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終末世界の開拓記  作者: なづきち
第七章:廃地の穢された闇黒

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発生源を探して

 様子見をしていた世界樹も特に問題なく根付き、そろそろわたしが常時待機している必要もないだろうと言う地神からの言葉により、島の探索を再開することにした。

 今度は瘴気の発生源の探索だ。残念ながら?世界樹と瘴気の発生源の位置は異なっていたようで、他の場所を探さなければならない。

 古城への帰還石の使用は問題なく出来た。まだモンスターたちはセレネの影響下にあって大人しいし、暴れ出しそうな前兆もない。一体どれくらいの期間効果があるのか気にならないでもないけど、下手なことをしてモンスターに情が移るのも危険だ。ゼファーたちが例外であって基本的にモンスターたちとは分かり合えない。

 破壊神がモンスターたちを『敵対者』と定めていることも関係しているだろう。そう言う存在として生まれてしまったことを可哀相と思うべきか、そもそも感情などないのだから気にしないでおくべきか。……などと、前者が思い浮かぶ時点ですでにわたしはかなり危ないのかもしれない。肝心な時に攻撃の手が鈍ることのないようにしなければ。


「うーん……導きの杖の調子は相変わらずだな」


 今度は世界樹ではなく瘴気の発生源の位置を念頭に置いて使用しているのだけれども、示す方向はまちまちだ。逆方向とかはないので、大体の方向が合っているのだとは思うけれども、示す先に辿り着いてみれば発見されるのは小規模の瘴気発生源ばかり。根本の解決までは至らない。


「それでも段々と近付いているとは思うぞ。少しずつ嫌な気配が強くなっている」

「……そうだね。近場の小規模発生源を潰しながら大元に向かっているとでも思えば、無駄な行動ってほどでもないしね」


 ウルが嫌そうに鼻を鳴らしながら言う内容に同意する。わたしも段々と胸のムカつきが増している感じがするのだ。それに比例して少しばかり攻撃に力が入りすぎてしまっている。先ほどもモンスターをオーバーキルしてしまって魔石を壊してしまった。とてももったいない。感情を無駄に揺らされて制御を乱されないように留意しないと。


「ダンジョン核もはっきりとはわからないままですか?」

「……うーん、そうだねぇ」


 フリッカの疑問の通り、ダンジョン核の位置も特定出来ていない。けれどこれも同様に近付いている感じはする。ダンジョン核の位置イコール発生源の大元の可能性もあるな。

 ……これだけ広範囲に影響しているなんてすさまじく脅威的ではないだろうか。常時瘴気が漂っている時点でこの島は普通の状態ではないのだけれども。


「けど……このまま進むのはなぁ」

「ん? 何か問題でもあんのか?」

「……リオンさんのその嫌そうな顔、ひょっとして……?」


 レグルスはただ疑問符を浮かべるのみだったが、リーゼはわたしの様子から察したらしい。


「そう、この先は……あの神子の村があるところなんだよねぇ……」

「「「「あー……」」」」


 苦虫を何匹も噛みつぶしたように言うわたしに、全員が納得の声を上げる。

 わたしの脳内地図に間違いがなければ、このまま先に進むと間もなくあの神子の勢力圏に入るだろう。村の手前にあるとしても活動がバレそうだし、村の先にあるとしても同じだ。……さすがに村の中にはないだろう。あったら最初に訪れた時に気付いているし、いくらあの神子が戦闘ばかりで浄化がヘッポコだとしても、気付かないなんてことはありえない。

 ……ありえない、はず、なのだけれども、どうにも嫌な予感がしてならない。瘴気の発生源ってだけでも面倒なのに、更に余計な面倒ごとが起こりそうな気がして、ついつい回れ右をしたくなってくる。


「状況にもよるだろうが大きく迂回すればいいのではないか? ……向こうが突っかかってくるなら踏み潰してやるがのぅ」

「……あはは」


 ウルが物騒なことを言いながら大きな犬歯(竜歯?)を覗かせ獰猛に笑う。しかも物騒なのはウルだけでなく、フリッカもどことなく怖い笑みを浮かべ、レグルスは鼻息荒く拳をガツリと打ち合わせ、リーゼは槍の石突を地面い勢いよく突き刺していた。皆が怒ってくれるのは嬉しいし、おかげでわたしは逆に落ち着いた。

