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終末世界の開拓記  作者: なづきち
第七章:廃地の穢された闇黒
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荒れ地を行く

「うへぇ、本当に瘴気が漂ってんのな……おっかねぇところだな」


 開口一番、レグルスがぼやく。

 帰還石を作成して拠点に飛び、フリッカ、レグルス、リーゼのいつものメンツを連れて戻ってきての第一声がこれだ。気持ちはわかる。

 なお、拠点に飛んだ時にゼファーは置いてきた。ただでさえ気難しそうな神子に、ドラゴン(モンスター)と一緒に居ることで更に警戒させてしまいそうだからね……。ゼファーもアルバも神様たちが受け入れているから勘違いしがちだけれども、普通のヒトはまず拒絶するだろう。悲しいことに。

 ……この辺りも含めた神と住人の意識のすれ違い、いずれは何とかしなきゃいけない問題なんだろうな。


「リオン様、どのような方針で探索をするのですか?」

「ん。ゼファーに乗ってた時に見えたんだけど、島の中央に向かうほど瘴気が濃いみたいなんだよね。だから神子が居るとしたら比較的瘴気の薄い外周部のどこかだと思うから、まずは外周に沿って進む予定だよ」


 ゼファーに乗ったまま神子の居る村?を探したかったけど、わたしたちから見えると言うことはあちらからも見える可能性が高いと言うことであり。隠形ハイディングの魔道具があるとしても、神子が居るなら看破する魔道具があってもおかしくはない。危険な場所柄色んなパターンの警戒をしているはずだし。ドラゴンに乗っているところを見られたら前述の通りこじれそうなのでやめておいた。


「とりあえず、見ての通り瘴気が漂っているから、体調が悪いなぁと思ったら絶対に遠慮せずに申告してね」


 何度目かの忠告。こればかりは口酸っぱく繰り返さざるを得ない。皆も瘴気の脅威はわかっていて、素直に頷いてくれるのは助かる。こういう時に『自分は大丈夫だから』とか思い始めたらもうフラグだからね……。


「それじゃあ、レグルスとリーゼが前衛で、わたし、フリッカ、ウルの順番でよろしく」

「えっと、任されるのは全然構わないんだけど……ウルさんが前に居るのが一番安全じゃないかな……?」


 わたしの言った内容にリーゼが疑問を挟む。こんな場所では一番強いウルを先頭にするべきと言う意見はわからないでもない。けど。


「ウルの場合、ちょっと後ろに居るくらいなら十分きみたちより感知は早いと思うんだ。だから後ろ……と言うよりはフリッカの側に居て守ってもらう方がいいかと」

「……あ、うん、そうだね……」

「くそぅ、悔しいけど何も言い返せねぇ……!」


 わたしの指摘にレグルスもリーゼも遠い目をした。いやぁ、現実って世知辛いよね……。

 索敵能力はどっこいどっこいなら別にわたしが前衛でもいいけど、わたしは冥界で鍛えてもらったとは言え今でも弓やら道具やら使うことが多いので、中衛が妥当だろう。まぁその辺りは臨機応変に。


「ウルさん、お手数をお掛けします」

「どうと言うことはないのである」


 守られる立場のフリッカが少し申し訳なさそうにしているけど、きみはきみで後方から固定砲台の方が適しているからね。レグルスとリーゼのような直接攻撃組とはまた違う役割が要求されるのです。


「ま、余裕のある間はウルに抑えてもらって、レグルスとリーゼの訓練を兼ねるいつもの方法で行こう」

「うし、ウルの姐さんが必要ねぇくらいに気合入れるぜ……!」

「頑張るよ」


 わたしが一年以上冥界を彷徨っていたせいで、ものすっごく久々の一緒の探索だ。わたしが多少なりとも強くなったように、皆も強くなっていることだろう。どれくらい強くなってくれたか、見るのもちょっと楽しみである。


