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終末世界の開拓記  作者: なづきち
第二章:森奥の餓えた叫び

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ヨメ騒動

「……嫁入りって、誰が」

「私です」

「誰の所に」

神子様あなたの所に」


 いやいやいやいやちょーーーーーっと待った! お願いだから待って!?


「ご、ごめん、質問いいかな」

「何でしょうか?」


 わたしはぐるぐる目でこめかみに指を当てながら、パニックになりかけた思考を宥めさせるために深呼吸する。

 ちくしょう、このエルフ少女は平然としてやがるぜ……それともわたしがさっきから過剰反応し過ぎなのかしらん……。


「もし、神子が現れなかったらどうなっていたの?」

「期限が決められていましたので、その時までにいらっしゃらなければ役目を若い子に引き継いで、私は村の誰かの所に嫁いでいたでしょう」


 延々と独り身を強要されるわけじゃないのね。ちょっとホッとした。


「……神子が既に妻子持ちの人だったり、ものすっごくヨボヨボのお爺さんだったりした時は?」

「どのような相手でもと言われていたので、その場合も嫁いでいたでしょう」


 えぇー……まじかー。

 前者は……まぁ日本じゃないんだし、一夫一妻制とも限らないとして……後者も……マジで……?

 何と言うか……嫌な臭いがしてきたぞ……? この子自身にじゃなくて、そういう風に育ててきた長老たちとやらの思惑が、ね。

 わたしが唸っていると、フリッカさんは自分の言葉で納得したのか、ポンと手と叩く。


「なるほど、では相手が女性と言うだけで嫁がないという理由にはなりませんね」

「ちょっと待とうか!?」


 「?」って首を傾げてくるけど、そこ何で疑問に思うの!?


「そもそもわたしの意志はどうなのさ! 拒否しても押しかけてくるわけ!?」

「……そのパターンは言われてなかったですね」


 キョトンとしてないでよ!

 いや確かにこの子めっちゃ美少女だから、押されて落ちない男は居ないのかもしれないけれど……残念わたしはこれでも女ですからー! いちいち仕草が可愛いとか思っちゃうけど、そういう意味では心は揺れてないですからー!

