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終末世界の開拓記  作者: なづきち
章間六

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340/515

アルバの正体

「はーい、体洗うよー。大人しくしててね、ゼファー」

「キュウ」


 図体は大きくなり鳴き声も少し低くなったけど、ゼファーは相変わらず素直だ。ウルにホースを任せ、わたしがデッキブラシでゴシゴシと全身を磨いていく。ウルが擦る時は戦々恐々としているが、わたしが相手だとリラックスしているのが顕著だ。


「えっと……アルバ、よろしくね?」

「始める、よ?」

「ギュ」

「わはー、つめたいっ」


 隣ではフィンとイージャ、ルーグくん(さすがにまだ小さいのでただ水遊びをしている感じだが)の三人がかりで同じようにアルバを洗い始める。アルバもすっかり慣れたのか、それとも子どもたちが相手だから最初から警戒するほどでもないのか、こちらも素直に受け入れている。

 その様子を『微笑ましいなぁ』と余所見をしていたのが悪かったのだろうか。


「ぶえっ」


 水を頭から浴びてしまった。はずみで変な声を出してしまう。


「……あ、すまぬ、リオン」

「いや、大丈夫だよ。いい天気だし」


 申し訳なさそうにするウルに笑顔で返す。晩夏の陽気さ、それ以前に太陽の光が気持ち良くて、水を浴びて涼むのもそれはそれでいい感じだ。

 それでもしょんぼりとするウルにわたしは、ウルの手からホースを奪い。


「えいっ」

「――わぷっ」


 わざと顔に水をかけるのだった。

 ぽたぽたと前髪から水を滴らせながら呆然としていたウルは、やがてニヤリと歯を見せ。


「リオンがその気なら……こうだ!」

「うひゃあああっ」


 わたしからホースを奪い返し、口先を指で挟んでブシャーッ!とわたしの全身を水浸しにする。

 楽しくてテンションが上がってきた……!


「よーし、もっといくぞー! ついでにゼファーもくらえっ」

「がぼがぼっ!?」

「ギュアッ!?」


 ウルとゼファーの頭上に、特大サイズの水樽(もちろんただの水であり決して汚染水ではない)を出現させ、ドバッとぶちまけていく。唐突に巻き込まれたゼファーが抗議の声を上げていたが聞こえないフリをした。


「ちょっと、お義姉ちゃんたち何やってるの!?」

「あわわわわ」

「あはは、たのしそう! ぼくもやる!」

「……キュー」


 フィンは唐突なバトル?に眉尻を上げ、イージャは慌て、それだけならまだしもルーグくんが参戦して方々に水を撒き始め、アルバも含めた全員が水攻撃を受けてびしょびしょになる。

 そんなわたしたちの突発水掛け合戦は、おやつを用意するために遅れてきたフリッカの呆れ声が聞こえるまで続くのだった。



「いくらまだ気温が高いとは言え、風邪には気を付けてくださいね……?」

「はぁい」


 お風呂でサッパリしてから、くつろぎルームで皆でお茶とおやつをいただく。ゼファーとアルバも、部屋には入れないがすぐ外でモリモリと食べている。

 いやぁ、お茶もおやつも美味しい。楽しいし、平和だし。明るいし、暖かいし――


「……リオン様」

「大丈夫かのぅ……?」

「……おっと……」


 ……どうやら情緒が未だに不安定なようだ。ふとした折りに厳しかった冥界暮らしと比べてしまい、生きていることに、無意識に涙が溢れてきてしまう。

 子どもたちに見られて心配される前にすばやく涙を拭いて、ヘラっと笑みを零した。ウルとフリッカはまだ微妙そうな顔をしているが、この場で突き詰めるほどのものでもなかったのだろう。ひとまず気を緩める。


「いやあ、フリッカも料理が上達したよね」

「ありがとうございます。でもリオン様の方がもっと上達していると思いますよ」

「うむ。久々に食べたリオンの料理、とても美味かったのだ」


 わたしがフリッカの料理の腕を褒めたら、何故かわたしの料理の腕の話になった。

 いやそれは、久々にわたしの料理を食べたから、補正が入っているのでは……?