「して、リオンよ。右回り、左回り、どちらに行くのだ?」

「それに関してはこれを使ってみるよ」


 わたしが取り出したのは棒。

 棒と言ってもただの棒ではない。追加で光神アイティの加護を得たことで作ることが出来るようになった道しるべアイテム【導きの杖】だ。

 それを立てて……手を離す。パタリと右寄りの方に倒れた。


「右回りだね」

「……え、それで大丈夫なのか?」

「頼れるアイティの加護だよ。大丈夫大丈夫」


 見た目のシュールさにレグルスが不安になっていたけど、これはそう言うアイテムなのだから仕方がない。瘴気の都合で正確には測れないとしても、大体の方角なら十分に示してくれる。何でコンパスとかじゃなくこんな形状なのかは知らないけど……あ、ゲームと違って制約ないんだからひょっとしたら普通に形状変更出来た? ……ま、まぁ効果は変わらないからいいか。


「リオン様の光神様に対する信頼は絶大ですね」

「……長いこと苦楽を共にしたことも影響してるけど……ほら、他の神様に比べるとね……?」

「確かに一番まともな神であるのう」

「……不真面目になるのは、大体リオン様を相手にしている時では……?」

「うぐっ」


 フリッカに残酷な事実を突きつけられ。レグルスとリーゼがわたしたち(主にわたし)の神様に対する扱いに口の端を引き攣らせ。

 こんな場所であるのに、締まらないスタートを切るのであった。

 いや、うん、ウルが何も言ってないから大丈夫だったってことで……。



 海岸線に沿って歩くわたしたち。

 海岸と言っても砂浜があるわけではない。ほぼ崖状態になっている。荒波で削られているからだろう。船で訪れていたら上陸場所を探すのにまた一苦労だったな。

 海面にはちらほらとモンスターの影が見える。ヒュージオクトパスがまた出てきやしないかウルが少しピリピリしているけど、今のところは居ないようだ。他のモンスターたちもさすがに不利な陸に上がってまで襲ってこないから放置している。相手にしていたらキリがないってのもあるけど、位置的に素材を拾いに行けないのでわたしのやる気も出なゲフンゲフン。

 そして、海だけでなく陸にも当然モンスターは居る。


「前方に……四匹、かな」

「くそ、居るのはわかるけど数まではわかんねぇ……」

「うむ。リーゼの言う四匹で正解である。レグルスも以前よりはよくなっているが、もっと精進せい」

「へーい……」


 出現したのは四匹のポイズンワームだった。予め察知してくれたリーゼのおかげもあるけれど、瘴気で草がまばらなので姿が丸見えなのもあり、落ち着いて対処が出来そうだ。


「うおりゃ!」

「せい!」


 ポイズンワームたちはウルどころかわたしもフリッカも手を出すまでもなく、レグルスとリーゼの二人によってあっと言う間に蹴散らされた。

 その手際が明らかに鮮やかになっていて、わたしは思わず「おー」と拍手をする。


「へへ、ざっとこんなもんよ」


 これが今までのレグルスであれば、実はトドメを刺しきれておらずポイズンワームが起き上がり……!とかあったかもしれないけれど、今回はそんなこともなく。そしてリーゼであればなおさらそんなポカはしているはずもなく。初戦は完勝だ。


「リオンさんが作ってくれた新しい武器のおかげもあるけどね」

「そう? 使い心地はどうかな?」


 いくら情緒不安定でモノ作り時間が減り気味だったからって、全く作らないなんてあるわけがない。次なる戦いに向けて、色々と装備を新調していたのだ。火神の回復が早ければ加護でさらに強いのが作れただろうけど、いくらアレな火神でもそこは文句を言うわけにはいかない。それでも可能な範囲で最大限の結果を出したつもりだ。


「軽いのに頑丈だし、切れ味は良いし、さすがだね」

「ウェルグスの装備も悪かぁないけど、やっぱリオンのが一番だな!」


 また、作ったのは武器だけではなく、防具もだ。

 わざとダメージを受けるわけにもいかないので『軽い』とか『着心地が良い』と言う感想をもらうに留まっているけど、防御力も耐久値も上がっているのでより一層身を守ってくれることだろう。

 とは言え場所が場所だ。楽勝だったからと浮かれず、気を引き締めて行こう。

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[一言] >島の中央に向かうほど瘴気が濃いみたいなんだよね。だから神子が居るとしたら比較的瘴気の薄い外周部のどこかだと思うから、まずは外周に沿って進む予定だよ  それ中央が瘴気の発生源だった場合、通…
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