 どうしたものかと悶えていると、大人しく傍観していたウルの疑問が横から飛んできた。


「リオンは何をさっきから狼狽えておるのだ?」

「い、いやだって、狼狽えたくもなる、よね?」


 まぁわたしがキョドりすぎなだけで、淡々と断ればいいだけの話ですよね……。

 でも、ウルが言いたかったのは全然違う観点からのことだった。


「ヨメと言うのはつがいになると言うことだろう? 子も望めない同性間では元々なれないのでは?」


 それは生物学的にと言うか、種の保存本能に従えば正しいことだ。ウルからすると『種族文化リザードとして普通のこと』なのかもしれない。

 人間からしても、伴侶を得て子どもが欲しいと言うのは至極当たり前な想いであるし、それが結婚をする第一の理由であっても何らおかしくはない。

 けれども、わたしからすれば問題であるのは、言い出した相手が同性で子どもが作れないから、ではない、と思う。


「同性でも可能だと思ってるよ。ただその場合は望むモノが他にあるってことだね」

「……む?」


 現代日本でも同性婚は一部で認められていたしねぇ。

 アステリアでは創造神がNGを出してたらダメと言う認識なんだろうけど、こんなやり取りをしてる時点で多分それは無いよなぁ。さすがに本にんには確認し辛い……。

 ともあれ、きっと、わたしが最初からずっと引っ掛かっているのは。


「フリッカさん」

「呼び捨てで構いません。貴女の方が立場は上なのですから」

「……フリッカ、きみがわたしの所に……その、嫁ぐと言うのは、わたしが神子だからだよね?」

「はい、そうです」


 ……わかってたけど即答かー。ですよねー。

 まさかのわたしに一目惚れ、とか言う展開なら少しくらい考えないでもないけど、そんなこと有り得ませんよねー。ハハ……ハ……。

 だったら、わたしの答えもこれしかない。


「そう言う話なら、わたしは断固拒否する」

「……理由をお聞きしても?」


 理由なんて、決まり切っている。

 この人は……『神子』と言う地位しか見ていないからだ。


「そんな恋も愛もない、義務的な結婚なんてごめんだよ」


 同性だとかそう言うのは抜きにしても、好意どころかよく知りもしない相手とだなんて……まるで政略結婚だ。

 まぁ政略結婚自体は否定しないよ。王様とか、偉い人はどうしたって血を繋げたいだろうしね。

 でも、わたし自身の話であれば勘弁してくれって感じ。


「わたしが好きになって、わたしを好きになってくれて、お互いが大事で、特別で……『一生一緒に生きて行きたい』と思える相手じゃなきゃ……嫌だよ」


 理想を言えばキリがないので省くけれど、両想いであることを最低限の条件にしても責められる謂われはないでしょう。

 そんなわたしの主張に「なるほど」と頷きを見せるフリッカ。納得してくれたようで良かった。

 ……と思ったのだけれども、何だか変な方向に転がって。


「では、私が貴女を、貴女が私を好きになれば、問題は無いと言うことですね」

「……うん? ……そう、だね?」

「わかりました、頑張ってみます」


 え゛っ゛。

 頑張るって……何を?

 現時点においてわたしへの好意なんてサッパリないだろうに、何でそう言う話になっちゃう……? 強いられちゃってる……?


「そうではありません。いえ、強いられていると言うのもあながち間違いではありませんが……それとは別に、貴女の説明に少々思う所がありましたので」

「間違いではないんだ……」


 エルフさん、ちょっと闇深くありません?

 ……突っ込むのはやめておこう。さすがに『頑張るな』とまでは言えないし。わたしに不利益がない程度なら、だけれども。

 ともあれ、ひとまずこの話は解決(?)したかと思えば……今度はウルが悩みだしたようだ。


「むぅ……コイだのアイだの言われてもピンと来ぬ……」

「神子様が望んでいるだけで、実際にはどちらも必須ではありませんけれどもね」

「ちょっ」


 フリッカさーん!? 何てこと言うんですかー!?


「余計わからなくなったぞ……? 結局、ぬしらにとって結婚とは一体何なのだ。するのとしないのとで何か違いがあるのか?」

「一種の誓い……契約、でしょうか。『健やかなる時も、病める時も、あなたを愛し、命ある限り、真心を尽くすことを誓います』と」

「……愛が必要なようだが?」

「……履行されていない例が割とありましたもので」


 ちょっとぉ!? エルフさんたち闇が深すぎないですか!?


「要は、権利を得ることです。夫が妻を……逆の場合も偶にありますが、好きにして良いと言うものでして。具体的には性こ――」

「それ以上言わないでえええええ!!」


 わたしのエルフ像と結婚像がガラガラと崩れていくよぉ!!

 唐突に叫び出したわたしに二人ともビクっとしていたが、わたしのアレな脳内はそれ所ではない。

 いやまぁ確かに? それ・・はいくら親しくても友人相手じゃ出来ない、伴侶……せめて恋人でなければ出来ないことだけどね?

 けどわたしが求めてるのはそれじゃないのよ! 全く興味がな……くもないけど!


「……リオンは好きにしたいのか?」

「その言い方には物申したいけど……相手がOKしてくれる範囲でならまぁ、色々と……」


 ……って、思わず答えてしまったけど、何でこんな話になってるん……?

 あれぇ?と内心首を傾げていると、ウルからある意味更にヒドイ発言が飛び出してきて。


「? もし我に何かしたいことがあるのなら好きにしても良いぞ? いや、痛いのは嫌だが」

「あー、初めては痛いって聞く……じゃなくて! その思考から離れろわたし!!」


 叫びながらしゃがみ込むわたしに、ウルが「大丈夫か……?」と心配そうに聞いてくる。

 ごめんなさいね! でも今のはちょっとだけきみも悪いと思うよ!


「ウルさんや……『好きにしても良い』とか、他の人には言ってはダメよ……? 変なことされちゃうかもしれないからね……?」

「変なこと? まぁ今の所リオン以外に言う気などないぞ」


 ……。

 この子わかってて言ってるのかしら……わかってないよね……。でもこの前の『体で払う』発言の時も知ってはいたみたいだし……どっちなんだ……。

 いやいやこれは単純に、わたしが『変なこと』をしないという信頼感から来てると思えば……つまりわたしの思考回路が悪いんですね……。

 あかん、これ以上はドツボにハマってしまいそうですわ……話をぶった切らねば……。


「……今のきみに対しては特に無いです。間に合ってます……」

「……? そうか」


 ウルは何が何やら、という顔であったが、ガクリと肩を落とすわたしにそれ以上質問を重ねようとはしてこなかった。

 何このぐだぐだ、どうしてこうなった。

どうしてこんなに闇が深くなったのか…(プロットにはないシーンでした


あと、フリッカのキャラデザを活動報告に載せておきますので、興味を持たれた方はどうぞご覧ください。

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