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終末世界の開拓記  作者: なづきち
第七章:廃地の穢された闇黒

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報告会

「ぶははははははは! ハディスが! 小さく!!」


 拠点うちに帰ってきて早々、色々と説明いいわけをする前に、小さくなった闇神を目にした風神が大笑いをする。……ちょっといくらなんでも無情では……? いきなり怒られるよりはマシ……だけども。


「いやぁ、僕よりも小さくなっちゃって! 可愛いねぇ!! ぶははは――ぐほぁっ!?」

「笑いすぎだメルキュリス!」


 涙を浮かべるくらい笑い転げていた風神は光神アイティに拳骨を振るわれて強制的に黙らされた。……まぁ、アイティも同じく小さくなっちゃった身だからね……他(にん)事ではないからね……。(多分)わたしが犯人ではないとはいえ、思わず背筋がヒュッとなる。


「あー……そこの風神バカは放っておくとして。まずはお礼を言おう。闇神を解放してくれてありがとう、リオン」

「……えっと、その、地神様。解放とはちょっと違うんですが……」

「あらあら? 疲れているだろうけど説明をお願いねぇ?」

「はい、それはもちろんです」


 当然、水神に言われなくても説明するつもりではあった。まず休みたいという気持ちはあるけども、今回はぶっ倒れるほどではないしね。

 気絶したままの闇神を今度は火神が背負い、ついでに目を回したままの風神はアイティが襟元を掴んで引きずり(自業自得である。この場に放置されないだけ温情がある)、わたしたちは神様ズハウスへと移動した。



 闇神をベッドに寝かせた後、軽く食事をしながら、わたしは闇神がそもそも封神石に封印されておらずあの島で瘴気塗れになりながらも存在していたこと、瘴気だけではなく闇色の蛇のような何かに取り憑かれていて言動がおかしくなっていたこと、戦った末になんとか浄化したことを順番に話していく。


「蛇か……考えるまでもなくアレ(・・)の手によるものだろうね」

「島中が瘴気塗れになっていたのも、ディーくんがそんな状態になっていたのを隠蔽するためだった可能性も出てきたわねぇ」

「……プロメーティアは瘴気に滅法弱いからな……」

「弱点を突くのは常道であるがな!」


 神様ズが口々に感想を述べていく。風神も何かを言いたそうにしていたけど、アイティの鋭い視線と水神の笑ってない笑顔に封殺されていたのはさておき。

 一柱ひとりを除いて皆、頭が痛そうだ。それもそうだろう。他の神様たちと違って封印されていなかったにも関わらず今の今まで発見されていなかった挙句、敵に利用されていたのだ。正確には神子ルーエは知っていたのだけれども、報告がされない状態になっていた。一応おまけで、神子ルーエも同じようにおかしくされていたかもしれない、とも告げておいた。

 地神がガリガリと頭を掻く。


「……神子失格と思っていたが……ハディスの顔をしたヤツに唆されていたのだとしたら仕方がない、か……?」

「リッちゃんはどう思うのかしらぁ?」

「……何についてです?」

「もちろんその神子についてよぉ」


 ですよね。

 とはいえ、これも聞かれる前から答えは決まっている。


「どのみち最低あと一回は会うと思うので、その時の態度で決めようかと」


 わたしは神子ルーエにも浄化を施した。その結果、あの過剰なまでの攻撃的な性格がナリを潜めていたら、つまり操られていた、洗脳されていたのだと判明したら……あまり怒れない。わたしだって、神様に命令されたら従ってしまうかもしれないから。


「リオンは逆らっていたではないか」

「……だ、だって、明らかにおかしいこと言ってたしさぁ……」


 ボソっとウルに突っ込まれる。さすがにあの状態の神様に従うヒトなんて居ないのでは……? 神子ルーエがそうだった、って? 正常に判断出来ない状態にされてたのだとしたらねぇ……怒りが全くないわけでもないけども、全力で浄化した(なぐった)せいか結構スッキリしているのだ。


「私としては、リオン様が殺されかけた恨みがまだ残っているのですが……」

「オレはもうどうでもいいや。リオンの判断に任せる」

「あたしもリオンさん次第かな。許すとしたらすごくお人好しとは思っちゃうけど」


 お人好しかなぁ……お人好しなんだろうな。フリッカみたいに怒るのがきっと普通だ。

 なおこの場にセレネは居ない。彼女にどうやって神子ルーエのことを伝えるべきか悩ましい。神子ルーエが外的要因で異常だったのだとしても、それで彼女が受けてきた仕打ちが帳消しになるわけでも、心の傷が癒えるわけでもないのだから。

