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終末世界の開拓記  作者: なづきち
第六章:死海の傲慢なる災禍

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肩の荷が下りる

「ところで……助けに来てくれたのはとっても嬉しかったしありがたかったんだけど、随分とタイミングがよかったね?」


 道すがら、話したいこと、聞きたいことは山ほどあったのだけれども、一番気になったその点について聞いてみた。

 あの時はギリギリ……おそらくアウトだったから、助けが来てくれてなかったら死んでいたことだろう。だからとてもありがたかったんだけど、タイミングがよすぎてそれはそれで気になってしまう。まさかピンチになるまで待っていたわけじゃあるまいし。

 その回答はとてもシンプルだった。


「準備自体はもう少し早く出来ていたので、元々はもう少し早く突入する予定だったのだが……」

「創造神様が『何となくこの日に行くのが、神子リオンが一番近い気がします』と仰いまして……実際にずらして見れば、あの通りでした」

「……なる、ほど?」


 創造神の勘……のようなものなのかしらん? それともうっすらと神子わたしの気配を察知していた?

 何にせよ、タイミングよく当ててのけたのはさすが主神といったところか。……もうちょーっとだけ早いと嬉しかったけどまぁそれは贅沢すぎる話だね。生きてるだけでも万々歳なのだから。今度会った時に拝んでおこう。


 そしてウルとフリッカが思ったほど取り乱していなかったのは、創造神がわたしの生存をしっかりと伝えてくれていたからとのことで。生存を知っていたからこそ、カミルさんたちを巻き込んで現世側からトランスポーターを作成することを提案してくれた。ありがとう神様。

 助けに来てくれた人たち、トランスポーター作成に協力してくれた人たちにもお礼をしに行かないとな。



 アイティは神様ズハウスに滞在している。訪ねた時には屋敷のテラスで他の神様たちと何事かを話しているようだった。

 神様たちは神様たちで積もる話もあるだろう。無事は確認出来たことだし、お邪魔しない方がいいかな……と去る前に、あちらがわたしに気付き、席を立ってやって来る。わたしはウルの背から降ろしてもらってゆっくり前に出た。

 冥界暮らしですっかり見慣れた金髪と白翼。それを改めて日の光の下で見ると、何だか少しばかり違って見えるような気がした。光の神様なだけに、光を浴びて活き活きとしているのかな……?


「リオンか。……体の調子はどうだ?」


 しかしその声は、態度は、何の変わりもなく。同じように、気安くわたしに話し掛けてくる。

 それが……わたしに、大きな安堵をもたらして。


「――待て、リオン。何故貴女は泣いているのだ……!?」

「……った……」

「……なに?」

「よかったぁ……アイティを、無事に帰すことが出来てよかったよぅ……!」


 自分が帰ってこれた時のものと同等くらいの喜びがこみあげてきて、涙が止まらなかった。

 『光神アイティを連れて帰る』

 絶対に果たさなければならない目的が果たせたことで……ずっとずっと張り詰めていたものが切れて。ドッと力が抜けてへたりこみ、人目もはばからずに声を上げて泣いてしまう。


「リ、リオン。泣くな、泣かないでくれ……」


 わたしのギャン泣きにアイティはおろおろとしながらも、しゃがみこんでソロリと頭を撫でてくる。

 いつもいつも困らせてごめん。でも、自分でもどうしようもないのだから、今回ばかりは大目に見てほしい。


「うわぁ、鬼教官アイティがすっごく優しい……」

「優しいと言うか不器用よねぇ。そこはいっそお姉ちゃんとしてハグくらいしてあげるべきじゃないかしらぁ」

「メルキュリス! ネフティー! あなたたちは一体何を言っているのだ……!?」

「……まぁ、そんな風にアンタが慌てている様子を見るのは珍しくてある意味見物だな」

「レーアまで……!」


 そうやって、神様たちが仲良く(……仲が良いと言ってもいいよね?)会話しているのが聞こえてきて。

 ……あぁ、本当に良かった。わたしの努力は……報われたのだ。



 落ち着いたところでテーブルセットを取り出して皆で席に着く。

 さすがにわたしのストックは残っていないし、右腕のバッドステータスで今は作成メイキングも出来ないしで、フリッカにお茶を用意してもらった。わたしが冥界に落ちる前より腕は上がっているのに、懐かしい味がしてまたも目がうるみかけてしまった。


