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終末世界の開拓記  作者: なづきち
第三章:荒野の抑圧された風

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大河を越えよう

二章が陰湿だったので三章はカラッとしていきます。……多分。

 少しの休憩兼研究期間を経て、わたしたちはまた別の旅を開始した。

 次の目的地は北。大河を越えた先にある、風神の領域と言われている草原だ。

 そこにひょっとしたら封印されてしまった神様の手掛かりが、運が良ければ封印そのものが見つかるかもしれないので、調査に向かうことにしたのである。


 ウルが一緒なのはいつものこととして、小さいフィンは連れて行くわけにもいかずグロッソ村でお留守番だ。また、まだ村に馴染んでないのでフリッカも残ることになった。慣れない拠点に二人だけ、と言うのも大変だろうからね。

 だから……と言うわけでもないのだけれども、今回ついて来たのは。


「うおおおお、川だ! でっけぇなぁ!」


 レグルスである。

 リーゼも来たそうにしてたけど、今回はフリッカ達のフォローのため残ってくれることになった。……今度何かお礼しなきゃ。

 しかしあの二人、気付いたら仲良くなってたのよね……真面目タイプ同士気でも合うのかしらん?


「すげぇ、すげぇ! 水平線が見える程でっけぇ川だったんだな!」


 彼は無邪気に川べりではしゃいでいるが、出発の日にリーゼとライザさんに「ヤンチャしないように見張っててくださいね」とお願いされている――これは彼の信用がないと言うよりはただの愛情だろう――ので、わたしとしてはもうちょっと落ち着いて欲しい気はする。いやまぁ、はしゃぐ気持ちもわからないでもないけど。

 なにせこの大河、彼の言う通りに非常に大きい川だったのだ。先に騒がれてなければわたしが騒いでいたかもしれない。自分より慌てている人を見ると逆に冷静になるやつ?


「うーん……予想より遥かに大きい……舟で行けるかなぁ」


 額に手を当て目を凝らして見るが……うん、対岸が見えない。霧っぽいもののせいかもしれないけれど。

 水平線って確か(あくまで地球サイズだと)五キロくらい先だったよね……つまり当然それよりも川幅があると言うことで。舟ではなく船が必要なパターンだとすると厄介である。わたしがまだ作れないのだから。

 わたしが今回作ったのは小さな手漕ぎ式の舟だ。なお、クアラ村の漁船を参考にしている。せめて魔石を動力にしたモーターボートにしたかったけどスキルレベルが足りなくてね……仕組みがわからないからスキルに頼らない自作も出来やしない。


「まぁ行ってみるしかなかろう」

「そうだね……」


 ここでウダウダしていても仕方ない。案外近くにあるかもしれないしね。


「じゃあ、命綱としてロープ結ぼうか」

「うむ」

「おうっ」


 大河のど真ん中で舟が転覆したり、モンスターに壊されたりしてはぐれでもしたら大惨事だ。水中呼吸アイテム? まだ作成出来ないよ……。

 一応レグルスにも帰還石・改は持たせているけれども、気絶するとアイテムが使えなくなってしまう。こうして皆をロープで繋いでおけば、わたしかレグルスのどちらかの意識があれば帰還出来ると言う寸法だ。

 ……ロープが切れたり二人とも意識を失ったらとかは考えないものとする。最悪を想像すると何も行動出来なくなってしまうからねぇ。そもそもそうなる前に即使用と取り決めてあるので大丈夫、だと思いたい。

 しっかりとロープが縛られていることを確認してから、わたしとレグルスは舟へと乗り込む。


「ウル、お願い」

「任せよ」


 ウルが舟を押し、川に完全に浮かんだ所でサッと乗り込んで来る。そしてそのまま櫂で漕ぎ出した。

 舟の漕ぎ方に関してはクアラ村で練習してきたので問題はない。そのパワーで見る見る川中の方へと進んで行く。

 最初のうちは「櫂を壊しそうだ……」とおっかなびっくりであったし実際に一度壊したものの、わたしがすぐに再作成出来るので遠慮がなくなったけれども余計な力も抜けたのか、以降は今の所壊していない。


「空は快晴、変な影もなし」

「水中も特に何も見えないぜ。普通の魚は泳いでいるけどな」


 風を受けながらわたしは弓を取り出し頭上を、レグルスは銛を手に水面を見張る。なお、弓と銛はアルネス村の御神木の枝(衰弱してない部分)を使用して作った物だ。ほんの少しだけど聖属性ボーナスがある。

