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終末世界の開拓記  作者: なづきち
第七章:廃地の穢された闇黒

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破壊神の神子との遭遇

『むしろ現時点は貴様にしか出来ん』


 わたしにしか出来ない……?

 創造の力も破壊の力も中途半端なわたしなのに? 破壊神がコンタクトを取れるのがわたしだけ、と言う意味なのかな?

 などと思っていたのだが。


『貴様がこの前行った島。そこに儂の神子が居るのであるが、そ奴がそろそろ限界のようなので島の外へ連れ出してやってほしい』

「え? ……破壊神様の、神子、をですか?」


 破壊神の神子が居るとは聞いていたけど、まさかそんな近くに居たなんてビックリだ。

 そしてその神子を連れ出してほしいと言うのもビックリだ。限界と言うのは瘴気のせいだろう。この破壊神様、実は結構有情だな?

 ……確かに、現時点で島に行き来出来るのはわたしだけであるし、そうでなくても対象が破壊神の神子となるとなかなか頼めはしないだろう。まぁ元より『破壊神の頼みごと』って時点で聞くヒトがどれだけ居ることやら。

 ただ、わたしはウルの例もあって破壊神の神子だからってすぐさま敵対することはないけれど……あちらさんはどうなのだろう?


「えぇと……大丈夫なんです? わたし、これでも創造神の神子ですけど……?」

『別にあ奴は壊すのが大好きで神子なんぞをやっているわけではない。大丈夫じゃろ。……多分」

「……多分、って……」

『何でもすると言ったであろうに、グダグダ言うでないわ! さっさと行け!』

「ぎゃあっ!?」


 詳細が聞きたかったのに、本当に時間がなかったようで、そこでいつものように蹴り飛ばされて会話終了となってしまう。

 なお、現実でもベッドから落ちていた。ウルに謝られたけど……前と同じくタイミングがピッタリなので操られていたりするのだろうか……なんて。



 破壊神の様子からしてチンタラしていられないと考え、わたしはその日の朝から早速島に向かうことにした。前回と同じくゼファーに乗って、速度優先のためにまたウルだけ一緒に乗ってもらって。出会い頭に刺されたせいで帰還石を作ることが出来なかったしね……作れたとしてもあんな村に出現したら危険だし、捜索を妨害されるどころか徹底的に攻撃されかねない。

 ゼファーのおかげで島まで飛ぶことは出来ても、残念ながら詳細が全く聞けていない。名前も姿も全くわからないけど、おそらく見れば気配でわかるとは思う。が、居場所すらわからないのは大変だ。

 なので、二手に別れて捜索することを提案した。ウルは渋ったけど、わたし自身が破壊神の力を得たことで強さが増していたので何とか納得してくれた。

 わたしはスカイウイング&ジェットブーツで、ウルはそのままゼファーに乗って空から探すことに。あの村近辺には行かないようにするけど、今更『三人目の神子に誤解されたら困る』なんて感情はない。そもそもあの神子の性格であれば、破壊神の神子の近くに村なんて構えやしないだろう。真っ先に潰しに行きそうだ。


「おや?」


 そうしてしばらく空を飛ぶと、古城が視界に入った。アステリアの住人がわざわざ城を建てるとも思えないので、十中八九ダンジョンだろう。

 瘴気が漂う枯れ森の中にポツンと佇むボロボロの城。ミスマッチのような、合っているような。


「……っと、痕跡があるな……」


 そんな場合ではないと思いつつも興味本位で城に近付いてみると、入口部分に聖水系アイテムを使ったような痕跡が残っていた。それも残り具合からしてそう時間は経っていない。

 この島で聖水を使うのはあの神子たちしか居ないだろう。と言うことは、今まさにダンジョン攻略中か……?

 くわばらくわばら、あいつらと顔を合わせて揉めている暇なんぞない。

 ……と、離れようとしたその時。


「――っ」


 眼下の、最上階の窓。

 そこから顔を出す少女に、気付いた。

 チリ、と。ウルに似た、そして最近になってわたしにも馴染むようになってきたこの感覚。間違いない。


 ――あの子が、破壊神の神子だ。


「限界って……まさか」


 苛烈な敵意を剥き出しにする神子が、ダンジョンを攻略している。そのダンジョンの最上階に、破壊神の神子。

 ……神子の目的は、ダンジョン攻略そのものではなく――

 こうしちゃいられない、何としてもあの神子より先行しなければ……!