「えぇと。それでアイ……光神様」

「これまで通りアイティで構わない」

「いやでも……」


 冥界では死に直結しかねないと言うことで対等扱いのお願いを受け入れたけど、さすがに現世に戻ってまでは……と尻込みしていたのだが。

 当のアイティは……フッと鼻で笑う。


「冥界であれだけやらかしておいて、今更そのように態度を改められてもな」

「その節は真に申し訳ありませんでしたぁ!」


 心当たりがありすぎて申し開きが出来ない。ゴッとテーブルに額を打ち付ける深さで頭を下げる。いたい。

 フリッカだけがわたしの心配をして、他の皆は呆れるか笑うかの二択だった。日頃の行いですね……。

 ともあれ、他のヒトが居る場ならともかく、拠点ここでは同じようにしてくれ、との運びとなった。


「改めてお礼を述べさせてほしい。リオン、私は貴女のおかげで無事に戻ってこれた」

「……わたしの方がアイティにお礼を言わなきゃだよ。最後は皆が助けに来てくれたけど、それまでもたくさん助けてくれたからね」

「アタシからも礼を言う」


 地神まで混じってきて思わず目を瞬く。


「アンタは自覚していないようだが……本当に、冥界はアイティと相性が悪いんだ」

「アイちゃんはメーちゃんほどではなくても、冥界ではポンコツになっちゃうからねぇ……」

「そうそう、予想外に小さくなっちゃって……ププ――あ、いやごめんアイティ待って待って、殴らないで。えぇと、こほん、小さくなってもちゃんと現世に戻ってこられたのは奇跡のようなものなんだよ?」


 神様たちに次々に告げられて逆に困惑してしまう。

 アイティと冥界の相性が悪いのは知ってるけど……あれだけ戦えてポンコツなの? その状態でもめちゃくちゃ助けてもらいましたよ?


「……何度も言ったと思うのだが。私が力を回復出来たのはリオンが創造の力を送ってきてくれたからなのだぞ……?」

「え? モノ作りをしただけだよね……?」


 早く回復したらいいな、とは願っていたけど、ぶっちゃけアイティが居ても居なくてもモノ作りはしていた。

 だからそのことで感謝されてしまうと、どうにも違和感が湧いてしまうのだ。

 わたしのそんな回答に神様ズは呆れたような顔をし、ウルとフリッカは「リオンだな」「ですね」と苦笑を零すのだった。……なにがさ。


「……レーア。リオンは前からこう(・・)か?」

「……前からこう(・・)さね。自覚させるのも大事だと思うが……まぁそれはおいおい。気が済まないなら別の形で礼をするんだね」

「別の形……私の羽根くらいしか」

「あ、それはとってもほし――げふんげふん。ナンデモナイデス」


 アイティから言い出したくせに、賛同しかけたらめっちゃ『うわぁ』って目で見られてしまった。解せぬ。

 大きな溜息を吐かれてから、別の話題へと移る。


「これは貴女に渡しておこう」

「? ――……っ」


 コトリとテーブルにおかれた魔石を手に取ってみると……その持ち主に、わたしは息を呑んだ。



●海王の魂

 海の王・レヴァイアサンの魂。

 しかしその大半は奪われ、削られ、残るは僅かである。

 海を願い続けた者は、死してなお焦がれる。

 【不壊属性】【神子のみ加工可能】



「どう使うかは貴女の自由だ」

「……使いませんよ。後でお墓を建てておきます」

「……そうか。それも貴女の自由だ」


 冥界に落とされ、アンデッドになってなお奪われ続けたレヴァイアサン。この上更に何かをするだなんて、出来そうにない。

 魔石に手を合わせてからアイテムボックスに保管する。

 ……その時、ウルから爆弾が投下される。


「……あ、思い出したのだ。我もこんな物を拾っていたのだった。ほれ、リオン」

「ん? 何かな?」


 そうして差し出されたそれ(・・)は、ある意味予想出来た【海王の魂】よりももっとずっとわたしの度肝を抜いた。


「……………………封神石いいいいぃ?」

「「「「「……はい?」」」」」」

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