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終末世界の開拓記  作者: なづきち
第七章:廃地の穢された闇黒

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遭遇

 島の捜索を始めて数日。

 特に大きな問題もなく、変化もなく。ある意味で順調とも言えるが、ある意味では全く進展がないとも言える。いや、これまでの道のりに『何もないと判明した』ことは進展ではあるのか。

 瘴気は漂っているがそれだけだ。発生源もなく、ヒトの生活の痕跡もない。前者はもっと瘴気が濃い場所にあるとして、後者もないのは少しばかり意外だ。それとも、もっと離れた場所に瘴気が薄く(もしくは神子が浄化をして)過ごすのに適した地域があるのだろうか。導きの杖は距離までは示してくれないからね……。


 などと思っていたところに、やっと変化が見えてきた。

 ウルが屈み込み、地面を注視する。


「む、リオン。足跡がある」

「……モンスターの足跡ではなく?」

「ここまではっきりとした流線形であれば靴の跡だと思うのだが……もしや靴を履いているモンスターも居るのかの?」

「そうだねぇ」


 わたしが靴を履くモンスターの存在を肯定すると、指摘してきたウルだけではなく全員が「えっ」と目を丸くした。


「だって、武器を装備するモンスターが居るんだよ? だったら靴を履いているモンスターが居てもおかしくないでしょ?」

「それはそう……だな?」


 ゲーム中においてだけど実際に居たのだ。特に知性のあるモンスターとなると、足を保護する重要性を知っていそうだからね。とは言え、モンスターに創造は出来ず、言い換えると修復も出来ず。大体はボロボロで、きちんとした靴を履いているモンスターは居なかった。

 ……けど、現実アステリアでは『修理が出来ないなら新品を奪えばいいじゃない』と実践して、『奪いたてホヤホヤです!』ってパターンも無いとも言えない。靴に限らず、武器も防具も。『誰から』奪うのかは言うまでもないだろう。


「ウルの言う通り、ここまでしっかりとしてるなら靴跡で合っていると思うけど、それがモンスターのものの可能性もある、ってのは頭に入れておいてほしいかな」

「……奪われた場合を考えると、怖いものがありますね」

「知性のあるモンスターは厄介度が増すからねぇ……」


 『被害者』が居ることも痛ましいけど、それ以上にモンスターの存在の方が恐ろしく、重要度が高くなる。冷たいヤツだなどと思わないでおくれ。


「ともあれ、怖がっているだけじゃ何にもならない。この足跡を追えるなら追ってみよう」


 村発見となるか、モンスター発見となるか。……これがモンスターの罠である可能性も頭の片隅に置いておいて。

 わたしたちはウルを先頭に変更して、より一層気を引き締めて進むのだった。



 小一時間ほど進んだところで、ウルが無言で手を横に広げる。停止の合図だ。

 ウルは口元に指を当て『静かに』のジェスチャーをしてから、ゆっくりと視線をあちらこちらに巡らせる。そしてある方向で止まり、小声で伝えてくる。


「戦闘音だ」


 皆にザワリと緊張が走る。

 しかし即村人発見とまでは判断出来ない。モンスター同士の争いもよくあることだからだ。瘴気で正気を失っているなら手当たり次第に攻撃するので、なおさらありうる。


「武器や防具と思しき金属音や、掛け声も聞こえるが……」


 ウルがちらりとわたしを見る。つい先ほど、知性のあるモンスターの話をしたばかりだからだろう。奴らは普通に会話だって出来るから、声がするからと言ってやはり村人だとは判断出来ない。


「先行して。ヒトだとしたらすぐに助けに入れるように。モンスターだとしたら隙を窺って飛び掛かれるように」

「……うむ。ぬしたちも極力音を立てるでないぞ」


 そう言ってウルは、本当に音もなくスルスルと先へ進んでいく。音のしない場所の見極めと、体重移動が完璧だからだろう。

 わたしも見習って、枯草や枯れ枝の落ちている位置は避けて、風で揺れている草にも引っ掛からないように……と。ただレグルスとリーゼはともかく、フリッカが心配だ。慌てて転ばないよう、落ち着いて移動するように手で伝える。フリッカは緊張で固くなりながらも頷き、歩む。

 やがて、わたしの耳にも戦闘音が届くようになった頃。


 ドオオォン!


