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終末世界の開拓記  作者: なづきち
章間二

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蜂蜜を求めて

「あ、フリッカ。ずっと聞こうと思ってた話なんだけども」

「何でしょう?」


 わたしが非常に必要としているモノ。

 ゴタゴタが終わったら聞こう聞こうと思ってたやつ。それは。


「サイレントキラーの巣から蜜ってどうやって採るの?」


 そう……甘味だ。

 何せまだ砂糖が採れない。そのうちサトウキビやカエデを探してみたいと思ってはいるものの、あるかないかすらもわからない物にあまり時間も掛けられない。

 果物は採れるから全く甘味が摂取出来ないと言うわけでもないんだけども……それでもわたしは……とても、とても蜂蜜たっぷりなパンケーキが食べたいのである……! あると知ってしまったからには尚更だ!


「? リオン様でもご存じないことがあるのですね」

「いやいや、知らないことはいっぱいあるよ?」


 フリッカが首を傾げるが『ゲーム時代にサイレントキラーの巣なんてなかったから』何て言えるわけもなく。まぁ知らないことだらけなのは事実であるけれども。


「一番簡単なのはウォーターボールで巣を包んで溺死させることです。継続的に採取したいならおすすめしませんが」

「な、なるほど」


 全滅させるとか思ったよりバイオレンスな方法だった。

 でも確かにあいつらは水が駄目だったよなぁ。


「二番目は少々危険ですが、サイレントキラーは魔力が大きい方を優先して刺そうとする性質がありますので、一人が風魔法で防御しつつ囮になって、その間にもう一人が火系魔法の煙で燻してから蜜を掻き出すことです」

「へー、サイレントキラーにそんな性質があったんだ」


 わたしは基本的にソロだったし、プレイヤーは他のフィールドモブに比べれば魔力(MP)も高いからね……そんな仕様があったとしても気付かなくても仕方ないよね……。

 しかしどっちも魔法か。これだとわたし一人での採取は厳しそうだ。どうしたものかなぁと悩んでいたら。


「何を悩んでいるのですか。貴女が欲しいと言うなら手伝いますよ」


 至極真面目な顔でそう提案をされた。


「あ、ありがとう」

「どういたしまして」


 ふふ、と笑顔を向けられて、少しだけ恥ずかしくなって目を逸らしてしまう。

 この前の告白以来たまに意識することがあってねぇ……これも計算の内なのかしら。多分そこまで考えていないと思うけど。

 誤魔化すようにコホンと一息吐いて。


「養蜂が出来れば一番便利なんだけども、さすがに危険だよねぇ」


 花畑はいくらでも作れるし、巣箱……はまぁ試行錯誤は必要だろうけど、取り外しやすい木枠にハニカム構造の枠を作成すればいけそう、な気がする。

 けれどもサイレントキラーの性質だけは如何ともしがたい。近付くだけで刺されるのだから、うっかり大群に襲われでもしたら怖すぎる。


「私にその養蜂とやらの知識はありませんが……サイレントキラーではなく普通の蜜蜂で試してみては?」

「あっ」


 不思議そうにフリッカに突っ込まれてやっとその可能性に思い至る。

 あ、あかん、ゲーム時代に脳が支配されている……! ほんと早く切り替えないとダメだ……!



 とりあえず養蜂に関してはただの思い付きなので、何時か余裕が出来たら試すとして(……余裕出来るのかなぁ?)今日はサイレントキラーの巣から蜜を採取してみることにした。

 メンバーは四人全員だ。フリッカの手は当然必要だし、非常時のためにウルが居てくれると安心するし、そしてフィンを一人残しておくのも不安で。

 アルネス村近辺にある創造神像へ飛び、勿論村には近付かずに逆方向へ移動して巣を探す。

 急ぎの用もないし天気は良いし、気分はピクニック……なのだが。


「……お姉ちゃん……」

「うぅ……」


 呆れたような声を出すフィンの視線の先には、木の根に躓いて転ぶフリッカが居た。……うん、この問題があったね。

 フィンは全く危なげないと言うのに、姉妹にしてこの差は一体何なんだ。フリッカの実父が超ドジ体質だったとか……?

 手を繋いで歩こうかとも思ったけどこの調子だと道連れにされそうな予感がする。わたしにウル程の運動神経があれば良かったんだけどもねぇ。


「そう言えば風のマフラーは?」

「……あれは私の持ち物ではありません」


 ……あぁ、首輪隠しのためにそれっぽい装備を渡されたと言うことね。

 そのうちお詫びの品を贈ろうと思ってたし、似たような効果のアクセサリでも作ろうかな。わたしの魔導スキルレベル……まぁ足りるだろう。

 あ、皆の分の服も新調した方がいいかな。裁縫スキルレベルも上がってるし、これから夏になるから薄手の服は必須になるし。

 冷房効果を付けられるとなお良いんだけどなぁ。どの道何時かは砂漠やら火山やらに行くだろうし、早めに作れるようになっておくに越したことは――


「リオン、前を――」

「あだっ?」


 考え事をしながら歩いていたせいでウルの警告虚しく木の枝に頭をぶつけてしまった。

 ……うぬぅ、フィンの視線が生温くて居た堪れない……!