「いいえ、気のせいではありません」

「そうなのだ。皆もそう思うよなぁ?」

「「「うん」」」

「きゅー」


 ウルに尋ねられ、子どもたちとゼファーまで頷いた。

 えぇ……いや確かに冥界でも料理……と言うかモノ作りは毎日してたけど、特に料理は素材の関係であんまりきちんと出来なかったんだけどなぁ。


「素材がないと言いつつ冥界で毎日、と言う時点でおかしいのではないか……?」

「……まぁ、リオン様ですしね……」

「いやだって他にやることないし……」


 妙に気まずくなって視線を逸らしたら、何かを言いたげなアルバと目が合った。

 はて、何だろう……って、あ、思い出した。


「そう言えば、アイティとアルバに本気の料理を披露するって言ったっけ」

「ギュ!」

「どうせなら今回お世話になった人たちも皆呼んでパーッとやろうかな?」

「それは非常にそそられる話なのだが……そんなにたくさん大丈夫かの……?」

「結構な数の方々が協力してくださいましたし……もちろんお手伝いはいたしますが、それでも大変だと思いますよ?」


 ふむぅ、それじゃ村別にするかなぁ。レグルスとリーゼは身内枠で呼んでおこう。

 それならば、とウルとフリッカも頷いた。……ウルに関しては、どうせわたしにくっついて全部参加することになりそうだから、回数が増えること自体への楽しみもありそうな気がする。

 まぁわたしもウルに料理を振る舞うのは好きだからね。どんな料理を作るか、今からしっかりと考えよう。



「ってことで、近いうちに拠点の皆に今出来る最大限の料理を振る舞おうと思っているんだけど」

「……そのような約束もしていたな。うん、楽しみにしていよう」


 アイティに報告をすると、嬉しそうに破顔する。これは期待を裏切ることは出来ないな。

 フンス、と気合を入れていると……気力が全て逃げ出してしまいそうな声が届く。


「ほほう、酒は出るのか!? お前の酒は大変美味だと地神レーアから聞いているぞ!」


 酒好き火神に何てことを言ってくれたのだ!と抗議を籠めて地神を睨む。あ、目を逸らした……!


「臓腑が焼けるほどの、とびきり酒精の強いやつを所望する! 美味い酒は俺の活力であるしな!!」

「あー……まぁ、その、善処します……」


 暑苦しい火神の勢いに負けて渋々と頷く。もういっそ火とかアルコール百パーとか飲んでくれないかなぁなどと思いつつ。

 地神からもらったお酒知識から作れなくもないけど……美味しいのが作れるかどうかは別だ。とりあえず今回は作成メイキングスキルで対応して、以降はドワーフ夫婦にお願いするかなぁ。喜々としてやってくれそうだし、何なら火神命令ってことで最優先で……あぁ駄目だ、聖剣が溶けちゃったから新しいの作りたいんだよね……鍛冶も手伝ってくれないと困る。

 火神は悩むわたしを他所に、後ろに居るウルを目ざとく見つけ。


「ウルよ! 俺の訓練に――いや、その、何でもない……」


 アイティに絶対零度の目で睨みつけられ、火が消えたようにしおしおになる。

 ……ありがとう、あなたが神様たちの唯一の良心です……!

 「……小さくなっているのに、前より迫力を感じるのは何故なのだろうな……」とぼやきが聞こえたけどスルーしておこう。

 わたしは宴会の話だけをしにきたわけではないのだ。


「ところでアイティ、アルバのことなんだけど……」

「ん? 何か問題でもあったか?」


 首を傾げるアイティに、今日の水浴びで剥がれ落ちたアルバの鱗をそっと差し出す。

 アイティは素直に受け取るが、確認するまでもなくやはり気付いていたようだ。


「えっと……光神アイティの影響を受けてたりする?」

「……いや、それはない。加護を受けた神子が影響を受けることはあっても、加護すら受けてないドラゴンに影響など及ぼせない」



●アルバの鱗

 底から這い上がり、本来のポテンシャルを発揮しつつあるドラゴンの鱗。

 わずかに光属性を帯びている。



 今日拾ったアルバの鱗の説明が変化していたことで、判明した。

 光属性の、ドラゴン。

 よもやモンスターが光属性を得るだなんて、思ってもみなかったのだ。


「……何か不都合とかあったりするかな?」

「ない、とは言い切れないが……何となく、問題ないだろうとは思っている」

「その心は?」

「破壊神が得意としている雷属性にも光の側面があるからだ。後はまぁ……強くなれば光だろうが聖だろうが意に介さなくなるからな」


 なるほど?

 アルバはわたしの聖域に耐えられるくらいにはなったし、このまま強くなってくれれば大丈夫そう、かな?


「私としては、アルバが光属性と判明したことでリオンが鱗を欲しがらないか不安なのだが……」

「ブフッ。わ、わたしだってわきまえてるから! 無理矢理剥ぐとかしないから!」


 落ちてるのを拾いはするけどね!

 と心の中だけで思っていただけなのに、その場に居た(まだわたしをよく知らない火神を除く)全員に溜息を吐かれましたとさ。

 おのれ……!

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[一言] >「ほほう、酒は出るのか!? お前の酒は大変美味だと地神レーアから聞いているぞ!」 >酒好き火神に何てことを言ってくれたのだ!と抗議を籠めて地神を睨む。あ、目を逸らした……! 地神「かける…
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