのだけれど何だか五歳の子供とは思えなくて…」
「ははっ確かにルキウスは五歳にしては優秀だな。まだ年端もいかない年なのに魔術の才能がある。さすが我が子というべきか」
「そうではなく、雰囲気が大人びていて五歳の子供とは思えなくて、昼間もアキレスはあたしに飛び付いてくれたけどルキウスはなんだかよそよそしかった」
そう言うアイリスの表情はひどく寂しそうに見えた。
「アイリス……君の考えすぎだとおもうが… あの年頃は私たち大人が思ってる以上に成長しやすいということだろう」
ロナルドは何とか慰めようとしたがアイリスはあまり納得していないようだった。
ロナルドがかける言葉を探している時
「アキレス・レイモンドは居るか?」
「「!?」」
突然ドアの反対側から男の声がし、驚く二人。
誰だ、何故、どうやって入ったのか、多くの疑問が頭を駆け巡ったが、いち早くロナルドが杖を持ち、ドアを開けた。
「何者だっ どうやって入った!」
そこには見たこともない悪魔のような黒い鎧のスーツを纏った男が立っており、目の部分が赤く光っていた。
明らかに敵と認識したロナルドは内心、外見に驚いたが、即座に杖を握る手を強め男に向けて、詠唱を行った。
だがそれよりも早く鎧スーツの男はロナルドに右手を向けた。するとロナルドとアイリスの足下が流砂となり、身動きが取れなくなってしまった。
「そんなっ!詠唱も杖もなしでどうやって魔術を!?」
アイリスが驚きを口にした
ロナルドも一瞬驚いたが、気に留めずファイアボールを放った。
「くらえ!」
至近距離に加え直撃だった、たとえ鎧でもそれなりのダメージがあると思ったが、ダメージを与えるどころか鎧にすら傷一つ付いていなかった。
「そんなバカな!、いくら鎧を着ているといっても無傷なわけ……」
動揺するロナルドの意を介することなく鎧スーツの男は続けた
「アキレス・レイモンドはどこに?」
「くっアキレスをどうするつもりだ?」
「君達に話すつもりはない、素直に教えてくれれば手間が省けて助かる、アキレス・レイモンドの居場所を教えるんだ」
圧倒的優位に立ちながらも冷淡に問いかける鎧スーツの男に言い知れない不気味さを感じつつもロナウドとアイリスは臆することなく鎧スーツの男を見据えた
「断る 何をするつもりかは知らないが貴様に教えることなどない。貴様を憲兵に突きだす」
「それは不可能だ。君らにはここでじっとしていてもらおう」
二人とも流砂からの脱出を試みようとするがズルズルと引きずり込まれていく。
「やめておいた方がいい、この魔術は動けば動くほど沈み、やがて全身が飲み込まれる 用事が終われば解除しよう もう一度聞く アキレスレイモンドは何処だ」
「よせ!子供達に手をだすな!!」
「お願いよ!!二人には何もしないで!!」
「仕方ない 一つ一つ探すしかないようだ」
二人の必死の嘆願も鎧スーツの男は気にすることはなく、部屋を後にした。