 まぁ実際に会って確かめるまでどう転ぶかわからないので、神子ルーエについての話は一旦ここまでとなった。

 肝心の闇神の現状について……覚悟を決めた、と見せかけて恐る恐る切り出す。


「えっと……闇神様が小さくなった原因に、わたしも噛んでいるかもしれなくてですね……」

「……ほぅ? どういうことか、詳しく説明してもらおうか?」


 アイティからピリッとした神気が放たれた。うぅ、胃が痛い。でも言わないのも、誤魔化すのも駄目な気がするので正直に話していく。


「瘴気塗れかつ取り憑かれていたという話はしたよね? だから、浄化のためにありったけの聖属性と光属性アイテムを使用して――」


 キレてたので正確には覚えていないけれど、何をどれだけ使ったのか覚えている範囲で指折り数えながら述べていく。五つ目辺りまでは無反応だったけれども、それ以降は数が増えていくたびにアイティの眉根が寄り、口の端が引き攣り、最終的には顔を覆いだした。アイティだけじゃなく地神は額を押さえ、水神は困ったように微笑み、火神は天を仰いでいた。そして風神は声を上げて笑おうとする直前にアイティに頭を叩かれていた。……やっぱりやりすぎでしたかねぇ……。

 はぁと大きな大きな溜息を吐いてから、アイティは顔から手をどけてわたしを見る。……怒ってはいなさそうだ、と脳裏を過ったのを察したかのようにアイティは苦笑を零す。


「怒る理由はないさ。少々、いやかなりやりすぎ感は否めないが……リオンはハディスに敵意があったわけではないのだろう?」

「そりゃあね。闇神様に取り憑いていたヤツには『壊れてしまえ!』ってめちゃくちゃ思ってたけど」

「…………………………恐らくリオンのせいではない。だからこれ以上貴女を追及する気はないし、気に病まないでくれ。むしろ浄化してくれたことに感謝の念しかない」


 その長い間が気にならないでもないけど、アイティは嘘も冗談も言わないのでこの件はひとまずお咎めなしが確定した。闇神自身の判決次第ではひっくり返るけども。


「力が失われていても生きているのだから、そのうちに回復するさね」

「そうねぇ、その点はアイちゃんと大して変わらないわね」

「感謝だけでなく、よくぞ神を相手に折れずに立ち向かったと褒めるべきだな!」

「ハディスはそんなに弱ってたのかな? よく勝てたね!」


 やっと発言権が得られた風神の問いにわたしはどのように戦ったかも話していく。石の押し出し辺りで笑われ、スコップで足元を掘って落としたところでもっと笑われた。今度は遮られなかったのは、きっと他の神様ズも同じような感想だったのだろう。いやアイティは恥ずかしそうにしているな。


「たかが落とされたくらいで呆けるなど……これだから引きこもるなと口を酸っぱくして忠告しておいたのに……!」

「……と、取り憑かれていたんだし、闇神様のせいとは限らないからね……? そのおかげで助かったのもあるし……」


 長い間苦しめられて、やっと解放されて目が覚めたらお説教、なんてのは不憫なのでフォローを入れておく。

 取り憑いていた闇蛇は、からだを使い慣れていなかったんだろうな、と今になって思う。元々の自分の体じゃないし、ずっと地下に籠もっていたみたいだし。力任せで技術が全然なかったから、戦闘経験も少なかったんじゃないかな……。経験があったとしても力の差が大きすぎて相手にならなかったのならば成長にはならない。

 闇蛇が力に溺れず真面目に(?)研鑽していたらわたしでは勝てなかった。でもそこで研鑽しない愚者であるのは、あの言動からも察することが出来る。あ、思い出すだけでイライラが――


「リオン様」

「――え? フリッカ、何?」

「大変お疲れのようですし、今日はもうお休みになられた方がいいと思います」


 何を突然と思ったけど、フリッカの提案に地神も追従する。


「そうさね。その他の細かい報告はまた今度でいいから休みな」


 口調が妙に硬いような……と疑問に思う間もなく、疲れがドッと押し寄せてくる。今回は比較的マシだと思ってたけど疲労に対する自覚がなかっただけか。

 はぁ……しばらくゆっくり休もう。やたらメンタルが削られたし、一回死にかけたんだ。出来れば一月くらい休みたい。



 そう思ったのに――事態は、許してくれなかった。

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