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終末世界の開拓記  作者: なづきち
第一章:平原の狂える王

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きみの作ったモノ

 その晩になり、ウルがなんだか気落ちしていることに気が付いた。

 いつものだるさかと思ったけど……それだけではなさそうな気配があって。

 布団に潜り込み、寝る前に尋ねてみると、少しだけバツが悪そうに話してくれた。


「いや……生きるための活動が創造に繋がるのであれば、壊すことしかできない我はなんなのであろうな、と思って……」


 ウルは真面目に悩んでいるのだろうけれども、わたしの口からスルっと出てきた言葉は、ともすれば茶化しにしか聞こえないかもしれない。

 混じりけなしの本音なんだけども。


「ウルは……わたしの癒しかな?」

「……なん……?」


 慰めでもなく詰りでもなく。斜め上の回答をウルの頭は処理しきれずにフリーズしてしまった。


「実はわたしってば、最初の村探しの理由が『人恋しい』っていう、他人からすれば笑っちゃうような理由だったんだよね」


 もちろん、創造神のオーダーも忘れていませんよ?

 忘れていないけれど……なによりもまず、孤独にあれ以上耐えられなかったのだ。


「だから本当に、きみが居てくれるだけで、わたしは助かっているんだよ」


 会話をしてくれる人が、一緒にご飯を食べてくれる人が、一緒に寝る……のは想定外として。

 そういう人が側に居てくれるのが、どれだけわたしにとっての救いになっていることか。

 頭を撫でながら、そんなことをとつとつと語る。


「それなら良いのだが……いや待て良くはない。結局我はなにも作っていないではないか……」


 ウルは表情を和らげかけたが、また固くしてしまった。

 わたしの活力を作っているんだよ、っていう話だったんだけど納得してくれなかったか。

 うーん……そんなに『作る』ことにこだわるのはなんでなんだろう?


「ねぇウル。わたしはいつも『モノ作り』と言っているけれど、物体を作ることだけが創造じゃないよ?」

「……?」


 わかりやすいのは音楽かな。あれは物体ではないけれども、確実に創造に属するものだ。

 生きるための必需品とは言えないけれど、あると心を豊かにするし、人によっては別の衝動へと発展してまたなにかを作ることだろう。

 ちなみに、ゲーム時代には楽譜や楽器アイテムが存在していた。ローレライが出てくるイベントで使用したり、わたしはあまり利用してなかったけどBGMが変更できたりした。


「……そうであったとしても、我はそれでもなにも――」

「そもそもウルは大事なことを忘れているんだけど?」


 伏し目がちになり、どこまでも自己嫌悪に陥りそうな言葉をそれ以上続けさせてたまるか、とばかりに頬をつついて止めさせる。

 「なにをするのだ」とでも言いたげなウルの両頬に手を添え、わたしと無理矢理に視線を合わせさせる。


「ウルが戦ってくれたおかげでわたしは……うぅん、わたしだけじゃなくレグルスもリーゼも、生きているんだよ」


 キマイラ戦は、ウルが居なければ確実に詰んでいた。わたしたちの力だけで倒すことはできなかった。

 瘴気にアイテムなしで耐えうるほど頑健な体を持っていなければ。火事場の馬鹿力(レイジモード)を発動させる素養を持っていなければ。

 彼女が居なければ……みんな死んでしまっていた。


 わたしは、わたしよりずっと強いくせに、わたしよりずっと繊細な彼女をそっと抱きしめる。




「言うなれば、わたしたちの未来を守(つく)ってくれたんだよ。

 だから大丈夫。きみの存在は、なにも作り出してないことなんて、ない」


「――」




 しばらくの間、ウルは小さく身じろぎした以外はなんの反応も起こさなかったけれども。

 やがて、少しだけ肩を震わせて、わたしに強くしがみ付いた。


 ……LPが減ったのは内緒である。




「……とは言え、やっぱりなにかモノを作ってみたい気はするのぅ……」


 あやすようにポンポンと背中を叩いたり頭を撫でたりしていたのだけれど、ウルは気が済んだのか、体を離すなりそんなことを呟いた。

 ぬうぅ、それは神子(プレイヤー)としてのプライドが削られる話だぞぅ!


 どれだけスキルレベルを上げればいい? どんな素材を用意すればいい?

 それともエンチャントが必要かな? 強化付与を得る手順はどうだったっけ?

 細工に錬金に鍛冶に……やることが一杯あるなーアハハー。


「フフ、フフフフフ……いずれ必ず、ウルにも壊せない道具を作ってみせる……!」

「……そ、そうか。楽しみにしていよう……」


 スイッチが入ってしまってブツブツと考えをまとめているわたしの様子に、ウルが少し引いていることに気付かないのであった。




「ところで、我も体で支払った方が良いのか?」

「ブハッ、それはもう忘れてくれる!? そもそももう十分すぎるほど働いてくれてますからね!!」


 ヤダなにこの子、めっちゃニヤニヤしてる!

 お子様無邪気系だと思ってたけど、実は小悪魔系だったとかそんな展開ですかー!?

 一緒に寝てるこの状況でそんなセリフ言われると、ほんっと微妙な気持ちになってくるんですけど! いやそんな気は全く起きないけれども!!


 ……ここでわたしが「じゃあそうしてもらおうか」って言ったらどんな反応するのかちょっと気にな……いやいや、言わない、言わないからね!


 テンパったわたしが脳内で色々とバカなことを考えている間にウルは眠りに落ちていた。

 くっ……ウルが毎晩だるだるで早く寝る子とわかっていても、なんか悔しいんだよ……!


 はぁ……わたしもとっとと寝てしまおう、と目を瞑る。


「……おやすみ。良い夢を見てね」




 また会う約束をしてレグルスとリーゼは村に残し、わたしとウルは拠点に帰ってきた。

 やれやれ、ちょっとのことだったけれども、ものすごく長く感じたよ……数日はゆっくり休みたいな。


「主(ぬし)の場合は、休憩と称してなにか別のモノを作ってそうだけどもな」


 あ、あり得る……。

 いやでもほら、わたしにとってモノ作りは仕事でもあるけれど、趣味でもあるしね……!


「……それで主の気が休まるのならいいのだが」

「大丈夫大丈夫、夜はちゃんと寝るから!」


 まぁまだ光源となる燃料がもったいなくて、寝るしかない、というのが実情だったりするのだけれども。

 ……燃料がたっぷりあったら徹夜とか普通にしそうだなわたし……。




 スキルレベルのためにもゆるゆるとモノ作りをしつつ、動物やら作物やら花やら育てつつ、拠点を少しずつ改良をしつつ。

 ウルと一緒に狩りに行ったり、わたしも試しに稽古をつけてもらったらビックリするほどあっという間に転がされて逆に謝られたり。

 オークが居た森が気になって探索してみたらダンジョンを発見してしまい日帰りで制覇したり。

 漁村(クアラむら)の様子を見に行って修理と引き換えに色々と素材をもらってきたり。

 たまに……ぼーっとしたりして。


 十分に休んだし、次はどうするかなー、とぼちぼち考え始めた頃。

 いつものように創造神の石像に向かってお祈りをしていたら。


 創造神が降臨した。

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