「む、飛んでいるな。皆気を付けるがよい」


 ウルが言いながらペシっと宙を叩くと、足元にサイレントキラーがポトリと落ちる。

 一回二回刺された所で死にはしないのだけれどもフィンには辛いだろう。ここからは気を引き締めないと。

 わたしはアイテムボックスから木で作ったラケットのような物を取り出した。ウル程腕が良いわけじゃないからね……軽くて表面積の大きいこれが退治しやすいのよ。


 間もなく最初の巣を見つけた。さすがにあの時ほど大きくなく手の平より少し大きいくらいだ。……あのビッグサイズに遭遇したら即逃げですよ!

 まずは無難に水魔法方式でやってみることに。


「じゃあフリッカ、お願い」

「はい。ウォーターボール」


 放たれたその水球は勢いよく飛ばずにふよふよと漂っていく。フリッカ曰くそういう風に制御しているらしい。応用出来るのか……見習わないと。

 巣に辿り着いた水球はその場に留まり、一分、二分と過ぎて、形を崩す。


「……はぁっ、はぁっ……もう大丈夫だと思います……」


 やたら疲れているのは維持するのに地味に魔力を使用するかららしい。これはこれで難点がありそうだね。

 フリッカに休んでもらいながらわたしは周囲の警戒をし、ウルに巣を確認してもらう。


「刺して来なさそうだの。リオンも確認してくれ」

「ほーい」


 そうして一つ目の【サイレントキラーの巣】が手に入った。

 よし、この調子で次を探そう。



「この中で一番魔力が高いのは誰なんだろう?」


 二つ目の巣を見つけたので今度は二番目の方法を試してみようと思ったのだけど……誰が囮をするか決めていないことに気付いた。

 わたしはステータスでMPバーが表示されるから厳密な数値は見れないものの大体はわかるけど、他の人はそもそもステータスが見れないからねぇ。

 その内に使用時にMPを消費するアイテムで計測してみた方がいいのかな。


「リオンだろう?」

「リオン様では?」

「すくなくともワタシじゃないよ」


 ……おや?

 フィンはともかく、魔法職エルフであるフリッカよりわたしの方が高いとな?


「普段のリオン様の作業風景を見るに、確実に私の保有量より多くの魔力を消費していますよ」


 なるほど?

 ちなみに、SPはともかくLPもMPも最大値はスキルレベルの合計値が増えるごとに増えていく。ガンガンスキルレベルを上げるようにしてるから初期よりはかなり増えているとは思ってたけど……。


「囮をやるならリオンになるだろうな」

「うぐ……そうだね」


 ちょっと怖いけど仕方ない。巣に近付く役はウルが最適かな。

 フリッカにエアシールドの魔法を張ってもらい、ウルに火炎石を持たせて二人でゆっくりと進む。


「ひえええええ」


 ブォンブォンとサイレントキラーが周囲を飛び回る。風の膜があるので刺されはしないのだけれども、目の前を大量に飛び回られると怖いものは怖い。

 ウルの方にも何匹か飛んでるようだけど、持ち前の視力と手の速さでペシペシと叩き落としている。ウルもそれなりにMPがあるのか、単純に巣が近いからなのかどっちだろう。

 慌てることなくウルは火炎石で足元を燃やし、発生した煙で燻していく。巣に残っていたサイレントキラーは逃げ出したり煙で気絶したのかポタポタ落ちてきたりしているのが見える。


「……この方法は手間が掛かるのぅ」


 細かいことが苦手なウルが蜜を掻き出しながらぼやく。むしろ壊してしまっているのか変な音が聞こえ……ま、まぁうん、仕方ないよネ。

 分離器とかあればいいんだろうけど当然ないし、あったとしても天然の巣だと使えないだろう。やっぱ養蜂を視野に入れ……いや蜂蜜にこだわる必要もないか。

 二度目も無事に蜜は採れたけれども(アイテム名は【蜂蜜】になっていた。サイレントキラー蜜とかにはならないのね)、次からは水魔法方式にしようとわたしとウルの意見が一致した。

 えぇと……ごめんフリッカ、頑張ってね。


 そして六つ目の巣を手に入れた所で、フリッカの精神力とフィンの体力の問題で帰還することにした。



「「おおおおおーっ」」

「……確かに美味しそうですね。リオン様が食べたくなる気持ちもわかります」


 翌日のお昼ご飯にたっぷり蜂蜜のパンケーキを作り上げると、皆目を輝かせてくれた。フフフ、その反応が気持ち良い……!

 今回はそれだけじゃなく、生地の方も重曹(アルネス村の人が知っていた)を投入したのでこれまでのよりふっくらしているぞ!

 そして蜂蜜も混ぜ込んで弱火で蒸すように焦らずじっくり、こだわって焼き上げた一品である!


「うまいっ!」

「あまーい!」


 ウルとフィンの反応はとてもわかりやすく、フリッカは無言だけれどさっきから手が止まらないようなのでお気に召してくれたようだ。

 自分でも一口食べてみる。……うん、美味しい。

 (主にフリッカが)大変な一日であったけれど、これを食べられるなら、そして皆の笑顔が見られたなら、きっとこれで良かったのだろう。




 後日、フリッカにお詫びと労いがてらに風のアクセサリを作ろうとして、リング、イヤリング、ネックレス、ブレスレット、どの形態が良いか尋ねたら「指輪が欲しいです」と即答された。

 ……あぁ、うん……そう言う……エルフにもその文化あるのね……まぁいいか。

普通の蜂蜜より美味しいと言う今後使わなさそうな設定。

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