 本来なら一番警戒能力が高いウルを自由にさせておくべきだと思ったけれども……わたしに櫂を漕ぎ続ける力はないし、レグルスはさすがにわたしよりは力はあるけどめちゃくちゃ不器用だったので仕方なくこうなってしまった。


「こんなご時世でもなければ釣りでも楽しみたい所なんだけどねぇ」


 水面近くを泳ぐ魚を見つめながらわたしはぼやく。釣りスキルレベルもなかなか上げれてないんだよね。

 昼間だから早々敵影は現れないとは思うし、この川は結構透明度が高く中が見えやすいから奇襲を受けることもなさそうとは言え、創造神の加護の厚い初期地点を離れるのだから油断は大敵である。これから先は昼間ですらモンスターが現れる可能性も考慮しておかなければならない。


「銛で突くか?」

「……落ちたら困るから、今回は我慢だね」


 レグルスが提案してくれたけど、うっかり足を滑らせてしまったらロープで繋がれてるのもあって全員ドボンするかもしれないからね……。クアラ村で少しだけ着衣水泳も練習したけれどすっごくしんどいから、進んでやりたいとは全く思えない。

 ずっと警戒をしてても精神が擦り切れてしまいそうなので、適度に雑談をしつつ舟は進む。


 漕ぎ始めて一時間くらい経っただろうか。ウルの手は未だ止まらず安定しており、どれだけ腕力と体力があるんだと感心と感謝をしていた頃。


「リオン、ウルの姐さん。あれ、対岸じゃないか?」

「ん?」


 レグルスの嬉しそうな声に釣られてマジマジと彼方を見ていたら、確かにうっすらと陸地らしきものが目に入った。

 わたしはこっそり安堵の息を吐く。表には出さないようにしていたけれども、こんな大きな川の真っただ中にポツンと浮かんでいる状態とか内心不安で一杯だったからね……。


「ウル、もうひと踏ん張りお願いできる?」

「まだまだ平気なので心配するな」


 さすがウルさん頼りになります。


 対岸はどんな所なんだろうなとアレコレ話しを膨らませて気がそぞろになっていたのが悪かったのだろうか。舟は進み残り数百メートルになろうかと言う所で、進行方向に背を向けて漕いでいた――つまりわたしたちの背後を見ていたウルがやっとそれ・・に気付いた。


「……リオン、レグルス、漕ぐスピードを最速にするぞ。落ちないようにしっかりと掴まっているがよい」

「「えっ?」」


 了解の返事をする間もなく舟足がグンと速くなり体が大きく揺れ、慌てて舟縁を掴む。


「ちょ、ちょっと一体何が――」

ぬしたちの後ろから何が大きなモノが来ておる! 追い付かれる前に上陸する!」

「「!?」」


 わたしとレグルスが弾かれたように振りむくと……水面に大きな大きな魚?の影が見えていた。何時の間に!?

 舟も猛スピードで進んでいるが、水中において魚?の泳ぐ速さに敵うはずもない。少しずつ少しずつ差が縮まっていく。

 後、ほんの数メートル――


「ちっ! 二人とも、跳ぶぞ!」

「ひえっ?」

「おわわわっ!」


 ウルは漕ぐ手を止め、うむを言わさずわたしとレグルスを両脇に抱えて後方――陸地に向けて大きく跳躍する。

 その刹那、水面から顔を出した魚――アリゲーターが巨大な口を開き、バギィ!!っと舟を噛み砕いた。か、間一髪……!

 跳躍もギリギリ陸地に届き、わたしたちは久方振りの地面を踏むことになる。


「レグルス、銛を寄越せ!」

「お、おうっ」


 アリゲーターは獲物が食えなかったことに苛立ち再度迫ってくるが、舟の上でさえなければウルの敵ではない。


「ふんっ!」


 ――ドッパン!!


 ウルの銛の投擲で頭を弾けさせ、その命を散らすのであった。


「ふべっ」

「うぎゃっ」

「……あっ」


 ……そしてロープで繋がれたままのわたしとレグルスは、その反動で引きずられるのであった。

 まぁ、ワニに齧られるよりはよっぽどマシよね……。

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