 古城ダンジョン内は迷路になっておりトラップも満載である。城内の目的地に辿り着くことは容易ではない。

 しかし、最上階に行くだけならばすぐにでも出来る。律儀にダンジョン攻略する必要などない。

 その方法は……空から侵入することだ。

 内部がどうであろうと、壁が登れなかろうと、関係がなくなる。わたしは丁度スカイウイング&ジェットブーツを使用している。造作もない。


 ――のだが、ここで誤算が生じる。

 ただでさえ繊細な制御を必要とするスカイウイング&ジェットブーツ。

 そして……今のわたしは、創造の力と破壊の力が入り混じっていることで、バランスがおかしなことになっている。

 つまり。


 ガッシャアアアアアアアン!!


「いったああああああい! けど痛くない!!」


 バルコニーに降り立とうとして……失敗した。

 挙句に、勢いを殺すどころか逆に増してしまい、窓に突っ込んでしまった。少女が居た窓ではなく、巻き込まなかったのが唯一の幸いか。


「ぐえっ!?」


 窓をぶち破っても勢いは衰えず、ゴロゴロと転がり壁にぶつかってやっと停止する。これ、体が頑丈になってなかったら大怪我してただろうな……あぁでも今の状態のせいで制御失敗したんだったか。一長一短だなぁ。

 って、のんきに寝てる場合じゃない!

 慌てて跳ね起きて、ジャリジャリと窓の破片を落としながら部屋の中を見回すと、目的の少女は居てくれた。めちゃくちゃビックリしてるようだけどごめんなさいね!

 マヌケすぎる姿を見せてしまって恥ずかしいけど、恥ずかしがっている場合でもない! ここは相手が混乱している内に勢いで乗り切るのだ!


「初めましてお嬢さん! 創造神の神子にして破壊神の神子リオンです! 破壊神様の要請により、あなたを迎えに来ました!!」

「――っ!?」


 破壊神の神子――銀髪赤眼の少女は、わたしの言葉にビクリとその身を震わせた。

 ……こうして改めて見ると、とんでもない美少女だな。好みによる差異はあったとしても、フリッカと同じくらいか。

 その華奢な体は、破壊神の神子と言われてもにわかには信じがたい。見た目から種族は判別出来ないし、ウルの例があるので弱いとも限らないのだけども。

 しかし少女は見かけ通りに弱々しく怯えた様子を見せ……わたしを見詰め、わたしの差し出した手を見詰め、後ずさった。


「ふ、不法侵入者にそんなことを言われても、信じられるわけないでしょう!?」

「ですよねー!」

「それに創造神の神子にして破壊神の神子って何なのよ!? 確かに破壊神様の力は感じられるけど……どこかから奪ってきたんじゃないの!?」

「ですよねえー!」

「いやアンタ本当に何なのよ!?」


 少女の言い分に納得しかなかったので全力で同意したらふざけていると思われたのか怒られた。ごめんなさい。

 そして少女は……ポロポロと涙を零し始める。うええええ!? 混乱させすぎましたかねぇ!?


「何よ、何なのよ……!」

「あ、あの――」

「違うって言ってるのに! 瘴気はアタシのせいじゃないのに!」


 少女の怒りが吐き出される。


「何でアンタたち創造神の神子は信じてくれないの!? アタシは何もしてないのに!」


 嘆きが零される。



「それとも、ただ生きることすら許してくれないの!? そんなの……酷すぎる!!」


 絶望が、溢れる。



 ついにはしゃがみこみ、大声で泣き始めた。

 わたしが目の前に居るのにも構わず、ワンワンと。

 まるで……迷子の子どものように。


「――」


 ……何故、何故なのだ。

 何故、この子はこんなことになっているのだ。

 誰が……追いつめたのだ――!


 ……いや、聞くまでもない。



「ここに居るのか! 破壊神の神子(モンスター)め!!」



 怒声と共に、部屋のドアが蹴破られ。

 姿を現したのは。


 紅蓮の髪をした、創造神の神子――

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