 今の体になってから怒りやすく――破壊の衝動が湧きやすくなっている。怒ること自体がダメではないけれど、自分の感情の把握に努めなければ皆も巻き添えにしかねない。それはとても困るからね。


「そう言えばリオン、魔法使えるようになったんだな。オレは全然だから羨ましいぜ」


 レグルスが打ち合わせた拳を見ながら言う。そう言えばきみもわたしと同時期に雷魔法が使えるようになってたんだよね。レグルスが普段使わない……本人曰く使えないみたいなので、わたしも存在を忘れかけている。なんかごめん。


「こう、拳を打ち合わせた時にバチッと出来るとカッコいいと思わねぇ?」

「……格好いいとは思うけど……」


 同意を求められたリーゼは困ったように笑った。わたしはレグルスの言うロマンは理解出来るけど、彼女には無理だったようだ。多分そうする意味がよくわからないんだろうね。特に意味なんかない、格好よさを追及しているだけだからね。

 ふむ……。今にして思えば、風神でも条件が揃わないと行使出来ない中、偶然であっても雷魔法を行使出来るレグルスも実は破壊側の適性があったりするのかもしれない。戦闘能力だけを見るとリーゼの方により適性がありそうなイメージはあるけど、レグルスは荒々しい野性的な動きをするのに対して、リーゼはスマートで合理的な動きをするからねぇ。この二人は似ているようで全然スタイルが異なる。同じ村で育ったのにちょっと不思議。確か母親同士が姉妹でいとこなんだっけか。父親の方の血筋が関係していたりするのかしらん。


「んー……圧電発電する仕組みをレグルスのナックルに組み込んで、拳の打ち付けをトリガーに帯電する、とか作れそうな感触はあるね」

「おっ! そいつはカッコよさげだな!」

「いやでも、下手すると自分の発生させた雷で感電しそうな……」

「……そいつはカッコワリぃな……」

「あはは……レグルス兄だとやりそうだよね……」


 わたしも無意識の雷でケガしたことあるしねぇ……。きちんと制御出来ない段階で使うと痛い目を見そうだ。絶縁体で全身タイツを作るわけにもいかないし(見た目がアレでレグルスは絶対にイヤがりそう)、面白そうだとは思ったけど今のところはやめておこう。

 これまでも属性武器や攻撃魔法アイテムは作ってきたけれど、武器に攻撃魔法の発生機構を組み込むことはしてこなかった。武器の耐久力の問題があってほぼ使い捨てになる(つまりわざわざ武器にする必要性が感じられない)からだ。でもスキルレベルの上がった今なら出来そうな気がする。気がするだけかもしれないけど、落ち着いたらチャレンジしたいところだ。

 武器の話に、意外にもフリッカが乗ってくる。


「そのような魔法の武器はよさそうですね。杖をガツンとぶつけた時に発火するとか……」

「……もしもの時の護身にはなるかもだけど……フリッカが白兵戦をやるような事態になったらまず逃げてほしいかなぁ……」

「その方式なら詠唱もないですし、油断したあの神子の後頭部にでもやれたら、と思いましたが……無理でしょうか」

「ちょ、フリッカさーん!?」

「残念だが彼奴は我らのことを敵と認識している。いくら非力に見えるフリッカとてそこまで近付くのは容易ではないであろう」

「ウルの指摘は正しいけど、指摘するところそこなの!?」


 めちゃくちゃ発想が物騒になっているよ!? それだけ怒っているんですねぇ……!

 まさかフリッカまでがこんな攻撃的な状態になってしまうなんて、この点でもあの神子許すまじ!って感じだなぁ……。


 そんなこんなで、近付きつつある決戦の気配にチリチリとしながらも、わたしたちは適度に気を緩めながら進んでいった。

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― 新着の感想 ―
[一言] >「こう、拳を打ち合わせた時にバチッと出来るとカッコいいと思わねぇ?」  自分は拳を打ち合わせてもバチッと鳴らないけど、セーターや金属のナニカに触るとバチッと言うぜ! 何回でもなっ!  ……
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