 一際派手な音が響いた。


 グギャギャギャギャギャッ!

「なっ!? 一体何が……!?」


 モンスターの雄叫びと戸惑う声。

 どうやらモンスター対ヒトだと確定してウルが行動を開始したようだ。


「レグルス! リーゼ!」

「おう!」

「行ってきます!」


 わたしの意を汲んで、皆まで言わずとも察してウルの援護に駆け出す二人。わたしはフリッカを置いていくわけにもいかないので一緒に遅れて行くことに。

 すぐさまレグルスとリーゼの戦闘音も追加され、音が激しくなっていく。しかし、わたしがフリッカを引き連れて辿り着いた時には、ほぼ大勢は決していた。もちろんモンスターを全滅させる方向で、だ。

 倒れているモンスターは正確には数えられないけど少なくとも十匹以上、対してヒトの方は四人。内訳は人間ヒューマンが二人と獣人ビーストが二人で全員男性。誰も彼も傷を負っており、なるほどウルがすぐに加勢したわけである。

 しかし彼らはモンスターを倒してくれたと手放しで喜ぶことはなく、武器を構えたまま警戒した目でウルたちを見ている。……まぁ、こんな場所で知らないヒトを見れば警戒をするのもおかしくない。

 ウルは……うん、事前に伝えておいた通りちゃんとフードを被っている。軽く隠蔽効果を付与しているので戦闘で激しく動くことで中が見えても大丈夫、だけれども……見えないことはそれはそれで怪しいからねぇ。レグルスとリーゼもつられてピリピリしているようなので、何とかしなければ。


「皆、モンスター討伐お疲れ。貴方たちも大丈夫ですか?」


 前者はウルたちに、後者は初対面の男性たちに向けたものだ。

 ウルたちは軽く頷き、男性たちは軽く顔を見合わせてから武器を降ろした。レグルスとリーゼもフゥと息を吐き、少し気を緩める。


「ひょっとして、余計な手助けでしたか?」

「……いや、モンスターの数が多くて危ないところだった。ありがとう」


 声は固いけど素直にお礼を言ってくる辺り、ひとまずは大丈夫かな。

 わたしはふと、彼らの内の一人が血をダラダラと流していることに気付く。


「そちらの人、ポーション要ります?」

「……自前のがあるから必要ない」


 おっと、断られてしまった。見知らぬ奴からのポーションなんて怖くて使えないか。死の瀬戸際ならともかくそこまでではないし、おそらく彼らの神子が作ったであろうポーションを持っているなら尚更だ。……どれぐらい効くのかちょっと興味あるけど、さすがにまじまじと見ていることは出来ない。


「貴方たちは治療をしていてください。わたしはこれを片付けますね。あぁ、素材の所有権を寄越せとは言わないので安心してください」

「ちょ――」


 手を伸ばしわたしを止めようとするが、わたしはあえてその反応を無視する。

 ナイフを取り出し、サクッと無造作に突き入れ、即座にモンスターを魔石と利用可能素材へと変化させた。

 それを目撃した(もちろん目撃させるためにやった)男性はピタリと動きを止め、目を見開いた。絞り出すように声を出す。


「その御業……まさか、神子なのか……?」

「はい、初めまして。創造神の神子のリオンです」


 ちょっとわざとらしい言い草になってしまったけど、男性たちはそこまでは気にしていないようだ。


「その回答がすぐに出てくると言うことは、貴方たちは他の神子と一緒に行動をしていますか? わたし、創造神様より神託を授かり、浄化のお手伝いに来ました」


 正確には浄化を頼まれただけで手伝ってなんて言われてないけれど、正直に言うわけにもいかない。こう言っておいた方が、摩擦も少なくなる……はず。

 と期待を籠めたのだが、男性たちは更に戸惑うばかり。

 ……もしかしてここもバーグベルグ村みたいに偽神子が出没しているパターンだったり……? いやだとしても神子特有のスキルを見せたのだから、疑われるようなことはない、と思いたいのだけれども……。

 内心で焦りを募らせるわたしだった。

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