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終末世界の開拓記  作者: なづきち
第三章:荒野の抑圧された風
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神子の性だから仕方ないのである

 結局ライト付きヘルメットは首に負担が掛かりそうなので作っておらず、それぞれの腰にランタンを括り付けての移動となった。

 いずれは暗視ゴーグルとか目薬とか作りたいなぁ。明かりがあると目立ってモンスターからの奇襲を受けやすいからね……。まだウルの索敵能力でカバー出来る範囲ではあるけれども。


「しかしまた地中か……」


 ウルが顔をしかめて呟く。まぁダンジョンなんて地中とか廃墟とか山の中とか、何だかんだで崩れやすそうな所が多いんですよ。

 ……ウルが全力を出さざるを得ないようなモンスターが居たら逃げるかな。わたしだって何度も埋まりかけたくない。


「じゃあここは主にわたしとレグルスで頑張る?」

「お? おぉ、任せてくれ!」


 唐突に振られたレグルスは一瞬戸惑うものの快諾してくれた。修業になると言うのもあるのだろうけれども、バトルジャンキーの気があるのかもしれない。

 ……いっそわたしもレグルスに任せてしまって……いやいや、ちゃんと戦闘経験を積まないといつまで経ってもウルの足を引っ張ってしまうことになるので楽するのはダメだね。


「ウルは非常時を除いて見学……にしようと思ったけど、やっぱ頑張って手加減を覚えようか」

「う、ぬ……ぜ、善処する……」


 何時もウルに助けられている身で言うには贅沢なのだが、力の制御は覚えてもらった方がいいだろうからねぇ。

 ひょっとしたらモノを壊すのも減るかもしれないし?

 いやぁ、まさか鉄斧までぶっ壊してしまうとは思わなかったんですよ……ハハハ。

 直せる範囲だからよかったけれども、またもウルが涙目になってしまってね……一体いつになったらウルでも扱える道具を作れるのかなぁ。


「それじゃ、レグルスが先頭でウルが殿。あ、レグルスは索敵もやってみてね。ウルは強敵以外は何も言わなくていいよ」

「うむ」

「了解だぜ!」


 わたし? わたしは素材探しに目を光らせ……ゴホン。レグルスのフォローです。



「ふぅ……地中ってだけでホントにモンスター沸きまくるんだな。まだ時間的には日が出てるんだろ?」


 モンスターの襲撃回数が二桁を越えた辺りでレグルスも疲れてきたのか、額の汗を拭いながら聞いてくる。

 今回のレパートリーは先程のロングワームに加えて、同じように地中から現れたり穴を開ける罠を仕掛けてくるロックモール、固い甲殻を持つハードアント、行動阻害効果のある粘液を飛ばしてくるキャタピラーなどなどだ。お馴染み?のゴブリンも少しだけど居た。

 戦闘でSPストマックポイントが減りやすいから腹時計は正確にはならないけど、わたしの時間感覚が正しければまだダンジョンに入って一時間と経ってないはず。


「そうだねぇ。でもこれまで居た場所が平和なだけなんだよ。これから先は日中の屋外でもモンスターの出現に気を付けなきゃいけなくなるからね」

「うへぇ……」


 おっかない、とでも言うようにレグルスは首を竦めた。

 ダンジョンの中でも落ち着いているのは良い所であるけれども、ちょっと危機感が足りないかもしれない。

 わたしはスッと弓を構え、レグルスの方へと向ける。


「レグルス、索敵ちょっと甘いよ」

「えっ」


 矢を放ち、狙い違わずレグルスの顔――のすぐ横を通って、壁面を這いゆっくりとレグルスに牙を向けようとしたソイルリザードの頭を撃ち抜く。


「うおっ!?」

「あと上にも居るね」


 今度は天井に向けて矢を放ち、悲鳴と共にもう一匹のソイルリザードが落ちて来た。


「すまねぇリオン、助かった。色が同じで気付かなかったぜ……」


 ソイルリザードはその名の通り全身が土色をしているトカゲで、確かに洞窟タイプのダンジョンなら紛れてしまいわかりにくくなるだろう。明かりも行き届かないので尚更だ。

 それでもいくつか探すポイントはある。今回はランタンの光がわずかにだけどウロコで反射したことで気付けた。

 他のパターンであれば動きはもちろん音だったり臭いだったり、足跡やら水跡やら、場合によっては魔力やら。

 まぁわたしもゲーム時代の経験――当時は臭いはほぼなかった――でしかないので、あまりレグルスに偉そうなことは言えないのだけれども。

 それでも経験の少ないレグルスからすれば貴重な意見なのだろう、先程からずっとわたしの説明に対して「なるほど!」と頷いている。

 ……索敵と言えば、ここにプロフェッショナルが居ましたね。


「ウルはどうやってモンスターに気付いてるの?」

「む? 我の場合は『そこに何か居る』と言う感覚がするのでな」


 おぉう、よくわからない回答が来た……プレイヤーは持ってなかったけど索敵スキルとかあったりするのかな……? それともただの野性の勘かしら……。



 小休止を挟んでから再び奥へと進む。

 結構枝分かれが多く、行き止まりも多いのが面倒だ。迷路になってるよりは遥かにマシだけどさ。

 いやもう、うねうね道分かれ道のオンパレードに高低差も加わって三次元で脳内マップ作るのはほんとしんどかったですわ……。目印の付け方もちょっと間違えると途端に混乱してくるしね……。帰還石を使ったり上掘りしたりすればいいので外に出れなくなることはほぼないんだけども。

 なお『ほぼ』と付けたのはダンジョン内で死ぬことも珍しくなかったからである。ぐぬぬ。

 とりあえず今回も目印として壁をきっちり四角にくり抜きながら進んでいる。


「この道も何もなかったね……っと」


 行き止まりは特に放置する理由もなければ道丸ごと石で塞ぐ。これをすることによってわたしたちが再侵入してしまう可能性を無くすと共に、モンスターの背後からの襲撃を少し減らす効果がある。

 あいつらは何時沸くかわからないからね。既に通った道だから何も居ないと安心ゆだんしていると、ヌッと沸いて後ろからグワッとかあるから……。


「ダンジョン探索っていつもこんなに大変なのか?」

「ん? これくらいならまだ楽な方だよ」


 レグルスが「マジか……」って顔してるけど、マジなんです。

 迷路じゃないし、罠や隠し扉などのギミックがあるわけでもない。水中でもなければすぐ傍に溶岩が流れているわけでもないからね。


「……神子って大変なんだな……」

「あはは。でもこれらを乗り越えた先に素材があるかと思うと楽しくなってくるからね」


 なんて、わたしが素直に答えたらレグルスどころかウルまで。


 『何を言っているんだ……?』


 とでも言いたげな、珍妙な物を見つけたような反応をしてきた。……あれ?


「え? だって素材だよ? 場合によっては新しいアイテムが作れるんだよ?」

「……スマン、オレはまだそこまでの境地に至ってねぇんだ……」

「……そのような精神を持ち合わせているからこそ、リオンは神子に選ばれたのかもしれぬな……」


 レグルスは渋い顔つきで、ウルはいっそ生温かく見守る目付きで見て来る。


「つーかリオンさ、核の浄化のためにもダンジョンに行かねば、みたいなことを前に言ってなかったか?」

「それはそれ、これはこれ、だよ。何にせよ、わたしだけじゃなく創造神様も喜ぶ一石二鳥だよね?」

「……お、おう。そうか、そうだな……」


 うんうん、レグルスも納得してくれたようで何より。

 って、ちょっとウルさん? 何レグルスに対して「諦めよ」とか言ってるの?

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